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地球の魔力事情

 ゲートが再び地球と異世界を結んだ。


 この事実に世界は震撼する。


 しかし、過去に人類側の開いたゲートとは違い、この度の魔族の住む世界である魔界側から開かれたと思われるゲートは一定期間で消え去る事が世界各地で確認出来た。


 地球に住む人類と和解した地球に帰属した魔族の代表、吸血鬼の女王であるクラティア・フォン・クリスタロスが今回の件で日本のニュース番組や世界中の動画サービスのインタビューにて見解を述べている。 


「今回、魔界から開かれたゲートは大規模な儀式を行った転移魔法だろう。

 使う魔力も膨大で、恐らく1つのゲートを開くだけでも何人も魔族が犠牲になっている。

 ん? 魔族の侵攻の理由? この世界は魔力に溢れているからね、魔力は魔族にとっては大切なエネルギー源だし魔物にとっては人間は良い食料になる。

 となれば、まあ言わずもがな。

 この世界の存在を知ってる魔族の王はこの世界を手に入れようとするわよね。

 だってそうでしょ? 人類が別の星や深海に行くよりは簡単に魔族はこの世界へ行く事が出来るようになってしまったのだから。

 初めてゲートが開いたのは何十年前だったかしらね。

 アレから数十年、あちらからゲートを開いた以上侵攻の準備は整ったのでしょうね。

 まあそれでも貴方達地球人は再び勝利するのでしょう。

 この世界には機械仕掛けの天使達がいるんですから」


 吸血鬼の女王クラティアは雄弁に語り、不敵に笑う。


 しかし、ニュースや動画サービスを見ていた視聴者、リスナー達が気になったのはクラティアが途中で語った魔族が侵攻する理由の1つだった。

 その話題はSNSでも話題になりちょっとした騒ぎに発展することになる。


「地球に魔力が存在する?」


 桜や楓、椿、薺と夕食を食べながら友樹が呟く。

 その呟きに応えたのはクラティアが機械仕掛けの天使と称した4人では無く、夕食をご馳走になるために押し掛けてきたクラスメイトのエイミィだ。


「地球人はなんでこれだけ潤沢にある魔力が感知出来ないんだかなあ」


「いや、なんでお前がウチにいるんだ」


「私達が招待したの! エイミィさんも頑張ったんだよマスター!?」

 

「いや、だからってなんで連れてくるんだ」


「クラスメイトに連れないねえ不知火、私みたいな美人が自宅に来て嬉しくねえの?」


「はあ、もう良いよ分かった分かった。

 で? 地球に魔力があるってのはホントなのか?」


「あるぜ? じゃないと魔法なんか使えるわけ無いじゃん?」


「でも俺達には感知出来ないんだろ? なんでだ?」


 椿が作った夕食のハンバーグを頬張るエイミィに友樹がやれやれといった様子で肩を落としながら聞く。

 その友樹の疑問にエイミィは何かを思い出そうとしているのか、片手に持っていたナイフで宙に円を描いた。


「母さんが何か言ってたなあ。

 何だったっけなあ……ああ、そうだそうだ。

 地球人も俺達も空気吸ってるじゃん?」


「ああ、まあそりゃあ」


「でも見えないだろ?」


「でも吸ったり吐いたり出来るから感知出来るじゃないか」


「そうだな、私も同じ事を母さんに言ったわ。

 じゃあ、例えば魚って自分達が水の中にいると分かっててエラ呼吸してると思うか?」


「……どうだろうな、魚じゃないから分からん」


「あいつ等は多分そんな事考えてない。

 地球人も一緒だ、ずっと濃い魔力の中で生きてるから“分からない”母さんはそう言ってた」


 目の前にいる吸血鬼が手のひらに氷を作り出して手遊びするさまを見て友樹は眉をひそめた。

 その宙に浮いた氷を桜は楽しげに見つめ、楓は「不確定事象です、理解できませんね」と友樹の様に眉をひそめている。


 椿は極小のフェアリーを氷の近くに形成し、エイミィの作った氷を解析。


「成分に特に変わった要素はありません、空気中の水分から形成していると推測出来ますが、工程がさっぱり分かりません。

 空気中の気温は生成時には変化していませんので特定の空間の気温を下げている訳でも――」


 と、魔法という理解出来ない現象に世界最高のAIは首を傾げながら何やらブツブツ言い始めた。


 薺は氷の真似をしているのか、自身の指先に氷と同一形状の塊を形成している。


「だいたいさあ、地球の神話や歴史には魔法の話は出てくるだろ?

 あるんだよ、魔力はな」


「いや、アレは創作――」


「実際に見たのか? 神話の時代を」


「ぐう」


 友樹から出たぐうの音。

 それを聞いたエイミィはニヤニヤと満足気に笑っていた。

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