プロローグ
未来の地球の科学が異世界への扉を開いたのは偶然だった。
当初は初のワープ技術の誕生に心躍らせた人類だったが、希望は絶望へと変わる。
開いた黒い穴の様なゲートから現れたのは様々な魑魅魍魎。
ファンタジー小説や漫画、アニメの世界によく見る魔物達だった。
ゴブリンやコボルト、スライム、そしてドラゴン。更には科学では説明出来ない現象を発生させ、異界の言葉を操る人に似た、後に魔族と呼ばれる存在。
それらが意思を持って人類への攻撃を開始。
言語の違いから話し合いは出来ず、人類は突然異世界間戦争を体験するハメになってしまった。
小説や漫画でしか見たことのない未知の現象魔法や無尽蔵に湧いて出てくる魔物の存在が徐々に人類を追い詰めていく。
特にゲートの発生地である米国は被害甚大であった。
幸いだったのは現行兵器での討伐は可能だった事だが、いかんせん数の暴力と魔法に米軍は首都を放棄、一時撤退するしかなくなってしまった。
そして異世界間戦争開始から数ヶ月後、米国はゲート破壊作戦を決行。
その際に、同盟国である日本から最新の人型兵器が自衛隊とともに援軍に向かうという情報が送られてきた。
「日本の人型兵器だって!? それってアニメに出てくる2本角のヤツじゃないのか!? ほら、アレだよ100年以上前、何処かに立像があったじゃないか! アレだよアレ!!」
日本の人型兵器と聞いて、最終決戦に赴く軍人達は皆が皆、それこそ軍部の高官まで高揚した。
しかし予想とは裏腹に、アメリカ軍を含めた多国籍軍の軍人達が終結している基地に降り立った輸送機からは皆が予想していた人型兵器は降りては来なかった。
「マスター! 桜頑張るから見ててね!」
「お姉ちゃん声が大きいってば」
「まあまあ楓姉さん、カリカリしないで」
「椿はマイペースすぎ」
「薺もでしょう?」
自衛隊が隊列を組んで駆け足で展開していく最後方から遅れて出て来たのは一見普通の人間。それも、10代前半か10代中半にしか見えない少女4人だった。
その4人の後ろをついて歩くマスターと呼ばれた青年は戦闘服すら着用しておらず、スーツ姿である。
「作戦は伝えた通り、多国籍軍より先行して敵を倒せフォワードは桜、薺。
後方支援は楓だ、思いっきりぶっ放せ、椿は遊撃と多国籍軍の援護だ。
それと、ゲート破壊用の核が落とされた場合はお前達がゲートを破壊するように、出来るな?」
「了~解!」
「了解です」
「かしこまりました」
「了解しました」
少女4人はそういうと、身体から光を発生させ武装化。
作戦開始の合図を待たずに桃色の髪の少女、桜、青色の髪の楓、金髪の椿は当たり前の様に飛び。
白髪の薺は椿の武装である攻防一体盾に捕まって戦場へと向かっていった。
「不知火君、行かせて良かったのかね?」
「問題ありませんよ、あの娘達なら成し遂げます」
そして、マスターと呼ばれた不知火という青年の言っていた通りに4人の少女は異世界の敵を圧倒的な力で蹂躙していった。
接近戦を得意とする1号機、長女の桜がビームの刃を発振出来る大剣をナノマシンで形成し、背部のスラスターで突撃しながら道を切り開き、同じく接近戦を得意とする4号機、四女の薺が上空から飛び降り、液体金属の身体の一部を剣や槍に変換して敵を斬り裂いていく。
長距離戦を得意とする2号機、次女の楓がナノマシンで形成したバスターランチャーで敵を一気に薙ぎ払うと、万能機である3号機、3女の椿は自らの周囲にナノマシンで攻防一体盾を複数展開、楓の撃ち漏らした敵を攻防一体盾を操り飛ばして各個撃破していった。
その戦いは凄惨極まったが、それは敵に言える事であり、多国籍軍の被害は軽微も軽微。
今までの事が嘘のように魔物達をあっさり討ち果たし生まれ故郷を核で焼くのは可哀想だという桜達の提言で、ゲート破壊もやってのけて地球の平和は守られた。
しかし、数十年後、その平和は突然終わりを迎える事になる。