魔法少女危機一髪
ワイバーンを数体屠った薺と魔法少女二人組み。
ほっと一息ついたのもつかの間。
再びワラワラとゲートからワイバーンが咆哮を上げながら数体現れた。
その様子にげんなりして肩を落としたのは桃色の魔法少女、ロゼだ。
「まだ出てくるの~? もうヤダ疲れたあ」
事実疲れているのだろう。
ロゼと花奈は二人して肩で息をするほどには疲弊していた。
飛行していた高度も落ちている。
極めつけに魔力砲の威力の低下が顕著に現れている。
先程までは倒せなくともワイバーンにダメージは与えたれていた。
しかし今はどうかというと、ワイバーンの羽根に当たった魔力砲がピッチャー返しよろしくロゼの顔面に跳ね返されるに至ってしまっている。
「あいったああ! なんて事するのよ!!」
「お嬢様大丈夫ですか!?」
「痛そう」
自分の魔力砲に直撃しては顔を赤く腫らし叫ぶロゼ。
そのロゼを隣でアワアワと心配する花奈の眼下で薺も鼻を抑えて顔をしかめた。
大声を出したからだろうか、それとも弱っていることを察知されたのだろうか。
ロゼや花奈の上を飛ぶワイバーン達が一斉にロゼを目掛けて飛び付こうと加速する為に羽根をバサバサと羽撃かせ更に上昇する。
ワイバーン達の目的も目標も明らかだ。
ロゼも花奈も逃げようと背を向けるが、いかんせん速度が出ない。
ワイバーン達が魔法少女達に群がろうと加速するが、薺は助けなかった。
助けられなかった訳ではない。
腕を伸ばせばワイバーンを刺し殺すことは出来るし、なんならビルからビルへ跳び移ってワイバーン達の高度まで上昇し、斬り裂く事も出来る。
それをしなかったのは、よく知った反応を感じたからだった。
「きゃああ! 食べられちゃう!!」
「ロゼは! 私が死んでも守る!」
ワイバーンの口は決して小さくない。
小学生2人なら一口だろう。
しかし後一歩……飛んでいるから一羽撃きだろうか? 何にせよワイバーンの口は2人を啄む事すら出来なかった。
「てえぇりゃあああ!!」
ワイバーンの横っ面を魔法少女ではない桃色の少女が思いっ切り殴り、ワイバーンの巨躯をまるでピンボールよろしく吹き飛ばしたからだ。
「あっぶなかったあ。危機一髪だったねえ大丈夫?」
「だ、誰?」
「下で手を振ってる子のお姉ちゃんなのだ!」
言われてロゼと花奈が下を向くと薺が手を振っている。
その薺と、目の前で魔法も使わずに翼の様なスラスターで飛ぶ少女を見比べようと視線を戻すと、その少女の後ろに別のワイバーンが迫っていた。
顔面蒼白になり「危ない!」と叫ぶロゼ。
しかし少女は笑って「大丈夫大丈夫」と答えワイバーンに振り向きもしなかった。
するとどうだろうか、魔力砲によく似た光の帯がワイバーンの頭を貫き、絶命させる。
「姉さん、この2人が薺が言ってた要救助者?」
「デバイス無しで飛んでいる不可思議な格好の女の子2人、ってこの子達しかいないし、そうじゃない?」
もう一人、ロゼと花奈の前に今度は青い髪をツインテールに結った少女があらわれる。
ワイバーンを討伐したのがその少女だというのは手に持っている銃身の長いライフルから、ロゼと花奈にも予想出来た。




