共闘
ワイバーンの頭を穿ち潰し、跳び退いた薺は2人の魔法少女へと向かっていく。
「何なに? 誰? ちょっと花奈! 認識阻害は!?」
「認識阻害はちゃんと発動してますロゼ様」
桃色の魔法少女が黒色の魔法少女を花奈と呼び、黒色の魔法少女が桃色の魔法少女をロゼと呼んで、2人は何も言わずに近付いてくる薺に警戒して、二人して杖を構える。
薺はそんな2人に対して立ち止まり、一礼すると、友樹と学校に行く際の高校生の姿から普段の幼い姿に戻った。
「はじめまして、マスターの命によりお二人の加勢に参りました。
私はガイノイドの薺といいます。以後お見知り置きを」
「こ、これはご親切にどうも。
……花奈、ガイノイドってなに?」
「女型のアンドロイドの事ですよ。
なるほど、だから認識阻害が効かないんですね」
「この子ロボットなの!? 人間にしか見えないけどなあ。
でも加勢って言っても、もう羽根の生えた蜥蜴は倒したし」
ロゼの言葉に、薺は無言で上空を指差す。
そこには未だ口を開く異世界へのゲートが存在し、そこから戦闘機サイズのワイバーンが複数飛び出してきた。
その内の一匹が薺の足にこびり付く仲間の血肉に気が付いたか、怒りを露わにして咆哮を上げ、口を開いて薺に向かって急降下していく。
「「危ない!」」
ロゼと花奈が同時に叫んで急降下してくるワイバーンに杖を向け、光の帯、編んだ魔力を圧縮した魔力砲を放つ。
しかし、急降下してくるワイバーンのスピードと、焦って攻撃してしまった事から魔力砲がワイバーンに当たる事は無かった。
指を差したままの薺にワイバーンの大口が迫る。
その光景に魔法少女2人は目を瞑り、顔を背けてしまうが、恐る恐る目を開けると、ワイバーンは薺が指を変形させた杭でモズの早贄の様に穿ち殺しされていた。
「もうすぐ私の姉達が到着します、それまでの間街を敵性体から守る必要がありますので、協力して頂けませんか?」
「ま、まあ私達もこの羽根の生えた蜥蜴を倒しに来たし」
「薺さんワイバーン討伐、協力します」
「ありがとうございます。ではご無理なさらず。
お二人はワイバーンを引き付けて下さい。
私は空を飛べませんので」
「分かった!」
「ではお嬢様、行きましょう」
ロゼと花奈が当たり前のように飛び立つ。
薺はその様子をどこか羨ましそうに眺め、情報を得ようと2人を見つめた。
「これが魔法による飛翔。
スキャン開始…………反応なし。
やはり私には魔力が何たるか分かりませんね。
2人を解析すれば分かるのでしょうか?
何にせよ、今は街を守らねば」
ロゼと花奈は戦いに不慣れなのだろう。
魔力砲を放つが決定打にはならないようで、ワイバーンを殺すには至らなかった。
しかし、弾き飛ばし、叩き落とす事は出来る。
薺はそこを狙い、手を刃に変形させて落下してきたワイバーンを斬り裂く。
魔法少女と機械少女は共闘してワイバーンを殲滅していった。




