6話 クラスメイト
1ーAと書かれた教室に入ると既に大半の席が埋まっていた。
30人ぐらいかな?
その中には入学式に会った3人もいた。
アルト君、ユーテス君、セリナさんだったかな?
アルト君とセリナさんが片手を上げて挨拶してきた。
ボクも手を上げて答えて近くの席に座った。
アルト君の周りの席だけ何故か空いてたからなんだけど。
つんつん。
?
背後から突かれる感触を感じて振り返る。
『おいおい、お前アルト殿下とどういう関係だ?』
首に巻いた赤いマフラーが特徴的な男の子だった。
『入学式の前に会っただけだけど?』
『はぁ?それだけでアルト殿下があんなフレンドリーなわけないだろう?』
本当にそれだけなんだけど?
『まぁそれは後で聞くとして、知ってるか?今年の新入生に英雄の孫がいるらしいぜ』
『へぇ〜、そうなんだ』
『反応薄いな。あの英雄シルバのお孫さんだぜ』
『えっ⁉︎』
『お、そうそうやっぱそういう反応だよな〜、お孫さんと仲良くなれば英雄に会えるかもしれないしよ〜』
孫?そりゃじいちゃんの年齢を見るとそういう感じになるのかな?当たらずとも遠からずかな?
『それ、たぶんボクかも』
『はぁっ⁉︎、じゃあお前が試験で的破壊したやつかよっ⁉︎いやですか?』
なんで急に敬語?
『えっ?試験て破壊しろだったよね?』
『ばっか!ありゃ建前だよ!実際入学テストで破壊出来るやつなんていねーよ!ありゃ上級魔術師クラスの魔法が必要な代物だぞ!』
あ、戻った。
『えっ何何?英雄のお孫さんなの?』
それを聞きつけた周りが集まって来た。
『英雄の話聞きたいな〜!』
『君も凄いよね?やっぱり直接教わったりしたの?』
『ねぇねぇ、シルバ様に会ったり出来るかな?』
『えっと、あの〜、その』
みんなが一斉に質問攻めにしてきて返事が追いつかない!
『おいおい、そういうのは親友の俺を通してくれよ』
赤マフラー君。
いつの間に親友になったの?
『ほう、お前に話を通せばいいのか?』
近くの席からこちらを見ていたアルト君から声がかかった。
『ア、アルト殿下⁉︎、いや冗談ですよ!』
赤マフラー君、顔が引き攣ってるよ。
『冗談だ。これからは私も1クラスメイトだ。王族ということは忘れてくれていい。ただ今は教壇にいる教師に目を向けるべきだな』
『あっ』
いつの間にか教壇には髪をオールバックにした男性が立っていた。
『アルト殿下、恐れ入ります。さて気を取り直して。このクラスを受け持つバレット・マークだ。もう知っているようなので省くが、私も含め彼から学ぶことは多いはずだ共に励んで行こう』
1学年5クラスABCDEで分けられており、それぞれ各30人の合計150名が新入生だそうだ。
ちなみにA〜Eは試験結果の上位から順に割り振られているらしい。
ただこれは学年が上がる時に今後の成績次第で変わるみたいだけど。
後は、明日以降の予定を聞いてホームルームは終わった。
明日は学園案内をしてから訓練場でさっそく実技講習があるらしい。
『アルト君さっきはありがとう。いっぺんに話かけられたのは初めてだったから』
『アルでいい。話は聞いていたからな』
『そう?じゃあアル。ボクのこともセロで。聞いていたって国王様に?』
『ああ、父上からな』
『ボクやっぱり会ったことないんだけど?』
『情報源はバルクス商会だがな』
バルクス?
聞いたことあるような、無いような。
『なんだ?知らないのか?セロのところに行っていた商人がいただろう?』
『…トルコさん?』
『そうだ。城も御用達の商会だぞ』
『トルコさんってもしかして凄い人?』
『うむ。一代で大陸有数まで上り詰めた大商人だ』
大物だった。
『なぁ、セロ。今日って英雄殿は来てないのか?クラスメイトとして!親友として!ぜひ挨拶しとかないとな!』
赤マフラー君が話しかけてきた。
『そう言えばこっそり見に来るって言ってた気がするけど』
『ふむ、おそらく父上と一緒に待合室にいるんじゃないか?となると父上にも挨拶をしておくべきだな』
アルがそんなことを言っている。
『あ、いや、アルト殿下それはっ!』
『どうした?今日会ったばかりのセロは親友なんだろう?私もアルでいいぞ』
『か、勘弁して下さいよ〜』
アル楽しそうだな〜。
赤マフラー君は涙目だけど。
『じゃあ行こうか?』
『しゃあ!英雄に会える!』
赤マフラー君が復活した。
『じゃあ私も殿下の護衛だし』
『俺もだな』
そうしてボク、アル、セリナさん、ユーテス君、赤マフラー君の5人で歩き出した。
『ほう。上手くやれていけそうじゃな』
出会ってすぐじいちゃんがそんなことを言っていた。
みんなを紹介しようとしたけど、赤マフラー君はガチガチに緊張していた。
国王様がいるからかな?
『クラスメイトのアル、セリナさん、ユーテス君、……赤マフラー君?』
『誰だよっ‼︎それっ⁉︎ ただの特徴じゃねーか!俺はルーク・オーウェンだ‼︎』
あっそうなんだ。
『みんなじいちゃんに会いたかったんだって』
『こんな年寄りでガッカリじゃろ?』
『とんでもありません‼︎お会い出来て光栄です‼︎』
アルが真っ先に声を上げた。
目にはうっすらと潤んでいるような気もする。
他の3人も大小の違いはあるけど似たような反応をしていた。
赤マフラー君に至っては号泣していた。
後ほど赤マフラー君から、「ちゃんと覚えてろよ!俺はルークだ!」と言われた。
世の中には心の中を読める人もいるんだろうか?
家に帰ってシェリーさんに聞いてみたけど、「そんなわけないじゃん」と返ってきた。
う〜ん、ボクが知らないことは多そうだ。