5話 入学
『セロ様、学園から封書が届きましたよ』
家のソファーでくつろいでいるとセバスさんが持ってきてくれた。
『ありがとうございます』
早速中を見てみると紙が1枚とカードが入っていた。
『これは合格通知…と学生証かな?』
『おめでとうございます』
『セロ君試験合格したんだ!おめでとう!』
いつの間にか部屋にいたメイドのシェリーさんがお祝いの言葉をかけてきた。
初日の自己紹介の時に畏まった言葉は遠慮してもらった。
セバスさんとマリアさんは未だにそのままだけど。
真っ先に気軽に話してくれたのがシェリーさんだった。
マリアさんはちょっと眉間にシワが寄っていたけど。
以来よく話かけてくれる頼れるお姉さんだ。
『わぁ、セロ君首席合格って書いてあるじゃん!凄いね!ディッシュさんに言ってお祝いの準備しなきゃ!』
通知を覗いていたシェリーさんが感嘆の声をあげて厨房に走って行った。
後に残されたセバスさんは少し疲れた顔をしていた。
その日は豪華な夕食が出された。
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入学式当日
なんだか賑やかだな〜。
校門を潜った時からここの学生らしき人達が制服に身を包んだ人に何やら話をしている。
そういうボクも何件か話をされた。
最初はボクと同じ制服を着ていた人達で「魔道具研究会」と書かれたネームプレートを下げていた。
実用されている魔道具を品評したり、独自に作成したりという活動しているそうだ。
次は丸メガネをかけた少し暗い感じの人によく分からない声をかけられた。
『同士よ!我らは出会うべくして出会ったんだ!さぁ!共に彼方の扉を開けに行こう!』
出会ってすぐに何を思ったんだろう?
ネームプレートには「オタ研」と書かれていたけど。
触れてはいけない気がしたので、早々に退散した。
その先では上半身裸で奇妙なポーズをとっている集団に捕まった。
『君も我々と美の追求をしようじゃないか!』
こちらのネームプレートには「マッスルガーデン」と書かれていた。
これも触れてはいけない気がして早々に退散した。
というのを繰り返して中々進まない状況が続いていた。
中には興味があるのも含まれていたが、今はそれどころじゃない。
しん。
あれっ?
急に静かになった。
静かになった方に顔を向けると身長は160センチのボクと同じぐらいで茶色を帯びた金髪に青色の目をした美少年が歩いていた。
人が避けて行ってるから後をついて行けば無事に進めそう
美少年の後ろをつけて行くとざわざわと周りが騒がしくなった。
『?』
なんだろ?
『止まれ』
誰?
目の前に知らない男の子が立ち塞がった。
背はボクより高いぐらい、短髪黒髪に黒目、鋭い目つきをしていてこちらを警戒しているように見える。
『ボクに何か?』
『よせ』
と思ったら先に歩いていた美少年から声が掛かった。
『ですが!』
なんだろう?このやりとり?
『よせと言っている、セリィもだ』
後ろを振り向くとボクを男の子と挟むような立ち位置で女の子が立っていた。
『こんなあからさまな襲撃者は無いだろう、それに白い髪に赤い瞳…父上から聞いてた特徴と一致する』
『『っ⁉︎』』
なんだろ?父上って誰?ボクのこと知っててそんな年齢の人だとトルコさんしかいないけど、息子さんかな?
『すまなかったな、私はアルト。アルト・フォン・ルイセンだ。親しい者はアルと呼ぶ』
『あ、セロです?……?ルイセン?』
? どこかで聞いたことある名前な気がする
そこまで出掛かっているのに出てこない。
『ユース』
アルトと名乗った美少年に呼ばれてさっきの男の子が頭を下げた。
『すまない、ちょっと気が立っていた。俺はユーテス・フォン・アクセルだ』
『私はセリナ・フォン・リソーよ、ごめんね今日が初めての殿下の護衛なの』
アルトと名乗った美少年の両脇に移動した2人がそれぞれ自己紹介してきたが、それより気になる単語が聞こえたような……。
『殿下…?ルイセン?、あっ!王都の名前!』
『ああ、そうだ。父上はアレク・フォン・ルイセンこの国の王だ』
『それで!どこかで聞いたことある名前だと思った。……?でもボク王様に会ったことないよ?』
『くくっ!はははっ!』
『?』
どうしたんだろ?何か可笑しいことしたかな?
『すまない。私が王子だと分かると皆同じ反応になるのでな』
『ごめんなさい、ボクそういうのに疎くて』
『いや、構わない。むしろ新鮮だったよ、出来ればそのままでいてくれると嬉しい』
『そう?じゃあ改めて、ボクはセロ・フィールド宜しく』
ざわっ⁉︎
あれ?また騒がしくなった?
『あまり人と関わりが無かったと聞いている私も多くと関わったことは無いが、宜しく頼む』
『こちらこそ宜しく』
『聞きたいことがあるかもしれないがそろそろ会場に向かった方がいいな』
『あっ、そうだった』
『我々は用があるので、またな』
そう言い残して護衛の2人もついて行った。
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『諸君入学おめでとう。これからみなで切磋琢磨し、有意義な学園生活になることを願っている』
壇上で国王アレク・フォン・ルイセンが挨拶している。
やっぱり会ったことないな〜。
なんでボクのこと知ってたんだろ?
周りからの拍手を受けて国王様が壇上を降りていく。
その後はクラス毎にホームルームを行う為、教室に移動することになった。