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6話・心残り

「ランディ中尉」


警備部待機室のソファでちびちびと蒸留酒を嗜みながら燻製肉を齧っていると、現在の直属の上司に名前を呼ばれた。


なんだっけ、この人の名前…


あ、あ、あー、


「…えー、どうされましたかね、少佐殿」


「マーク・スタンリーだ。少しは思い出す努力をしたまえ」


しましたよ。

諦めるのも早かっただけです。


「それで…あ、飲酒駄目でした?」


「そうではないが、いや、職務中は控えたまえ。…はぁ、君は元々こういう性格だったのかね?」


「え?まぁ、大きく変わらんとは思いますが…」


「…閣下から君の戦績を詳しく聞いた時は、どんな本性が隠れているかと思ったが…」


なにそれ詳しく。

どんな報告を聞いたんですかい?


私個人がやったことと言えばそう多くは無い筈なんだが…

せいぜい前線に出来た臨時の町を民間人ごと焼き払ったり、救護船に偽装した強襲揚陸艦を叩き落とした程度だぞ…

心当たりが無いんだがなぁ…



私の顔を見てため息をついた少佐殿は、首を降って答えた。


「何を想像しているのか分からんが、何かを咎めるために呼んだのではない。先日の…発砲騒ぎがあっただろう」


あぁ、あの軍人崩れのか。

もう()()()()()よ。


「あの事件のファイリングが終わった。中尉は犯人の銃を気にしていただろう。先程事務室の方に運び込まれたのだよ」


確かにな。

気にしていたと言うか、気になったと言うか。

あの男の経歴次第では、面倒になるかもしれんと思っただけだ。


「犯人の動機なんかは分かったんで?」


「動機までは分からなかった。死んでしまったのでな」


少佐殿が後半を強調して話した。

いや、だって、ねぇ…

どうせ応援で来る筈だった警察の機動隊では対処しきれなかったよ?

あの男は少なくても終戦組だろうし。


あの強さと感の良さ、そして体に異常が無かったのでほぼ確実に、終戦まで戦場にいた筈。

その軍人を、いくら精鋭とは言え戦場を知らん機動隊ごときに抑えられるとは思えん。


()()()()()()()()()()()




「あの男の戦時の配属は…」


「ふむ、君の言っていた通り、北部のクラスカ地方、いわゆる最前線であったよ」











あの男のリロードスキル、あれは普通に出来るものではなかった。

幾つもの銃を使い潰し、最早数えるのも難しい弾丸を消費してなおあの技術に至るのは至難である。


最前線は、そんな至難が()()であった。


だからこそあの男のレベルまで銃を使いなれているなら、北部組と言われる配属兵の可能性が高いと踏んだわけだが…

そうなるとあの銃はおかしいのだ。



事務室に入ると、六人掛けのテーブルの上に、布に包まれた長物が置かれていた。

私は布を払うと、銃を手にとって想定していた考えと答えを合わせるのだった。


「なにか分かったのか」


背後から少佐殿が問いかけてくる。


私は振り向かず、


「いえ、得には」



と、答えた。














配車部で車を借り、目的の場所へと走らせる。


あ、飲酒運転になるな…

いい子はいけないぞ?軍人は特別大丈夫なのだ。私は捕まらないから犯罪じゃないのだ。


…まぁ、気を付けるとしよう。


配車係が良い顔をしていなかったのは、私が酒の匂いを放っていたからかもしれん…ほんと申し訳ない…



しっかし、少佐殿も人が良い。

私の反応から明らかに何かある、と言う風であったのに、特に追及せず自由にさせてくれた。


ただ後々報告は求められるだろうが、今はそれがありがたい。


これから向かうところは、些か物騒であるからな。

下手をすりゃ町中でドンパチが始まってもおかしくない。


なんでそうなるかってぇと…



成る程、この中か。




私は首都カークナスの外れに在る、旧市街まで来ていた。

旧市街は、戦争が始まる前…戦争特需で首都が肥え太る前まで、美しい景観を誇っていた町並みであったと聞く。


しかし軍用品の輸出が増えると、大型の倉庫が立ち並ぶようになり、田舎から人が移動して大規模集合住宅が乱立するようになった。かつての面影は…梅雨と消えた様だな。



据えた匂い。

戦場では良く会だ匂いだ。下水が上手く流れず、発酵したガスが町全体に充満している。

それに死体から発せられる腐敗臭と混ざって、今すぐにでもここから立ち去りたい感情に襲われるぜ…


流石に私にとっても臭いので、体の周辺を魔力で保護し、匂いを散らす。

確かに戦場では嗅ぎ慣れているかもしれんが、進んで嗅ぎたい訳じゃねぇんよ。臭いのは私だっていやなんよ。



目的の場所、だろうか。

この中、周りからしたら以外と綺麗に掃除がされている店…これはバーか?

クローズの看板を無視して中に入る。

開いてるのは分かっていた。なかに人が居るのも知っている。


そいつに会いに来たからだ。



店の中にはいると、マスターとおぼしき男が殺意マシマシでこちらを見ている。

なんやワレ、やるんか?


嘘ですすいません。ちょっとお邪魔します。

にこやかに笑顔で会釈をすると…

警戒感MAXのまま、引かれた。なんでや…一応美人やと思うんやけどなぁ…


「隊長の顔は凄みがあるんですよ」


背後から掛けられる声。


目的の人物であるが、まぁ、バーならばバーらしく酒を頼んでからにするか。


「おすすめを、一杯」



「まだ開いてないんだが」


「無視っすか?」


ええい、格好付けさせんか、おのれら!






不定期でアップしていきたいと思います。

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