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4話・これからの世界のお話

久し振りに

周りが騒がしくなる。

先程まで嘗て部下だった男が座っていた場所に、今度は上司が腰を下ろした。


「どうしたんで大佐?」


「少将だ。階級の誤称は重罪だぞ。直せ」


「いぇっさー」


「全く・・・」


上司のため息が深く長い。

私のことと言うよりも、今の上質な椅子と机で抱えた柵から来るものだろう。

そうだと思う。だよね?


「お前は、あの男が何をしているのか、知っているのか?」


「いえ全く」


警戒を含んだ問いかけ。まぁ、想像はつくけどね。


反体制派。前に相手にしたこともあるし、今のこの国じゃ居ない方がおかしい。

()()も、負の感情と言うか、恨み辛みの乗った魔力と目を滾らせていた。


()()に加えて、私まで向こうに付いたら、私が少将どのなら頭を抱えたくなるかもね。


「只でさえ上はお前を警戒しているのだ。軽挙は慎め」


「それほど大層な人間じゃありませんけどねぇ」


「・・・現存する最後の戦略級魔導師。神話の残り香。王と成る者の剣」


「おぅ!?なんですかそれ!?」


えらく中二的な評価にシリアスさんシリアルになるよ。

他にも強いの居たやろ!?

何故私だけこんなに評価高いんだ?


「上にはそう見ている者も居る。そして事実でもある。お前は、劇薬に過ぎる」


「誇大広告です。ジャロりますよ!」


「わかる言語で喋れ。・・だが何よりも危険なのは、お前の危険性を正確に認識せずに手を出そうとする連中が多いことだ」


あぁ、スルーですか。そうですか。

というか危険性って。ニトロや濃縮ウランじゃあるまいし、言ってもその辺の魔術師にゃ負けないくらいなんですがねぇ。

それにしても、手を出す?

さっきのドルグもその一端かな?


「で、どんな連中なんです?」


「・・・伝えておいた方が良いか」


「まぁ、そうしてもらえると有難いですねぇ」


警戒感の滲む顔。

もしかして、思想によっては私が同調するかもと思ってる?

面倒なことはしないよ?ダイジョーブ。


私のスマイルとグッドポーズに折れたのか、ため息をつきながら目頭を押さえる上司殿。


「ふん。・・あの男、ドルグ・マウロ()曹長はおそらく、回帰派の幹部だろう」


「回帰派」


「正確に言えば、『魔術師至上主義』の一派だ。嘗て魔術師が権力の象徴だった時代に戻す、と言う連中だ」


「んな無茶な」


今は工業化の真っ只中、神話の時代の英雄主義は、既に不可能だ。銃に戦車、空中戦艦もある時代、個人がどうにか出来るわけが、


「あ」


「そうだ、無茶を無茶で無く出来る人間が、少なくても一人は居る。人間かどうか怪しいがな」


強い視線で私を睨む少将殿。

そんなに見ても惚れませんぜ?


「しかし、現実的じゃないでしょうに」


戦いはひとりでも出来るが、主義を通したいのなら管理できる人間も必要だ。

いくら魔術師とはいえ、王政復古となると掛けるリソースは膨大、手が足りるわけがない。


「そうだな。だが、人によっては魅力に映るのだろう」


「と言うと?」


「権力を取り戻したい勢力にとっては、都合が良い主義だと言うことだ」


あー、成る程。

つまり、産業革命的な現在の情勢で、流れに乗れなかった上流階級の連中にしてみたら、自分達の嘗ての栄光を取り戻すには都合が良いと。

良い部分しか見てないわけか。計画性と言うものを学べよマジで。


「で、一部の貴族が同調してると」


「この国だけでなく、な」


「うっわー」


権益を無条件で享受出来た時代は終わってしまった。

今や、市場原理の荒波に放り出されたか弱い貴族が、砂漠の蜃気楼に浮かぶオアシスを求めるように、幽かな光明にすがっているのだろう。


「彼らは『結社』と呼ばれる組織を立ち上げた」


「もう組織化されてるんで?」


「結社の元となる組織は昔から有った様だな。それが武力行使出来るまでに成長したのは、ここ最近の話らしいが」


彼の顔に疲れが浮かぶ。

最近の話、そして武力行使とくれば、戦力の加入。ドルグの加入か合流が最近ならば、他国の他の魔術師にも当てはまる。


「戦後、ですか」


「有能な魔術師が無益な消費活動に拘束されなくなったからな」


「軍人がそれ言って良いんですかね?」


「言いたくもなる…」


どう言うことだってばよ?

かの大国、名前が分からんのだけど、あの国が原因でしょう?


私の疑問が顔に出ていたのか、少将どのは話を続ける。


「これは公式には出していない話だか…あの戦争は、西側諸国連合の挑発的外交が発端だ」


「そりゃぁ…」


控えめに言って、大問題では?


「予てより緊張状態に有ったのは変わらん。戦端を開いたのも向こうだ」


「んー、まぁ、私らにゃ判断出来なさそうですね、その辺」


「私も詳細を知れたのは戦争末期になってからだ。断片だけを知って反体制派に流れた者も居る。お前に知らせるのも、リスクを考えて少ない方を選んだに過ぎん」


確かに、イケイケの時だと余計な反発心を覚えたかもしれん。

今なら、まぁ一方的に誰それが悪い、なんてことはほとんど無いと理解できる。


「だから、閣下の側に付け、と?」


「…そうは言わん。いや、出来れば賛同してもらいたい。しかし、お前の影響は大きい」


「閣下はいったい何をしたいんで?」


「…私は『協会』を作るつもりだ」


「それは魔術師の、で良いですよね?」


そう問いかけた私に、少将どのは居を正して肯定した。




「そうだ。私は、いや、()()は、魔術師達のための組織『魔術師協会』を設立するために動いている」



書き上げたらまた投稿します。

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