10 思いがけない提案
連続更新します。一旦キリのいいところで切っているので短めです
「きゃああああああ!!」
突如現れた筋骨隆々のマッチョ男。
私は思わず悲鳴をあげ、その場にへたりこんでしまった。
「ち、ちょっと大丈夫!?」
振り返った先に現れた男性が焦った声で手を差し伸べてくれるが、パニックに陥った私はそれどころではなかった。よくよく見れば、そのマッチョ男は化粧をして、長い髪を結い、あろうことかスカートを履いていたのだ。
変態! 変態がいるううう!!
「いやあああ、近寄らないで! 変態!!」
「ンまぁ失礼ね! 誰が変態よ!!」
差し出された手を前に、叫んだ私を男が突っ込む。
男にしては高すぎる声。一体どこからそんな声を出しているのか。
いや今はそんなことを気にしている場合ではない。
「お、お邪魔しました!」
頭が完全にパニックになった私はすぐに立ち上がるとその場で頭を下げ、ほとんどダッシュで店の入口から逃げ出した。
「あ、待ちなさい。コラ、なんで逃げるの!!」
マッチョ男は何故か私の後を追って店を飛び出してきた。
ひぃ、なんで追いかけてくるの!?
「ごめんなさあああい!」
「だからなんで逃げるのよ!」
「逆になんで追いかけてくるんですか!?」
「アンタが逃げるからでしょ!」
「それはあなたが追いかけてくるからですううう!」
そんな会話を蹴り広げながら逃走劇を繰り広げること十分後。
私の方が体力の限界が来てしまい、立ち止まった隙に捕らえられた。捕捉され、肩に担がれる形で店まで逆戻りしたマッチョ男は、ブルブル震える私をジロジロと凝視してくる。
逃げている間にケープがずり落ちてしまい、私の素顔が明らかになっている。
そんな私の顔を数分見つめ続けたマッチョ男は、なにか満足気に頷いた。
「うん、最初に思った通り。アンタ可愛いわね。ねぇ、お願いがあるんだけど」
「はい、なんでしょうか……?」
もうどうにでもなぁれ。
そう思いながらマッチョ男の言葉を待つ。
すると彼は、思ってもみなかったことを言った。
「アンタ、ワタシの服のモデルになってくれない?」
「……はい?」
予想外すぎる言葉に、私は思わず間抜けな声を漏らしてしまった。
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