だから二人は。
なつに「二人で息抜きしてきなよ」と言われてさえとひなはオフの日にデートをすることになった。
この百合営業ももう何度目になるんだろうなー。
青く澄み渡った空を見上げながらそんな事を考える。
「なぁ……からひな」
「はい……」
いつもの様にこざっぱりとした可愛らしい服装をして歩くからひなにさえは声をかけてみる。
その表情は相変わらず何所か影があって。
たぶん自分も同じような表情をしているんだろうなと思う。
二人は気分転換にとスイーツ巡りや水族館、映画館にも行った。
けれど、どうにも気がまぎれない。
それはそうだろう。
さえとからひなはこのままだと落第生だ。
なんとしてでも、なつやかえについていかないといけない。
そうしないと、そうしないといけないのだから。
「なつは凄いよな……」
「そう、ですね……」
ブランクはあるとはいえ子役だったかえのトークに難なくついていっている。
さえやからひなにはできない芸当だ。
「私達はどうすれば良いんでしょうね……」
からひなにそう問いかけられる。
その問いにさえは応えることができない。
その答えをさえも探し求めているのだから。
応える代わりにさえはからひなの手をゆっくりと強く握りしめる。
握り締めて、ふと自分の心が安らぐのを感じた。
からひなの顔を見ると、真っ赤な顔をしながらもクスリと微笑んでいた。
そうか……そうだな。
一人じゃ駄目でも、二人でなら。
二人一緒でなら。
もしかしたらついていけるかもしれない。
からひなの笑顔はそんな事を想わせてくれた。
今までだってそうだった。
二人だからやって来れた。
地下演劇の時だってそうだ。
不安で仕方がなかった初めての舞台を、からひなのおかげで乗り越えることができた。
あゆなつ祭だってそうだ。
人前で歌って踊るなんて内心不安でしょうがなかった。
でも、隣にからひながいるから。
からひながいたから、やってこれた。
「……百合営業……のつもりだったのだけどな……」
「先輩……?」
意を決して足を止めてからひなに向き直す。
「からひなっ」
「は、はいっ」
さえの言葉に気圧されたのかからひなも背筋をピンと伸ばし居住まいを正す。
「……好きだ」
「……はぇ……?」
答えに困ったのか、予想だにしなかった言葉だったのかそんな言葉が返ってくる。
さえは口にした言葉の意味を噛みしめて、顔が赤くなってくるのを感じる。
「えっと……それって……」
「あぁぁぁっ!!もうっ!!好きだっていったんだっ!もう言わねっ!!」
「す、すいませんっ。あまりに思いもよらない言葉だったんで……」
「いいよ、もうっ!!」
ツンとさえはからひなから視線をはずしそっぽを向く。
そんなさえの頭をからひなは。
ぽすりと抱きかかえて胸に抱き寄せた。
そして。
「私も……さえ先輩の事、大好きです」
ゆっくりとからひなはさえの手に手を絡ませてくる。
それをさえは拒めるはずもなく。
「一人で無理でも。二人でならやっていけますよね」
からひなはゆっくりとそんな言葉を口にする。
からひなも紗枝と同じことを考えていたらしい。
うん……。
さえ達はこれで良い。
二人で。
二人で手に手を取って。
お互いを助け合って。
援けあって演じていこう。
手を絡ませ合い。
見つめあう二人の顔がゆっくりと近づいていく。
ガサッガサッドサッ。
音がして、二人は我に返り周囲の状況を見渡す。
するとそこには。
「あ……あははは……ハロー……?」
「あーくそっ!もうちょっとだったのにっ!!」
「さえちゃま、さえちゃま、さえちゃまーーーー」
折り重なるように草葉の陰からなつとかえとあゆみが倒れ込んでいた。
「お、お前らっ!どこからみてたんだっ!!!」
「えっと……」
非情に言いづらそうになつは頬を掻く。
OK分かった。
全部。
最初から見てたんだな。
「私はやめとこうってとめたんだよ~……。でも、かえちゃんが……」
「だってよー……妹の恋路はきになるじゃん?なぁ、あゆみ」
「さえちゃまは……。さえちゃまは、私のママなのーーーーーー!!!」
三人は口々に言い訳めいたことを口にする。
一人はもはや言い訳ですらないが。
「もう良い。帰るっ。いくぞ、からひな」
「え、は、はいっ」
そうしてさえ達は走り出した。
お互いに繋いだ手をしっかりと。
もう二度と離れないようにと握り締めながら。
これからは援けあって生きて行こう。
そう心に誓って。
読んでいただきましてありがとうございます。
なりあがりシスターズ楽しんでいただければ幸いです。




