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ふぃーりんぐっきんぐ

「さてさて、なりあがりシスターズ、本日のコーナーは?」


「「「ふぃーりんぐっきんぐーー」」」」


 ひなの司会回しの後、三人の声が綺麗にはハモる。


「えー、ふぃーりんぐっきんぐとは、レシピ無しのフィーリングでお料理しようという企画です!」


「そんなの事故る映像しか取れてるわけないぞっ★」


「……私は自信があるよー」



 ひなの言葉にかえとなつが続く。

 YOURチューブのコメントも不安そうな言葉が並んでいる。

 とは言っても視聴者数は20人にも満たないのだけれども。

 視聴者の大半は元子役のかえのファンや舞台役者のなつのファンだ。

 ひなのファンは一人だけ。

 その一人というのも……。



『ひなちゃん、お料理なんてしたことないんじゃないかしら?』



 このコメントを打っている身内(母親)しかいない。

 正直、身内に自分の配信動画を見られるのは恥ずかしい。

 しかもやった事がない料理の動画の配信なんて。

 コメントも身バレ情報駄々洩れだし。

 母、もっと擬態して擬態っ。

 そう口に出したいのを我慢しながら言葉を繋げる。



「それじゃあ今日の料理を発表しちゃいまーすっ」


「今日の料理は肉じゃが、だぞっ★」


「……肉でジャガジャガ。二人が肉でジャガジャガ。も、妄想が捗る……」



 何かイケナイ妄想をしながらよだれを垂らすなつを見ながら、ひなは小さくため息をつく。

 ……ほんと、この人、大丈夫かな……?

 演劇畑の人らしいけど、自分の欲望に忠実過ぎやしないかい?

 しかしそんななつを放っておいてかえは番組を進行していく。

 その様子はもはや手慣れたものだ。



「それじゃあ、三人がそれぞれ作った肉じゃがの編集動画があるのでそれを流すぞっ★お楽しみにっ★」



 そして画面は三人が肉じゃがをフィーリングだけで料理した動画(各自編集済み)を流し始める。

 まず一番手はひなの動画。



『あらあら、ひなちゃんそこは麺つゆじゃなくてお醤油入れないと駄目よ』


「なんかすごく的確な駄目だしコメントが来てるねっ★」


「……きっとひなちゃんは麺つゆロックで飲んじゃう人、うへへぇ……」


「いやいや何処にそんなもんロックで飲む人居るのさ……」



 ひなはため息をつきながらなつにツッコミを入れる。



「え……?私たちがやってるゲームじゃ普通に麺つゆロック勧めてくるよ?」


「これは私の奢りだ。麺つゆ、ロックで飲み給えよ……ってねっ★」


「……それってどういうゲームよ……」



 そんなやり取りをしているうちにひなの動画が終わる。

 そして実食の時間。

 作っておいたものは番組中に食べるというシステムだ。

 とりあえず見た目は肉じゃがだったのだけれど。

 口に含んでみると味はなんか麺つゆの味がする肉とジャガイモだった。

 これは見た目は肉じゃがだけれど肉じゃがではない。


「(T○T)……ま、まずい」



 ひなは我ながら料理の腕は全然だと思い知らされた。

 母のコメントもひなちゃんの育て方間違ったかしらとか画面いっぱいに流れている。

 だーかーらー擬態しろー、母ーーーーーっ。


「本当にまずそうだったねっ★それじゃ次はかえの番だぞっ」



 本気でまずそうなひなを放置してかえは動画を流し始める。

 動画の中のかえはこんなの事故る事故ると言いながらも何だかんだで手際よく調理をこなしていく。

 ……口の中の麺つゆ味の肉をかみ切りながら、ひなはほぇーと画面を見つめる。

 その後も愚痴愚痴と文句を言いながらもかえは調理を進め。

 完成。

 コメントも賛辞の嵐だ。


「うん。まぁまぁの味だね★ざっとこんなもんかなっ★」


「……す、すごい」


「かえが本気を出せば肉じゃがなんて簡単なんだぞっ★」


「……さすがかえ姉。私も肉でじゃがじゃがして欲しい……」



 ていうか、さっきから肉でじゃがじゃがとか麺つゆロックとか意味不なんですが、この妹どうすれば良いのかな。

 ひなはなつの発言に頭を抱えながらも最後のなつの動画を再生する。



「それじゃあ、なつの番だねー……料理には自信あるんだー」



 画面の中のなつはテキパキと調理をすすめるが何かがおかしい。

 切っている芋はサツマイモだし、肉も鶏肉の細切れを切っている。

 ……これって思いっきり事故ってない?

 動画のコメント欄もなつの調理の度に『wwwww』だの『これは草』だの笑いを誘う。

 そして出来上がったものは。

 なんだかよく分からない肉じゃがぽい何かだった。



「……それでは実食」


「……それはやめた方が良いんじゃないかなー……?」


「……なつー、食べるのは絶対やめた方が良いと思うぞっ★」



 ひなとかえが止めるのも聞く耳を持たずに、なつは肉じゃがっぽい何かを一口。

 ……食べて画面から姿がなつの見えなくなった。

 どうやら卒倒したらしい。



「えーと……。これ、どうつなげばいいの、かえ?」


「なつは放置で良いと思うよっ★」



 ひなはその言葉を聞きながら手早くなつの画面を配信非表示に切り替える。

 非配信になった画面の向こうではなつが肉じゃがぽい何かをリバースしていた。

 うーん……これはファンの皆様には見せられないなぁ……

 そう思いながら、もうこの企画は二度とやるまいと誓うひなだった。


 チャンネル会員10万人まで、残り99981人。

読んでくださってありがとうございます!

元ネタはこすはオフラインパーティーのなんとなクッキング。

大体本文中のことが起こりました。リバースはしてません、念のため。


ブクマ感想等つけてもらえてうれしいです。

もし、よろしければ評価をぽちっと押したりブクマしてくださると執筆速度も上がります(あ

ですので、今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 三人がそれぞれ全く違う性格なのが楽しいですね(^^*) ワチャワチャしていて、本当に配信を見ている気分になります! 3密を避けないといけない声優の苦悩も描かれていて、ストーリーに深みが出て…
感想一覧
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