重大発表。
「さてさて今週も始まりました『なりあがりシスターズ』。司会進行長女の唐津ひなです」
「会津かえだよっ★」
「水戸なつ……」
「三人揃ってー」
「「「シスターズですっ」」」
軽やかなステップを踏む様に、いつもの調子でからひなの進行で番組は進行していく。
「さてさて、今日はかえちゃんから重大発表があるそうです」
「……なんだろう……?」
打ち合わせ通りかえのコーナーがやってくる。
「かえちゃん、どうぞ」
言いながらからひなは画面から映らないところで、ゆっくりとさえの手を握り締めてくれる。
そうこれは皆で決めた事だ。
マネージャーOにも許可は取ってある。
「えっと……」
もしかしたらこれでチャンネル会員を辞めてしまう人も出るかもしれない。
けれど、かえは。
さえは、決断した。
「チャンネル会員の皆、聞いて欲しい」
『会津かえ』から『会津さえ』に戻ることを。
「さえは『会津かえ』じゃない。双子の妹の『会津さえ』なんだ」
今まで被っていた猫を被る事を。
「そしてこの口調が本当のさえ。『会津さえ』という人間なんだ」
さえの言葉にコメント欄は動揺がはしりはじめる。
『信じてたのに』とか、『なんだってー』など軽いものから、長い長文まで。
様々なコメントが流れてくる。
さえはその全てを受け止めながら、言葉をすすめる。
「本物の『会津かえ』……姉のかえは緊急事態宣言後のあの日から今も病院の一室で眠ったままだ」
幻滅する人もいるだろう。
ファンを辞める人もでるだろう。
「さえは命を絶とうとしたかえの代わりだった」
けれど、これは三人で決めたことだ。
『シスターズ』として決めたことだ。
「でもこれからはそうじゃない」
だから後悔はない。
「そんなさえで良いっていう人だけ、ついてきて欲しい」
訪れる沈黙。
「……だめか?」
けれど。
程なくして、『888888』や『男口調のさえちゃんも良いぞー』や『かえちゃんが帰ってくることを信じてる』などの言葉が流れ始める。
「……ありがとう……」
心の底からその言葉が溢れ出る。
溢れた涙を隠す様にからひながゆっくりとだきしめてくれた。
「はいはい~。それじゃ今日の『なりあがりシスターズ』の配信は終わりです。次回から新しくなった『シスターズ』をお楽しみにっ」
そう言って番組を締めた。
本当にさえは……。
からひなに助けられてばかりだ……。
そう思いながらゆっくりと顔をからひなの胸に押し付けていた。
チャンネル会員10万人まで、残り99955人。
―――
冷房の効いた病院の一室。
消毒液の臭いの充満する部屋で。
呼吸器と栄養剤の点滴を受ける一人少女が眠り続けている。
ぼんやりと目をつぶった少女の手をゆっくりと握り締め。
ゆっくりとゆっくりと語りかける。
「かえ……。さえはさえに戻ったぞ」
さえはかえの手を。
痛々しい傷の跡が残る手首を見つめる。
「なんで、あの時。あんなことしたのさ……。かえ」
その答えは簡単なのだけれど。
あえてその問いを問いかける。
「他にも別の。……冴えたやり方があったんじゃないのか……」
さえにはそう思えてしかたがなかった。
けれどもうかえはその行動を起こしてしまった後で。
結局はタラレバの話にしかならないのだけれども。
もう進みだしてしまった道だ。
後戻りをすることはできない。
かえも。
さえも。
「次は、かえの番だぞ」
その言葉を残して。
さえはゆっくりと、かえの病室を去って行った。
読んでいただきましてありがとうございます。
重大発表ななりあがりシスターズ。
楽しんでいただければ幸いです。




