知ってた。
翌日。
あゆみにだけは報告しておいた方が良いかなと思い、あゆみを喫茶店に呼び出して事情を一通り説明する。
けれど。
「えっと……うん。知ってた」
「は?」
あゆみの思っても見ない言葉にさえは問い返す。
「かえちゃまが、実はさえちゃまだってことでしょ? その事は知ってたよ♪」
あゆみは顔色一つ変えず笑顔でいけしゃーしゃーとそんな事をのたまう。
何……だと……。
じゃあ、こいつはさえがさえだって知っててあんなにひっついてきたっていうのか?
「因みに……いつから?」
「最初からだよ♪」
「……」
「だってー……本物のかえちゃまはもっといい匂いがしてー……とーっても可愛いんだもの♪ あ、でもさえちゃまもいい匂いだし、可愛いよ? これは本当」
「はぁ……」
さえは一つ小さなため息をつく。
つまりはさえはあゆみの手の上で、上手く踊らされていたということか?
あ”ー……。
ねぇねぇ今どんな気持ち? どんな気持ち? をリアルでやられると、めっちゃ腹立つな。
「それじゃ、そういう事で」
すちゃっと手をあげさえは席を立つことにした。
「えー……それは無いんじゃない、さえちゃま~……。ねぇ……もっとお姉ちゃんとお話、しよ?」
そんなさえの手を握りしめあゆみは懇願するように語りかけてくる。
お前、このあいだは『かえちゃまはママなの』とか言ってなかったか?
あゆみはさえをママにしたいの?
妹にしたいの?
どっちにしたいの?
「とりあえず、もうおまえに話すことなんてないから」
きっとこいつはさえの隠し事なんて全て看破しているに違いない。
だからこれ以上こいつの傍にいる必要はない。
そもそも、あゆみのこと、ちょっと苦手だし。
なんというか、純正陽キャ臭がして。
さえはどっちかというと陰キャだし。
陽キャと陰キャは相容れない。
そういうものなのだ。
「さえちゃまはそういうとこ、可愛いよね♪」
「はあ?」
さえは訝し気な瞳であゆみを見つめる。
「そうやって私を徹底的に避けようとするところ。かえちゃまも私に抱きつかれるのは嫌がってたけど、あれは嫌も嫌も好きのうちーって感じだったし……。でも、さえちゃまはマジで嫌そうにしてるしね♪」
「……分かってるんならなんでそんなに抱きつこうとするんだよ、おまえは……」
「えー……だって~……私とさえちゃまの仲じゃない?」
言いながらあゆみはさえにスススとすり寄り抱きしめようとしてくる。
「だ・か・ら!! すり寄ってくんな!! そして抱きつくな!! キモいっ!!」
「エー……。あー……でもそんなさえちゃまも、かーわーいいっ♪」
「ぜんっぜんっ分かってないだろっ!! おまえっ!!!」
あゆみに抱きしめられながらさえは拘束から必死に脱出しようともがく。
「はーなーせーっ!!!! アホあゆみっ!!」
「アホなお姉ちゃんでごめんなさいね~、さえちゃま~♪」
結局、店員さんに過度な密接は他のお客様のご迷惑になりますから、やるなら他でやってくださいと言われるまで。
さえはあゆみにスリスリと抱きしめられていた。
はぁ……なんでこんなにアホなんだ、あゆみは。
もう二度と二人きりで会ってやるもんか。
そう心に誓うさえだった。
読んでいただきありがとうございます。
あゆみに翻弄されがちななりあがりシスターズ。
楽しんでいただければ幸いです。




