だから。
星が流れる空の下。
さえの話を聞き終えたひな達はただ茫然と何と言えば良いのか分からないといった様子だった。
「……それからさえはかえとして生きる為にマネージャーからレッスンを受けたんだ」
「……それじゃ、本物のかえちゃんは?」
「……かえはまだ病院のベッドの上。……あれから一度も目を覚ましていない……」
「……っ」
なつは思いつめた表情で、駅の方へと走り去ってしまった。
そりゃそうだよな……。
親友だと思ってた、かえがかえじゃなくて、その妹のさえだったんだから。
本物のかえの方が心配に決まってる。
きっとなつはかえの元へと向かったんだろう。
「……さえ先輩……」
ひなが心配そうな声音で問いかけてくる。
「さえは先輩でもなんでもない。だから先輩はなしだ……。からひな……」
「そんなのどうだっていいんですっ。さえ先輩は先輩ですから」
そう呟いてからひなはさえの手を取り。
ゆっくりと握りしめてくれる。
「からひな……」
本当は不安だった。
初めての配信の時も。
地下演劇の時も。
不安で不安でしょうがなかった。
自分が『会津かえ』を演じることができているのか。
だから、新人のからひなの手をとることで。
だから、百合営業と称して、からひなの手をとることで。
どこか心に安息感を見出していた。
そのことで自分が『会津かえ』であることを許されていると感じていた。
けれど違った。
現実はそんなに甘くはない。
さえには本格的なレコーディングの経験は無いし。
ましてや振り付けの経験なんて微塵もない。
演技は全部姉の『かえ』の真似事。
自分の全ては姉の『かえ』の真似をすることだけだった。
「さえ先輩……。私、さえ先輩のこと、大好きですよ。さえ先輩だから、良いんです」
そんなさえでも。
からひなはこんなにもさえの事を慕ってくれている。
こんなにも……。
こんなにも……。
さえは繋がれたひなの手をぎゅっと握り返す。
温かい……。
ひなは、こんなさえに優しくしてくれる。
『唐津さえ』として見てくれる……。
いつの間にか。
さえはひなに抱きしめられていた。
さえは流れる星空の下。
からひなの胸の中で。
ゆっくりとゆっくりと。
溢れ出る涙を流し続けていた。
―――
少し離れた自動販売機の陰でこっそりと二人の会話に聞き耳を立てる少女が一人。
「はー……青春だねぇ……。青くて、春で……」
ぼんやりと涙を堪えながら。
頭を冷やして引き返してきたなつがその姿を見つめていた。
「かえちゃん……。絶対目を覚ますよね……」
いまだに病院で眠り続けるという親友の事を想いながら。
なつは胸の前で拳を握る。
大丈夫だ。
絶対に。
私の知る『会津かえ』はそんなやわな人間じゃない。
きっと元気な姿を見せてくれる。
きっとかえは目を覚ます。
なつは空を見上げ、きらりきらりと流れる星に願いをかける。
早く親友が目を覚ましますように……と。
読んでいただきましてありがとうございます!
次回はいつもの雰囲気のなる予定のなりあがりシスターズ!
今後とも楽しんでいただければ幸いです。




