まちあわせ!
原宿の駅前でひなはそわそわとした心持で人を待っていた。
普段は着ないようなひらひらとした服を着て。
傍から見たら初デートに望む少女のような、そんないでたち。
うつ向いて時計に目をあわせる。
時計の針はちょうどてっぺんで針が重なる時間。
長針が短針から少しずつ離れていく。
「悪い、からひな。ちょっと遅れた」
ぼんやりと時計の針を見つめていたら、横から声をかけられた。
ひなは声のした方をみやると、そこには額に汗をにじませながら肩で息をするかえの姿。
かえの姿はいつも通りの洒落っ気もない姿恰好。
ひなと並んで歩くとかえは明らかに浮いてしまう。
そんな恰好だった。
「先輩はいつも通りなんですね……」
「ん?なんかまずかったか?」
「いえ、別にそれでも良いんですけどね」
自分だけ気合入れた格好して馬鹿みたいだなと思いながら歩を進める。
「ちょっと待てよ、からひな」
かえが慌ててひなの隣に並びひなの手を掴み胸に抱き止める。
ひなの手にかえの温もりが伝わってくる。
ひながかえの表情を伺うと。
「今日は、こうして歩いてたい……」
かえは真っ赤な顔をしながらひなを見上げる。
う……やばい、その表情はヤバイ。
あゆみのように思わず抱きしめてしまいたくなる衝動を抑えながら、ひなは言葉を選ぶ。
「さすがにそれは恥ずかしいので普通に手を繋ぎましょう……」
「……だめか?」
潤んだ瞳でかえはひなを見つめてくる。
うう……その瞳で見つめられると断れない……。
一つため息をついて、良いですよ、と言おうとしたまさにその時。
「だーーーーーーめーーーーーーー!!!」
物凄い勢いでサングラスを付けたあゆみが走り込んできて、ひなとかえを引きはがした。
「かえちゃまは、私のママなのっ!!だから!!そんなことは許しませんっ!!」
あゆみはかえを胸に抱きしめながら訳の分からないことを言いだした。
「むー!!! むーーーー!!!!」
「は……はぁ……」
あゆみに抱きしめられたかえはジタバタともがいていて。
その姿をひなはぽかんと口を開けて呆然と見つめるしかない。
「ぶはっ。なに訳わかんないこと言ってるんだ、あゆみっ!!」
「だって、かえちゃまは私のママだから?」
「馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、本気で馬鹿なの?」
「そ……そんな。かえちゃまが反抗期……」
かえの言葉で抱きしめていた力が抜けたのか、あゆみの拘束を振り払ったかえはひなの陰に隠れる。
「そもそもなんでここに、あゆみがいるんだよっ!!」
「それは、かえちゃまが私のママだからっ!!」
「……馬鹿なの?」
ギャーギャーとあゆみとかえはその後も言いあうが話が全くかみ合っていない。
このままでは話が進まないので、ひなはゆっくりと口を挟む。
「あのー……あゆみさん……どこかになつ先輩もいますね?」
あゆみはその言葉にギクリとして視線をすすっと他所に向ける。
そうですかそうですか。
やっぱりいるんですね。
ひなはひとつ大きくため息をつく。
そもそもこのデートの仕掛け人はなつだった。
「次のオフの日、二人でデートしてきたら?」
その言葉にそそのかされて、ひなとかえはデートをすることにした。
ちょうど地下演劇も終わってのんびりとしたいという事もあった。
前回の『なりあがりシスターズ』の配信でつきあってます宣言をしたのもあって、それ用の写メもとりたいというのもあった。
それなのに。
「はぁ……」
「あははは……ゴメンナサイ……」
こそこそと物陰から出てきたなつはあゆみが暴れないように手を握って謝る。
「これから、私とかえ先輩はデートなんですから、邪魔しないでください」
「でぇとっ!! よよよよ……かえちゃまにでぇとはまだ早いよっ!!」
ひなの言葉に、あゆみはひなの陰に隠れるかえを捉えようともがく。
「はいはい……あゆちゃん、私達はこっちだよー……」
言いながらなつはあゆみの手を握る手に力を込める。
「それじゃ二人は仲良くしっぽりとしてきてねー……」
なつは片手でひらひらと手を振りながらあゆみをズリズリと引きずっていった。
「たぶんずっとつけてくる気だな、あいつら……」
「ですね……」
たぶんこのままだと延々と事あるごとに邪魔が入るに違いない。
なら、選択肢は一つだ。
チャンスは今しかない。
ひなはかえの顔を見つめると、かえもひなを見つめてコクリと頷く。
そして二人は手を繋いで、駅の方にダッシュで向かう。
「あ!!! 逃げたっ!!」
「追いかけるよー……」
あゆみ達の言葉が聞こえてくるが、そんな事は気にしない。
振り返らず改札を抜け、閉じかけの列車の扉に体を滑り込ませる。
そうして二人の。
二人だけの初デートが始まった。
読んでくださってありがとうございます!
百合営業中ななりあがりシスターズ。
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