かえりみち!
星々の瞬く空の下。
ひなとかえは並んで歩いていた。
地下演劇の帰り道。
いつもの二人の帰り道。
稽古の時も二人で通っていた帰り道。
ひなはふと空を見上げる。
こんな星空がずっと続いていくと思っていた。
けれど。
それは大きな間違いで。
永遠に続いていくと思われる星々も少しずつではあるけどそれぞれ位置が変わり。
数百年という年月を超えて姿を変えてしまう。
私達人間の人生なんて、星々のそんな長い営みとは比べようがない位、短いけれど。
私達の位置関係も。
人間関係も少しずつ変わっていく。
例えば、この地下演劇の舞台を通して。
ひなとかえの関係は明らかに変わっていた。
ひなはかえの演技力に魅せられ。
百合営業だとしても、かえの一挙手一投足にひなは心を動かされ。
心がひかれていくのを感じていた。
そして、今日も。
舞台の上で、かえを抱きしめた時。
心のどこかで、小さな幸せを感じている自分が居るのを感じた。
かえはひなの事をどう思っているのだろうか?
ただの百合営業の相手くらいにしか思っていないのだろうか?
聞いてみたい。
聞いてみたいけれど。
聞いてしまったら。
今の関係が壊れて無くなってしまいそうで。
だから、無言で歩く。
かえと繋いだ手に少し力を込めながら。
ゆっくりと、ゆっくりと歩く。
「からひなー……」
不意にかえに言葉を投げかけられる。
「な、なんですか?先輩」
できるだけ平静を保つように心がけながらひなは返事をする。
「かえとの百合営業、楽しいか?」
何故、そんな事を聞くのだろう。
それってどういう意味なんだろう?
わからない。
わからないけれど。
「私は……楽しいですよ……とっても」
ひなはゆっくりと、胸の内を吐露する。
かえの表情を伺うがかえはそっぽを向いていてどんな顔をしているのか伺い知ることはできない。
「そか……。じゃあ、まだまだ、よろしくな。からひな」
そう言葉を紡ぎながらかえはゆっくりと繋いだ手に力を込める。
ひなも繋がれた手の温もりを感じながら。
今ここにある、小さな幸せを感じていた。
―――
『地下演劇の配信、大好評だそうよ!』
地下演劇の舞台が終わって一週間過ぎた頃。
マネージャーOがそんな電話をかけてきた。
「は?」
マネージャーOの言葉に我が耳を疑う。
地下演劇は舞台の演劇であってそれっきりのものだったと思っていたのだけれど。
「あのー……それってどういう意味ですか?」
『関係者用に録画してた映像を配信したらプチバズったそうよ』
「……」
……ウィング先生は一体何をやっているんだろうか。
この流行り病が蔓延する環境下で公演した演劇を配信するなんて。
これじゃわざわざ地下で演劇した意味ないじゃない。
そんなのネットで袋叩きにされるに決まってるじゃん。
そう思いながら、ひなはネットを検索する。
しかしひなの予想とは裏腹に、『よくぞこんなご時世に演劇を開催してくれた』だの、
『地下演劇は演劇界の希望の星』『この主人公の少年の子、女の子?可愛いーー』だの賛同の嵐だった。
所々、『こんな三密の環境を作り出すなんて信じられない。ステイホーム!』なんてごもっともなご意見も見受けられたのだけれど。
「みんなエンタメに飢えてるんだなー……」
ぽつりとそう呟く。
自分が出演した演劇が好評だという事は確かに嬉しかった。
けれど、それだけじゃない。
この人と人との接触が規制された環境下で。
それでも人々はエンタメを求めていることを知った。
それなら……。
やはり私達は出来る事をしなければならない。
ひなは心の奥底に沸々と気持ちが溢れてくる。
私達は『表現者』なのだから。
だから……。
読んでくださってありがとうございます!
戦いは始まったばかりだ!なりあがりシスターズ。
ブクマ感想等もたくさんつけて頂いて嬉しいです!
今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m




