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『どんな願いも叶える少女』

「俺の願い事に興味があるのか?」


「ええ……とっても……」



 少女は少年の言葉に応えながらも薄ら暗い笑みを絶やさない。

 スポットライトに照らされたような二人の姿を闇に飲み込んでいくように。

 少女はクスクスと笑みを絶やさない。



「俺の願いは……自由が……。自由が欲しいっ!!」



 少年は人目を憚らず思わずそう叫んでいた。



「……そう……。自由……」



 少年の叫びを聞きながら。

 全てを見透かしたような瞳で少女は呟く。

 そして。



「あなたの願い、叶えてあげる……」



 少年は自分が何を言われたのか分からなかった。

 だから少年は問い返す。



「願いを、叶える……?」


「そう……あなたの夢と引き換えに、ね」



 少女は呟くとクスクスと微笑みかける。

 少年は自分の夢は何だろうと考える。

 自分の願いは、自由が欲しいということ。

 それでは、夢は?

 わからない。

 わからない、けれど。

 少年は意を決して少女に答えを。

 少女の言葉に応えるように。



「俺は、夢なんてわからない。でも自由は。この自由だけは欲しいっ」



 少年は少女にそう告げる。



「なら……。さぁ、私の手をとって。あなたの願いはそれで叶う」


「……」



 少年は無言で少女の顔を逡巡し。

 ゆっくりと少年は少女の手を握った。

 すると少女は少年の体を引き寄せ優しく抱擁する。

 ゆっくりと、ゆっくりと……優しく抱擁する。



「……これで、あなたの願いは叶った」


「ありがとう……」



 顔を真っ赤にして、少女の胸の中で少年は呟く。

 これで自分は自由だ。

 これからも、ずっとずっと自由に生きていける。

 ありがとう、ありがとう……。

 不意に少年は眩暈に襲われる。

 その眩暈に誘われるように、少女の胸の中で少年は意識を失った。



「そう。それが、あなたの夢、だよ」



 少女はクスクスと笑みをこぼしながら。

 少年をその場に横たえ闇の中へと消え去っていった。


 少年が目を覚ました時には少女の姿は影も形もなく。

 空も明るくなりかけていたので、慌てて屋敷への帰路に着いた。


 その日を境にして。

 世界から病が駆逐されていった。

 少年も屋敷を出る事を許され、自由を満喫した。

 これまでの鬱憤を晴らすかの如く。


 けれど、そんな日々も長くは続かなかった。

 何故なら少年は病に侵されてしまっていたからだ。

 少年の『自由に過ごす』という願いは叶った。

 少年の『ずっとずっと自由に生きていくという夢』を犠牲にして。

 ベッドに寝たきりの少年はメイド長に笑いかける。



「俺は願いを叶えることができた……。それだけで満足だ」



 ―――


 少女は薄暗い部屋の一室でクスクスと笑みを浮かべる。



「世界は少年の純粋な願いを叶えて……。純粋な夢を犠牲にして、救われた……」



 少女の呟きと妖しい笑いが部屋に木霊する。

 クスクス、クスクスと。

 永遠に……。


 ―――


 少女……ひなの笑いが木霊する中、幕が下りる。

 沈黙が訪れ。

 パチパチと観客席から拍手が沸き起こる。


 ひなの胸には無事舞台をやり遂げた安堵と充実感が去来する。

 それにしても、やはり少年……かえを抱きしめるシーンはドキドキしたなと思い返す。

 始めは手をかざすだけだったのに、ウィング先生がひなとかえの百合営業の事を聞きつけて抱擁するシーンになってしまったのだ。

 おかげで無駄にドキドキする羽目になってしまった。


 キャストの皆とお客さんの前でお辞儀をしている中、かえがゆっくりとひなの手を握ってきた。

 ひなはその手にゆっくりと力をこめて握り返す。

 かえが何故手を握ってきたのか。

 それがどういう意味だったのか。

 ひなはまだ、その意味を知らない。


 通常の演劇であれば閉演後、物販があったり、キャストとのチッキ会なんかがあったりするのだけれど。

 これは地下演劇なので、そんな事は一切なく。

 キャストのお客様のお見送りも無し。


 舞台には関係者だけが残っており。

 そして、今日の舞台についてあーだ、こーだと感想を言いながら。

 軽い打ち上げをやっている。

 打ち上げの主役のかえは、関係者枠で観覧していたあゆみに抱かれてむっすりとしていた。



「かえちゃまの少年役、ほんと様になってて良かったよー♪」


「あはっ★ありがとうだよ、あゆちゃんっ★」



 流石にウィング先生や他の皆が見ている前で素のかえを見せられないので、かえは猫を被るしかなかった。

 その弱みに付け込んであゆみはかえを猫可愛がっているのである。

 つまり、あの日、おトイレに立て籠った日。

 見学に来ていたのはこの日の為だったのだ。

 したたかというか、何と言うか……。

 ひなは二人の姿を見つめながらため息をつく。



「んふふふ……。かえちゃんを取られて寂しいのかなー?」



 隣に座っていた同じく関係者で観覧していたなつにそんなことを言われる。



「いえ、まったく」


「そんな顔してないけどなぁ……」



 ニマニマとにやつきながらなつは食い下がってくる。



「(・○・)ソンナコトナイデスヨー……」



 ひなは仲睦まじそうにしているかえとあゆみを見つめながら。

 そう答える事しかできなかった。


読んでくださってありがとうございます!

地下演劇も無事に終わったなりあがりシスターズ。

演劇の内容が気になった方は下記の小説も読んでいただけると嬉しいです。

https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/1644353/


ブクマ感想等もたくさんつけて頂いて嬉しいです!

今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m

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