4人目、あらわる!!
「えー今日も始まりました、なりあがりシスターズ。司会進行長女の唐津ひなです」
『次女の会津かえだよ★』
『三女の水戸なつ……』
「三人あわせてー」
「「「シスターズですっ」」」
今日も綺麗に三人の声がハモる。
うん、良い感じ。
「そんななりあがりシスターズも早いもので配信十回目。今日はゲストさんと繋がっています」
『全然そんな話聞いてないぞっ★』
『私も初耳……』
ですよね、私の台本にもそんなこと一言も書いていないもの。
マネージャーOからの通知で急に来たカンペを読み上げたに過ぎないのだから。
「私もゲストが誰なのか、知りませんっ。それでは、ゲストの方に繋いでみましょうっ」
言いながら手早くマネージャーOに指示された通り配信を操作する。
すると、ポンっと軽快な音が流れ、メッセージが聞こえてきた。
『僕がシスターズの4人目担当、WING桜美林だっ!!』
「「「……」」」
何かの聞き間違いかと思ったが、おもいっきりウィング先生の声だった。
配信コメント欄も今の台詞にざわつき始めた。
「えーっと……これはいったい……」
『事故ってレベルじゃないと思うぞっ★』
『私も、そう思う……』
シスターズの三人がそれぞれ言葉を口にすると。
再び、ポンっと軽快な音が流れメッセージが聞こえてきた。
『僕はー、ひなお姉ちゃん達と生きている時空が違うのです~』
じゃあ出てくんなよ。
そう思いながらも、ひなはにこやかに場を繋ごうとする。
「あのー……えっと……配信をご覧の皆さんにご紹介しますと、この声は脚本家のWING桜美林先生です」
ひなが説明を終えたタイミングで三度、ポンっと軽快な音がする。
『早く進行してくださいっ!!』
いやいやいやいや。
今私、進行してたよね?進行してたでしょ、何言ってんのウィング先生。
「「「……」」」
気まずい空気が配信チャンネルに訪れる。
そんな中、またもやポンっと軽快な音がして。
『メーーールが届いてるので、読んでくださいっ』
ウィング先生に促され、予め用意しておいたメールを読むことにした。
一体何のつもりなんだろう、ウィング先生は。
笑顔を絶やさないように努力をしながらも心の奥底で疑念が湧いてくる。
ポン。
『そういうコーナーです』
はいはい、そうですか、そうですか。
もうウィング先生はいないものとして進行しよう。
そうしよう。
その方が精神衛生上たぶん良い。
そう思い直し、ひなは『なりあがりシスターズ』の配信を進行するのだった。
―――
『お疲れちゃーん』
「「「……おつかれさまでーす……」」」
配信が無事に終了し、マネージャーOと挨拶を交わす。
いつもの配信の三倍は疲れたと思う。
正直、ポンポン茶々を入れてくるウィング先生の相手をするのにひなは疲弊しきっていた。
いつもは元気なかえやなつもぐったりしていた。
『で、どうよ?新メンバー』
「新メンバーって……ウィング先生がですか?」
マジかと思いながらマネージャーOのどや顔をみつめひなはそう問い返す。
『のんのん。これはウィング先生であってウィング先生にあらず』
「はぁ……」
何言ってんだこの人は?
口には出さないがそう心の底でひなは思う。
『これはマンネリ化しつつある、なりあがりシスターズの最終兵器っ!!』
「最終兵器……ですか……」
っていうか、こっちがいつも必死で番組を盛り上げようとしてるのにマンネリ化とかいうなし!!
『その名も、うぃんぐポンよ!!』
ポンっ。
『僕がシスターズの4人目担当、WING桜美林だっ!!』
「「「……」」」
うぃんぐポン……。
それはWING桜美林先生の音声を事前に収録しておき、マネージャーOが好きなタイミングでその音声を再生するシステム。
マネージャーOが言うにはつまりはこういうことらしい。
一体何をしているんだろうか、あの人は?
というか、こんなくだらない事を考えるマネージャーOさんもOさんなのだけれど。
そう思いながら、ひなはウィング先生の姿を思い浮かべる。
ああ、でもあの人はこういうくだらないことをノリノリでやる人だったな、思いだした。
『と言う訳で、次回の配信からもシスターズの4人目としてうぃんぐポン使うから』
「「「やめてください」」」
結局。
その日の配信以降。
『なりあがりシスターズ』の配信に『うぃんぐポン』が加入することはなかった。
チャンネル会員10万人まで、残り99970人。
読んでくださってありがとうございます!
へんな方向にむかいつつあるなりあがりシスターズ。
うぃんぐポンの元ネタはセレクターラジオ。WIXOSS大好きです、はい。
ブクマ感想等つけてもらえるとうれしいです。
今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m




