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こども、どもども。

「やほやほー。かえちゃま、お久しぶりー♪」


「うげ……あゆみ……」



 今日は舞台の衣装を買いたいと、かえから話を持ち掛けられて。

 相談した結果、シスターズの三人でお出かけをしようという話になり、原宿で待ち合わせをしていたひなとかえだったのだが。

 そこになつと共にひなの見知らぬ闖入者が現れた。



「お、初めましてだね、ひなお姉ちゃん♪私は、富士あゆみ。なつ達の幼馴染だよ。よろしくね~♪」



 なつの隣についてきたショートカットの少女はそうひなに自己紹介をしてニコリと微笑む。



「なつ先輩達の幼馴染ですか……」



 なぜ自分の事をお姉ちゃん呼びなのかは置いておくとして。

 幼馴染という割にはかえが何故か怯える様にひなの後ろに隠れているのは何故なのだろうか?

 疑問を口にしようとしてボソボソとかえがその疑問の答えを呟く。



「あゆみはかえのことを子供扱いするんだよ。だから苦手なんだよ……」


「そう……なんですか……」


「へーーー……かえちゃまは、私の事、嫌いだったんだね……」



 かえの言葉を耳ざとく聞きつけ、人はまばらだとはいえ、ヨヨヨとあゆみはその場に崩れ落ちる。



「いや、そうは言ってない……」


「じゃあじゃあ? なーんでかえちゃまは、ひなお姉ちゃんの陰に隠れてるの? あゆみ、とーーっても悲しいなぁ……」



 顔にハンカチをあてながら泣きだしそうな表情をするあゆみ。

 流石に良心が痛んだのか、かえはあゆみの元に歩みより。



「こんなところで泣き出すなよ、おいっ……てーーーっ!?」


「はぁああああ!! もう。やっぱり、かえちゃまはかわいいなぁぁぁ!! よーしよしよしよしっ」



 近寄ったかえはものの見事にあゆみに捕獲された。

 それはまるでどこかの動物王国の園長さんみたいな猫可愛いがりようだった。



「はーーなーーせーーーーーーーっ!!」


「よーしよしよしっ。照れなくても良いんだよー、かえちゃまぁー」


「だから、かえちゃまはよせーーーーっ!!!」



 全力であゆみの魔の手から逃れようとするかえの姿を唖然とした表情でみつめるひな。



「……いつもああなんですか?」



 隣でその光景をじゅるりとよだれを垂らしながらみつめるなつに、ひなは問いかける。



「うへへ……。うん、あの二人はいつもあんな感じ……」



 じゃあなんで連れてきたし……。



「だって、あゆちゃんもかえちゃんに久しぶりに会いたいって言うから~」



 悪びれた風も無くなつはひなにそう告げる。



「ひなちゃんとかえちゃんの絡みも良いけど、やっぱりあゆちゃんとかえちゃんの絡みも捗るから……じゅるり」



 さいですか……。

 あゆみに捕まり頬ずりされるのを全力で嫌がるかえを見つめながら。

 ひなは大きく一つため息をつく。

 この買い物は一波乱ありそうだなぁと思いながら。


 一頻り頬ずりをして満足したのかあゆみはかえを解放した。

 解放されてぐったりしつつも、かえはひなの陰にサッと隠れる。



「あらら……ほんとかえちゃまはひなお姉ちゃんの事、大好きなんでちゅねー」


「なっ!! ちがうわっ!!」



 かえは顔を真っ赤にしながらあゆみの言葉を全否定する。

 そうだよね、違うよね。

 これは百合営業の一環だもんね……。

 ひなはかえの言葉に少しもやっとしながらも心に言い聞かせる。



「それよりもかえの衣装っ! さっさと買いに行くぞっ」



 かえはひなの手を握り先頭に立って原宿の街へと繰り出した。



「わわ、待ってください、先輩っ」


「いいや、待たない。さっさとしろ、からひなっ」



 言いながら、かえはひなにニコニコと微笑みながら駆けだした。



「ほーんと。仲がいいんだね。焼けちゃうなー……」



 ぽつりと呟くあゆみの言葉を残して。



 ―――



「とりあえずこの店に入ろうぜ」



 かえを先頭にひな達は原宿の服屋の一軒に入ることにする。



「お、これなんかなかなかカッコよくね?」



 入店早々、かえは派手なプリントされたTシャツを片手にお宝を手に入れてやったぜと自慢げに微笑む。



「ヨヨヨ……そんな大人なTシャツなんて……。かえちゃまはキッズ用Tシャツ着てなきゃだめでしょっ!!」



 あゆみはどこからか持って来たネズミの絵がプリントされたキッズ用Tシャツを手にしながら反論をする。



「かえは子供じゃねええええっ!!!」



 あゆみの言葉にかえは心底嫌そうに叫び声を上げる。



「あはは……まぁまぁ……。今日はかえ先輩の衣装を買いに来たんですから、先輩の意志を尊重して……」



 それにお店の中では静かにして欲しい。

 ひなは心の底でそう付け加える。



「そうだよな、からひなっ!!」



 ひなの影に隠れて、かえはあゆみにあっかんべーと舌を出す。



「だめだめ~!! かえちゃまは舞台でこのキッズ用のTシャツ着るの~!!!」



 あゆみはあゆみでひなの服をひっぱり駄々をこね始めた。

 これは何と言うか子供におもちゃをせびられる母親のような心地だ。

 ……はぁ……どっちもまだまだ子供だなぁ……。

 かえとあゆみに挟まれながら、ひなは盛大にため息をつく。



「なぁなぁ、からひなはこっちの方が良いと思うだろ?」


「ひなお姉ちゃんは、かえちゃまはキッズ用が良いと思うでしょ?」


「かえちゃんとあゆちゃんに挟まれて良いようにされるひなちゃん……うへへ……」



 なつはもう止めるそぶりすら見せずに自分の世界にトリップしているし。

 ここに真人間は私しかいないのか?

 お店の天井に問いかけながら。

 この事態をどう納めるべきなのか、考えようとする。

 考えようとするのだけれど。



「からひな~っ!!」


「ひなお姉ちゃんっ!!」



 二人の子供もどきに挟まれて。

 考えようとした結果、結論。



「うぅ……もう好きにしてください……」



 そう言葉にするしかなかった……。

読んでくださってありがとうございます!

変人?がまた一人登場したなりあがりシスターズ。

ブクマ感想等つけてもらえるとうれしいです。

今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m

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