1話
「皆さま、ズーク帝国へようこそ!」
豪華そうなドレスを着た綺麗な女性が笑顔でそう言った。
ただっぴろい広間にその女性と黒いフードを被った男性、騎士のような恰好をした男性がこちらを見ていた。
周りをみると、見知った者が総勢29名。自分を含め皆何が起こっているのか分かっていない様子でざわざわしていた。
少し落ち着こうと、何があったのか振り返ってみようと目を瞑った。
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「佑太!早く起きなさい!遅刻するわよ!」
遠くから母の声が聞こえる…。
その声を聞き、少しずつ頭が覚醒していく。
ガバッという音が聞こえるかのように青年は勢いよく起き上がった。
4月の8日今日は高校の始業式。佑太と呼ばれた青年は現在高校2年生だった。
昨夜遅くまでゲームをしていた佑太は見事に寝坊し、新学期早々遅刻の危機に陥っていた。
はっきり覚醒した佑太は時間を見た瞬間、ヤバッと思ったがそれも一瞬。すぐに諦め、たらたらと準備をし、学校に向かった。
案の定、始業式はもう終わりを迎えていた。
事前に知らされていた為、佑太は迷わず自分のクラスに向かい、自分の机に突っ伏した。
すると、すぐに廊下がざわざわと騒がしくなり、教室の扉が開き、わらわらと人が入ってきた。合計30人ほどが入ったと思った瞬間、目の前が見えない程の眩しい光に包まれた。
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佑太は目を開き、思った。
「え、全然わかんないっ……。」
当然、落ち着いたところでなにも分かることはなかった。
周りのクラスメイト達もなにも分からないようで、キョロキョロしている。
「皆さま、落ち着いてください。これから説明させていただきます。」
ドレスを着た女性の声が広間に響いた。
僕を含め、クラスメイト全員が女性の方を向き、説明の続きを待つように静かになった。
「改めまして。私はズーク帝国第一王女のソフィアと申します。皆様方につきましては、いきなりの事に驚かれていると思いますが、お願いがあって召喚させていただきました。
今、この世界は魔族の脅威に脅かされています。
私達、この世界の住人の力だけでは、もう………。
異世界の皆さまには召喚の陣を通って天職が与えられています。その力をもって、どうか、魔族の脅威からこの世界を救って下さい!」
ソフィアと名乗った女性がこちらに対して懇願してきた。
一部の者はその懇願に対し真剣に考え、一部の者は戸惑い、そして残りの一部の人者は内心で歓喜した。
夢にまで見た異世界!テンプレ!!チート?!
主人公である佑太は一番最後の者……俗にオタクと呼ばれる者たちの一部だった。