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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第三章 廻魂編
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第64話 処刑台と次元の裂け目

 先日、竜人の神体での体操作の慣熟訓練を終えたので、次はステータスの底上げに勤しむ事にした。


 俺の訓練の流れは、先ずは身体の持つ特徴や能力の把握に努め、次に回避や防御の訓練を行う。

 その回避や防御の訓練を終えれば、その身体の最適な動かし方も大方把握できているので、それらを元に攻撃などの方法や動作の確認と最適化をする。


 その後は、身体に合わせた装備の研究と全体的なステータスアップの為にLv上げを行い、身体能力が上昇し特殊能力などを獲得したら、最初の工程に戻るといった事を繰り返すといった流れになる。


 装備に関しては今まで作った物が色々と有るので、そのデザイン変更を行うくらいしか今のところは思いつかないな……

 まぁ、これは気長にやろう。


 Lv上げに関しては、大陸の方の魔物の氾濫が起きそうになっている地へと赴き、その抑制作業を行っていれば自ずと上がるので、こっちを先にやれば良いか。

 戦闘をしながら、ついでに装備の案も考えよう。


 俺はそんな計画とも言えない事を考え、皆が寝静まるのを待ってから大陸へと赴き、Lv上げに勤しんだ後、島が朝になる前には皆の元へと帰ってくるという生活スタイルへとシフトした。




 夜明け前に俺は島へと帰ると、いつもの様に皆と朝食を食べてから、朝の散歩と見回りへと向かった。


 気持ちのいい朝だ。


 早起きな者達は朝食を既に済まして、日課や趣味、または冒険へと動き出し始めている。


 そんな日常の光景を見ながら近くを通り過ぎる者達から朝の挨拶を受け、それに答えながらエルフィーと一緒にぶらぶらと歩いていると、主に衣類制作の者達が集まる場所の近くの川辺に、妙な柱と梁が出来ている事に気が付いた。


 地面から立てかけられた二本の柱の上にある梁から、大きいミノムシの様な物がいくつかぶら下がっており、その物体と柱と梁の影に川の水面からキラキラと朝日が反射光して映っている。


「……なんだアレは?」


 昨日は、あんな物は無かったはずだが……


 そんな事を思い、俺が呟くと


「あれは、処刑台ですね――」


 と、隣を歩くエルフィーからギョッとする答えが返って来た。


 へ……? 


 しょ、処刑!?


 俺が出掛けている間に何が有った!?

 そんな、大事が起きているのは感知しなかったぞ!?


「――昨夜、あの者達が、あの辺りで寝ていた者達の寝込みを襲ったそうでして。

 直ぐに捕らえられて、あそこに吊るされたそうです」


 との事だった。


「……あぁ、なるほど」


 なんだ、夜這いに失敗して、お仕置きを受けているだけか。


 物騒な言葉に一瞬びっくりしたが、よく見て見ると梁からぶら下がっているのは縄でぐるぐる巻きにされ逆さ釣りになった男達の様だ。

 若干、顔面などが可哀そうな事になっているが、ダメージはそれほどでも無いし、無事では無いが生きてはいるな。


 多少は文化的な生活様式の片鱗が見え始めている昨今だが、未だに求愛行動など様々な所が原始的なままなので、こういった事は頻繁に起こる。


 俺の記憶の彼方に有る現代社会では、収入やルックス、社会的地位や身体能力、才能や性格、と多種多様な事でアピールしたりされたりで合意に至り、にゃんにゃん生活に行きつくわけだが。

 現状では、他者にアピールする方法が確立していないのと、出来る事や物も少ないのだ。


 収入なんて物は無いし、ルックスも種族以外の差はそこまで無い。

 地位に関しても、そんなポストに就いている頃には、既に妻や夫的ポジションが出来上がっている。


 原始的な社会体系なら、身体能力が最大のアピールポイントとなるかと思っていたのだが、この世界ではそうはならなかった。

 脅威となる外敵も少なく、狩猟などの行為もダンジョン以外では一般的ではないと言う事も有るかもしれないが……


 ……一番の要因は、男と女との能力差が無い所為だ。


 身体の機能的な違いはあっても、能力的な事は総合してみると差が無いのだ。

 なので、男が女に力任せに迫ったとしても、あっさりと撃退される事となり、あそこで逆さ釣りされている彼等の様な目に合う事になる。


「衣類関連の作業場は、女性が中心の生活拠点になっていますから。

 あの場所で女性に手を出すのは……自殺行為、とでも言うべきでしょうか」


「そうだな……まぁ、反省したら降ろしてあげるように言っておこう」


 俺はそう答え、心の中で、あの処刑台が川辺に延々と増えたりしないといいなぁ、と思ったのだった。



 その後、エルフィーはダンジョンの新たなる階層へと挑戦しに行くとの事で、竜人達と合流してから転移の祠へと行き、俺は一人で時の箱舟へと向かった。


 時の箱舟は皆が目覚めた後に多少の改良を施してあり、簡易ながらもエレベーターなどの移動手段や空調設備も増設し、外の時間と連動して光量が調節される様に照明関連にも改良を加えた。

 ゴミなどの処理にダストシュートや転送式の自動清掃機能も備えてある。


 とは言え、やはり外の景色が見えない閉塞感のある構造をしている所為か、住居として使う者は少ない。

 ここを住居として利用しているのは、エルフィーに竜人達、あとは一部の職人達くらいだな。


 なので、空室となっている場所は、主に倉庫として使っている。


 その区分けされた倉庫部屋に、皆でも扱えそうな食材や素材を入れておき、自由に使わせていて、週に一回の割合で補充も行っている。

 そして今日は、その補充日である。


 補充日の前夜は余った酒類や食材などを飲み食いしようと、ちょっとした宴会の様な物が繰り広げられており、次の日の午前中はそれに参加した者達が時の箱舟の周辺や通路で、点々と道端の石ころの様に転がって昼近くまで眠っている。


 俺はその者達を踏まない様に気を付けながら倉庫の内部へと行き、棚や樽に置いてある様々な物の消費量の増減などを調べながら補充を行っていった。


 そんな作業を行いながら、穀物系の物を保管してある倉庫へと行くと、そこにはサーリが居た。


「うーん……」


 と、何やらジャンボ栗を前にして悩んでいる様子である。


「どうした? 何か悩み事か?」


「主様?

 いえ、悩み事と言うほどの事じゃないんですけど。

 ブロッククッキーの改良ができないかなーと考えていたんです」


 どうやら、先日助言したダンジョン用の糧食の事らしい。


「改良……?

 それは、もっと美味しくしたいとか、味の種類を増やしたいという事か?」


「えっと、味もそうなんですけど、食べると元気になる様な物が作れないかなぁって思いまして……

 ダンジョンに来る初心者さん達に配る物なので、その助けになる様な物に出来れば良いんですけど……世界樹の葉を練りこんでみようかなぁ?」


「ふむ……――」


 世界樹の葉以外にも、そういった効果を出す物に心当たりがいくつかある。

 だがそれらは、倉庫内には置いてない食材だ。


 中枢神経に作用する成分が多量に含まれている物で


 いわゆる、コーヒーや茶葉、カカオなどである。


 ああいった物は慣れていない者には刺激が強いし、成分的にも妊婦や幼い子供の口に無秩序に入るのはマズいので、食糧庫の中には陳列してはいない。

 酒類に関しても、それらの者達が飲まない様にと気を使っているのだ。


 しかし、カフェインやテオブロミンなどが引き起こす覚醒感や呼吸器系の強化のもたらす効果は、ダンジョンへ挑戦する者達にはプラスに働く事が多いのも確かだ……


「――……サーリ。

 よければ、私が手伝ってもいいか?」


「え? 主様がお手伝いをですか?それは、わたしとしても助かりますけど……

 何か良い物でもあるんですか?」


「ああ、いくつか試したい物がある」


 てなわけで、彼女と一緒に試作してみる事に決めた。


 ダンジョンに行く者達だけに配るというのであれば丁度いい。

 妊婦さんはもちろん、幼子もそうそう迷い込む場所ではないし、ちゃんとその辺の対策も施してあるしな。


「それで、何処で料理をするんだ?」


「えっと、エルフィーさんの作った……きっちん?って所です。

 エルフィーさんから鍵を預かっているので、そこに行きましょう」


 調理する場所を尋ねると、サーリはそんな事を言った。


 そんな物が作られていたのか……

 エルフィーの料理の上達の秘密はそれだったのかな?


 でも、キッチンにわざわざ鍵?


 などと疑問に思いながら、俺はそのキッチンへと案内されることになった。



 床に酔っぱらって寝転がっている者達に気を付けながら進むと、そこはエルフィーの部屋の前だった。


 なるほど、エルフィーの部屋の中に有るのね。

 だから扉と鍵があるのか。


 だが――


「……なぁ、サーリ。私も入って良いのか……?」


 と、素朴な疑問が浮かんだ。


 いくら一番親しいエルフィーの部屋とは言え、勝手に入ってしまって良い物なのだろうか?と


「え? 主様なら問題ないと思いますけど……ダメなんでしょうか?」


 と、プライバシーなんて概念を露程にも知らない生活を送っているサーリ達からすれば不思議に感じられる感覚や常識なのだろうが……どうなんだろう?


 俺としては、よほど親しい友人や知人なら勝手に入ってても問題無く感じるが、親や異性が勝手に部屋に入るのは妙なモヤモヤ感がある気もする。

 サーリに鍵が託されているという事は、彼女が入る分には良いのだろうが、俺のポジションはどの位置になるんだろう?

 なんか、我ながら思春期の男子みたいな思考だ。


 それに、今まで無かった扉と鍵を設置したという事は、何かしら他者を拒絶するという意図があっての事だと思うのだが……気の使いすぎか?


 今朝方の、吊るされていた男達の様なのを防ぐのだけが目的かもしれんしな。


「まぁ……一言、断ってからにするか」


 と、一応、念話でエルフィーに言ってから入室する事にした。


「(エルフィー、サーリと一緒に、お前の部屋のキッチンを使わせてもらいたいのだが、いいか?)」


「(主様? はい、構いませんが――あッ、しょ!少々、お待ちをッ!)」


 彼女にさっそく念話をすると、そんな少し焦った感じの返事が返って来た。


 戦闘中とか、不味いタイミングで連絡しちゃったか?

 悪いことしたかなぁ……


 などと、俺がのんきに考えていると――


 ――いきなり周囲に、何か固く大きな物が軋みを上げながら割れる様な音と、雷鳴の様な轟音が鳴り響き始めた。


 音と周囲を揺るがす振動に一瞬身構えたが、それを起こしているのは、どうやらエルフィーの様だ。

 その現象を起こしている魔力に彼女の存在を感じる。


 やがて、目の前の空間に白い光の線の様な亀裂が現れ、振動と轟音と共にその亀裂の裂け目が徐々に大きくなり、さらに視認できるほどの魔力を纏った手が亀裂の向こう側から差し込まれると、淵を掴み無理やりこじ開け始める。


 その裂け目の向こう側にチラッと見える所では


「え!? ちょ、エルフィー!?

 なにやってんの!?」


 と言った感じで、リーティア達も驚き、こちら側を見ていた。


 どうやら戦闘中でもあったらしいく、その戦っていたヒュドラっぽい魔物の方も、驚きで固まり、こちらの様子を見つめていた。


 エルフィーの手と魔力にこじ開けられていく空間の裂け目は、硬質なガラスの塊が重い何かに潰される様な音を立てながら広がって行き、人一人が通れる大きさまでなると、それを潜り抜けて、エルフィーは俺の目の前にやって来たのだった。


「はぁ……はぁ……おまたせ……しました。

 少々、お待ち、ください。

 今、主様をお迎え、するのに、相応しいよう、部屋を整えますので」


 無理やり時空魔法を発動して空間を繋げて帰って来たエルフィーは、息を切らせながらそう言い


「え……? あぁ、うん」


 それを見ていた俺は、そんな間の抜けた返事をする事しか出来なかった。


 そして彼女は一礼して自室へと入って行き、部屋の外には俺とサーリ、それと次元の裂け目が閉じていく向こう側の、竜人達とヒュドラだけが残されたのだった。


 そんな無理してまで、急いで帰ってくる事もなかろうに……

 リターンクリスタルを使ってから飛翔魔法で帰って来ても、数分程度で帰ってこれそうなものだが、何か俺に見られるとまずい物でもあったのだろうか?

 衣類が脱ぎ散らかってるとか、下着が干してあったりでもしたのかね。


 しかし、戦闘中に戻ってきちゃってるけど、いいんだろうか?


 一応、お詫びも兼ねて、向こうに残って居るリーティア達に補助魔法を掛けておこう……

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