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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第三章 廻魂編
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第61話 竜人の神像

 皆のダンジョンへの挑戦や、島のあちこちへの冒険が日常になり始めた頃。


「うーん……」


 俺は悩んでいた。


「どちらも、甲乙つけがたい……」


 俺の前には、様々なポーズをとり自己アピールらしき事をしている、レイディアとバハディアの二人が居る。


「まだ決まらんのですか?」


 と、悩んでいる俺に、ドグが肩にトンカチを担ぎながら急かしてくる。


「主様。いっその事、両方にしたら?」


 俺の隣に居るリーティアが、そんな意見を言ってきた。


「両方?」


「二人の特徴を混ぜちゃえばいいんじゃないかしらぁ?」


 と、今度はシルティアが答えた。


 なるほど、何もどちらか一方に決める必要も無いのか。


「では、そうするか」


 こうして、竜人神像の作製方針が決まったのだった。




 そして出来上がった物がこちらになります。


 制作期間2年とちょっと


 監修 リーティア、シルティア

 制作 ドワーフ一同

 仕上げ エルフ一同


 大理石による白を基調とした神々しさを溢れさせる雰囲気ながらも、竜人という特徴の大きな種族を躍動感あるフォルムで立像として仕上げ。

 手足や羽が、元となったモデルの二人よりも力強くアレンジがなされており、角の本数なども増やされ、背丈も1割ほど高くなっています。

 鱗や爪などの細部に至るまで、細かく彫り込まれており、さながら生きているかの様な生々しささえ感じさせる素晴らしい逸品です。


 でもお高いんでしょう?


 いえいえ、そんな事は御座いません。


 ドワーフ達には、その日の作業の終わりに数樽の酒を差し入れるだけ。

 エルフ達は、縫製に使う器具や素材や貴金属をたびたび強請ってくる程度です。



 竜人の身体の複雑さ故に強度を考慮し、初めての材質である大理石にチャレンジして、羽や尻尾が背中側に有るので寝かせた状態での作製は無理だとの判断から、彫刻過程も立像状態で彫り込む事で漸く完成した。


 あと、なんかリーティアとシルティアの要望なのか、皆のこうあるべきとの意見なのか、角など様々な部分がかなり厳つい形状にアレンジされている。


 ドワーフ達は、石の従者の宝玉から生み出した動く踏み台と化したゴーレムを有効活用し、高所での作業も楽々行えるようになり。

 エルフ達も、手に入れた万能彫金器具を使い、細部まで細かく彫り込んで仕上げをしてくれた。


 その双方の努力と技術の結晶とが、今までで一番の難易度だったであろう、この竜人像を完成させたのである。



 さてと、それではさっそく竜人像に降臨してみるか。


「では皆、無事、像に宿れる様に祈っててくれ」


 像の周辺に集まる皆へとそう言い残し、俺は天界へと行った。



 あの謎パソコンのある天界も長い年月の間の暇を利用して、ペイントソフトを使い壁紙をこつこつと描き、快適な環境に様変わりしていた。


 パソコンとちゃぶ台はそのままだが、座椅子、冷蔵庫、キッチン等々。

 各種インテリアが揃った、ワンルームマンションの一室へと変貌を遂げたのだ。


 まさしく、俺専用の城である。


 少しここでのんびりして居たい気もするが、下で祈りをささげ俺の降臨を待って居る皆に悪いので、パソコンの画面に久々に現れた『オブジェクトが神体になりました』の表示にある降臨ボタンをクリックした。

 そして、何時もの様にスカイダイビングを終え、無事、俺は竜人の神体へと降臨を果たす事が出来たのだった。


「おかえりなさいませ、主様。

 新たなる御身体への御降臨、お喜び申し上げます」


「ありがとうエルフィー」


 先頭に居たエルフィーがそう声を掛けて来て、他の者達からも同じように祝福を受ける。


 皆からの祝辞に答えながら自身の身体を確認してみると、体が少し妙な色合いをしていた。


 今までの神体は、基本、髪や体毛は白で瞳は黒となっていたのだが、今回の竜人の身体は体毛が無く、鱗で全身が覆われているので如何なるかと思っていたが。

 体を覆う鱗は白銀の色彩を放っていた。

 瞳の色も、どうやら銀のようだ。


「ふむ……」


「主様。御召し物をどうぞ」


 俺が鏡を取出し自身の顔を眺めていると、エルフィー達が恒例の衣服とローブを持ってきてくれた。


 服は竜人達本人が使う物を作って来たノウハウが有るので問題無いが、ローブに関してはどんな構造にしたのだろう?と、思っていると。

 エルフィー達が持って物は、銀色に輝く肩パッド状のアーマーから数枚の布地を垂らす様に繋げてあり、その隙間から手や羽などの出し入れが容易な構造の物を考案し作り上げてくれたらしい。


「どう?主様?

 動きにくかったり、窮屈な所は無い?」


 と、服とローブの作製の大部分を手掛けたリーティアが、俺の全身を舐め回す様に見ながら聞いてきた。


 竜人の身体は、大きいだけでは無く、体の各所に硬質な鱗や角の様な物が有るので、それが布地に引っかかったりしないか少し心配していたが、ちゃんとその辺も考慮した作りと補強がしてある。

 なかなか良い作りをしているな。


「うむ……問題ない様だ。ありがとうリーティア」


「体の色はレイに似てますけどぉ、瞳の色は私達と違いますねぇ。

 でもぉ、ご用意した衣類と合ってて素敵だと思いますわぁ」


 シルティアの言う通り、服とローブには今まであまり使われる事のなかった金属類の装飾が施されており、この体の色とマッチしている気がするな。


「うむ。たしかに、装飾と合わさって――ん? この布地は……」


 着せられたローブの布地を見て、俺はその不思議な光沢に気が付いた。


 これは……絹か?

 という事は、シルクワーム系統の魔物を見つけたのか。


「ええ、絹と言っていいのかは分かりませんが、魔物から採れる糸を使いました。

 いかがですか? お気に召しましたでしょうか?」


 と、エルフィーが教えてくれた。


「ああ、良い手触りと色合いをしているな。

 採取するのは大変だったのではないか?」


「いえ、それ程でもありませんでした。

 仲良くなる事が出来まして、たびたび糸を分けて貰える様になりましたので」


 仲良く……?


 虫系の魔物と意思疎通ができるのか?

 試したことが無かったな……


 ダンジョンから出て来た魔物でも、外で自生するようになった個体は飼いならす事がある程度は可能なのだが……獣系の魔物以外でも可能なのか。

 今度、見せてもらおう。



 その後、毎度の如く像の完成を祝って世界樹の根本は宴となった。


 この日ばかりは、いつも冒険やダンジョンへと出かけている者達も帰ってきており、俺を取り囲む様に集まっている。

 去年、人口が1000人を超えた事もあり、なかなかに壮観な光景だ。


 最近では皆も料理をし始め、様々な試作品が出来上がりつつある。

 なので、今日は酒以外の物は、全て皆の手作りとなっていた。


「主様、こちらの試食をお願いします」


「食べてみて―」


 と、サーリとリーティアの二人が少し黄色い生地のパンを持ってきた。


 一口食べてみると、砂糖や蜂蜜とは違う甘みを感じる。


「ふむ……この甘みは……

 栗だな? 栗粉を使ってパンを焼いたのか」


「そうなんです!

 どうですか? 美味しいですか?」


 俺が材料を当てて見せると、サーリは嬉しそうに驚いてから、味の感想を聞いてきた。


「ああ、なかなか美味いぞ。

 一緒に練りこまれているクルミも良いアクセントとなっている」 


 栗って小麦粉とかの代わりに使えるのか。

 ふーむ……クッキーなどにしてもよさそうだなぁ……


 などと、考えながら俺が二人へと感想を言っていると


「主様ぁ、次は私のをどうぞぉ。

 皆が作ってるのを見てぇ、初めて料理に挑戦したんですよぉ」


 と、今度はシルティアが自作の料理を持ってきた。


「うむ。どれ――」


 と言いながら彼女の方を見ると、その手に持つ木製の深皿には赤黒いドロッとした物体が入っていた。


 その物体からは、凶烈な酸っぱい匂いと焦げた匂いが放たれており、所々には煮込まれたのか炒めたのかで変色した、様々な果物が浮かんでいる。


「――……これは、何を作ったのだ?」


「えっとぉ、私の好きな物を全部入れたスープ?ですぅ」


 と、彼女は答えるが、断じてスープには見えない。

 合ってるのは液状という部分だけな気がする。


 おい、誰かシルティアの料理の監視なり手伝いなりをした者は居なかったのか?

 と、周囲に視線を飛ばしてみると、全員から目を逸らされた……


「さぁさぁ、どうぞぉ、召し上がってください」


 と、催促され、意を決してスプーンで口に運ぶと、匂いから察した通りの酸っぱさと苦みが口の中にねっとりと広がった……


「いかがですかぁ?」


「これは、うん……その……

 何と言うか、なかなか……個性的な味だと思うぞ?

 スープでは無いが……『ジャム』という物に似ているな」


 味的には酷い物だったが、彼女の喜んでもらおうという心がこもった料理であるので酷い事は言えない。


 まぁ、初めて挑戦したのだし、これくらいの失敗は起こる物だ。


 なので、俺はこのスープとは名状しがたい物をどうにか出来る料理法を、なんとか頭からひねり出しシルティアへ神語で伝えた。


「ジャムですかぁ?」


「砂糖は、時の箱舟の食糧庫に有るはずだ。

 今度、作る時にでも使ってみなさい」


「はーい。試してみますぅ」


 といった感じで、宴の最中、俺は皆からどんどん試食を頼まれ、それに対する評価を行う事になったのだった。


 正直、俺の胃袋が無限で助かった。




 そんなこんなで、夜も更けて宴も終わり皆が寝静ると、俺にようやく暇な時間が出来た。


「さてと……」


 と、俺は独り言ち、新しい体のテストを行う事にした。


 今まで使ってきた体との一番の違いは、やはり背中に有る羽だろう。


 試しに、少し広げてみて羽ばたいてみると、ある程度はイメージ通りに動かす事が出来た。


 どうやらドラゴン系のモンスターと同様に、身体側ではなく羽自体に動かす為の筋肉が付いている様だな。

 作用反作用などで飛ぶわけでは無いので、こんな構造が成り立つのだろう。


 上手く扱えるか少し不安だったが、思ったよりもスムーズに動かせる。

 これなら、身体強化系のスキルと合わせれば、飛ぶ以外にも色々と使い道が出て来るかな?


 次は飛行の練習だ……――



 ――……竜人の身体の慣熟訓練を行っていると、いつの間にか朝になっていた。


 今までに無い器官をもつ身体で、色々と新鮮な体験だった。


 とは言え、まだLvが低いままなので、このままでは色々な事に支障が出そうだな……


 明日からは久しぶりにLv上げをするか。

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