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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第一章 創世編
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第5話 奇跡の力と供物

 朝の光を感じ、気持ちよく眠りから目覚める。


 すると、またしても天井や壁が無かった……


 ぼやけた頭で、またか……と思ったが。

 今度はパソコンの有った不思議な草原とは違い、空には太陽が有り周囲には様々な果実を実らせる木々と、遠くには広大な海が有り、噴煙と溶岩を吹き上げる火山も見える。


 自分の体を見ると、自身の身体は天を突くほど巨大な樹木になっており、地面から聳え立っているのが分かった。


 自分に起こった事を思い出してみると、今度はしっかりと覚えている。


 たしか、この世界樹に降臨して火山の噴火と地震から皆を守ったのだ……


 そういえば……皆は無事だったのか!?


 ハッキリしてきた頭でそれを思い出し、急ぎ下の様子を見る。

 すると、根本付近に数人の人々が見えた。


 周辺も見渡してみると、所々で果物を食べたり、乳繰り合ってたりする姿も確認できた。


 その皆の様子を見た俺は、安堵と共に


 「よかった……」


 と、声に出して呟いてしまった。


 すると、全員が一斉に、こっちを向いて目を見開き凝視してきた。


「なんだ?私がどうかしたか?」


 と、聞いてみると、皆が急いで此方に駆け寄ってきた。


 なんか、旅行に行ってて家に帰って来た時に、飼ってた犬達がテンション高く出迎えてくれるみたいな感じだな。


 抱き着いたり、近くまで来てワタワタしたり、叫び声を上げたりと、体全体で喜びを表現しているのが分かり、こっちも嬉しくなる。

 どうやら俺が眠っていて無反応だった所為か、心配させてしまったらしい。


「心配をかけたな。

 私は少し眠っていただけだ」


 そう声を掛けると、皆は安心し、また喜び騒ぎだしたのだった。



 俺は一通り皆の喜ぶ姿を堪能して一息つくと、次に災害を無事に乗り切れたのかが気になった。


 あの透明な壁の様な結界を作って、危機は去ったと思うのだが……

 島の様子はどうなんだろう?


 遠くの方を見てみると、少し離れた辺りで境界線の様にスッパリと分け隔てて、大地が荒廃している様子が見える。


 空はどんよりと曇り、火山灰と思われる物が雪の様に降っていて、木々は燃えて炭となっており、大地は砕けて大きな裂け目などが有り、そこから煙なのか蒸気なのかが噴出しているのが見て取れる。


 そして、俺の体となっている世界樹を中心とした地域の空だけが、その中で丸く切り取った様に晴れ渡っており、その下だけが緑が有り、自然が残っていた。


 自分でしておいてなんだが……

 何この不思議空間?


 絵画やアニメで見たような、神々しい感じがする風景でかっこいいな!


 ……さてと、景色の堪能……じゃなくて、現状把握は済んだが……

 これからどうするか……


 どれくらい寝てたんだ?

 てか、何で寝てたんだろう?


 体の中に感じる力というかエネルギー?みたいな物を全て使って、このバリアーみたいな物を作ったら、急に眠たくなり寝てしまった事は覚えている。


 もしかして、この力は使い切るとまずいのか?


 今は結界を作る前の四分の一程度の力が有る気がするが……

 これは、時間で回復する物なのだろうか?


 とりあえず、残り少ない感じがするし、今後も何が有るか分からないので、この力は大事に取っておこう。

 火山を見る限り、暫くは噴火も収まりそうに無いしな。


 それにしても、遠くの方は被害甚大だな……

 近くに行くか上空から見れれば、火山や島全体の様子や被害の詳細も分かるのだが……

 うーん、あのパソコンで見れば、色々と調べられるか……ん?


 ――今頃になって気付いたが、俺はあのパソコンのある場所に戻れるのか?


 い、いや、大丈夫だよね?


 俺、このまま一生、でっかい木のままじゃないよね!?


 などと若干焦りながら戻りたいと願ったら、体が急激に上に引っ張られるように感じて、あっさりと草原のパソコンの前に戻る事が出来た。


 よかった、ちゃんと戻ってこれて……


「ふぅ……」


 心臓がバクバク鳴ってるし、ちょっと嫌な汗もかいちゃったよ……


 額の汗をぬぐいながら、自分の体を確認すると、ちゃんと元の人間の体に戻っている。

 自分の体と言っても、まだ記憶もあやふやなので少し不安だが。


 それはそうと、島の現状の確認だ。


 パソコンのモニターが載っているちゃぶ台の前に座り、さっそく画面を確認すると、島を覆うように雲だか噴煙だかが立ち込めてるのが分かった。


 雲の下まで視点を移動させてみると、火山からはマグマがあふれ出し、世界樹の周辺以外の土地は緑が無くなり、火山灰で灰色になりつつある土地と焼け焦げた木々の残骸しかない。


 これは噴火が収まっても、元に戻るのは暫くかかりそうだなぁ。

 天候操作で雨とか降らせれば、少しはましになるか?

 でもGPも残り1しか……残り1!?


 あれ……?

 前は残り4は有ったはずだが、何で減ったし……


 たしか画面の左下辺にログか何かあったよな?

 それに何か載ってるか?


 と思い出し、邪魔だと思って最小化していたログウィンドウを開いて見てみる。


 そこに表示されたログを調べてみると、どうやらあの結界を張るのにGPを使ったらしい事が判明した。

 ゲーム内時間で二日前のログに『聖域構築にGPを4消費』と書かれている。


 てことは、あの世界樹になっていた時に体内に感じてた力はGPだったのか。


 いやまて……

 今もあの力、GPだと思われる力を、微かにだが体内に有るのを感じる……


 もしかして、ここでも使えるのか?


 そんな事を思いつき、ワクワクして何をしてみようかと考えたのだが、色々有り過ぎて決まらない。

 それに、なぜGPが1ポイント増えたのかのログは載ってないし、恐らくこのGPが枯渇したから俺は二日も眠ってしまっていたのだろう。

 時間で回復するのか、別の要因で増えるのかが判明するまでは、うかつに使える物ではないな。


 しかし、残り1かぁ……


 これでは眺めているくらいしか出来る事が無い。


 眺めているにしても、世界樹に宿ってる方がまだいいか?


 向こうなら、此処みたいに殺風景でもないしな。

 また、あの急降下スカイダイビングをするのは怖いが……

 慣れておく必要もあるだろうし、頑張るか。


 前回はポップアップ表示の降臨のボタンを押したら出来たが、今回はその表示が見当たらないので、少しやりかたを探すのに手間取った。


 色々と調べていると、画面に表示されている世界樹をクリックした時に、降臨と書かれたボタンが現れた。


 よし……先ずは、心の準備だ。


 深呼吸をして、心を落ち着かせる。


 おーけー……やるか。


 心の準備を終えて、俺は降臨ボタンをクリックした。


 すると、前回と同様に画面から強い光が発せられ、それが収まると視界一杯に上空から見た景色が飛び込んできた。

 そして、俺は目的地の世界樹に向かって急速に落ちて行った。


 さすがにぶつかる瞬間は条件反射で目を瞑ってしまったが、前よりは落ち着いて降りる事が出来た。と、思う。


 いざ下に戻ってみると、皆がまた俺の事を凝視していた……


 なんだ?


 今回は前みたいに驚いて声を上げたりしてないぞ?

 彼らは俺が降臨すると察知する能力でも持ってるのかね?


 こんな時、言葉でコミュニケーションを取れないと、こっちが疑問に思った事も正確に聞けないから不便だな……

 やはり言葉をなんとか教えて、会話を出来るようにするのが今後の課題か。


 などと考えていると、今度は皆が方々に散っていき、周囲の木々から果物などを取って戻って来た。

 俺の根本付近まで戻って来た皆は、取って来た果物を頭上にかかげ始める。


 これは……俺に供物的な物を捧げてるのか?


「それを私に渡そうとしているのか?」


 そう皆に尋ねてみると、各々が首を縦に振りうなずいた。


 お……おぉ?


 まさか自発的に、お礼や感謝の気持ちを表現しようとするとは。

 やはり言葉は話せなくとも人間性がそうさせるのだろうか?


 少し感動したが、問題が1つ――どうやって受け取るの?


 今、俺は木だよ?


 手も無いし口も無いので食べれもしない。

 なぜか喋れてるけど……


 受け取りたいとは思うのだけど手段が無い。


 うーん……お供え物みたいに脇に置いといてもらうか……?


 と考えていると、何か奇妙な感覚が有った。


 これは、なんと言えばいいのか……

 あのGPを使おうとした時の様な確信に近い『受け取れる』という感覚が有る。


 ふむ……試してみるか。


 GPを使うという感じでもないし大丈夫だろう。


「そうか、ならば受け取ろう」


 俺はそう答え、皆が捧げる供物を受け取ろうと念じてみた。


 すると、彼らの持つ果物が淡く光りだし、その後、スッと皆の手の中から消えていくのが見え、それと同時に心に温かな感情が流れ込んで来るの感じた。

 そして、その皆の心の力は俺の中で凝縮され、体内に感じるGPだと思われる力へと変化したのが分かった。


 おぉ!?


 果物の味が味わえなかったのが少し残念だが、GPが増えたぞ!


 たぶんGPだと思うので、後で草原のパソコンで確認しておこう。


 懸念材料だったGPの回復の方法が、なんとなくだが判明した。

 これで一安心だな。

GP:2

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