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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第三章 廻魂編
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第57話 進め!ダンジョン!! その3

 朝から色々と遊具を設置した結果、総合アスレチックと化した公園を眺めながら、次は何を作ろうかと考えていると


「あるじさまー今日のおやつはなにー?」


 と、ジャングルジムの上に居る子供達から声を掛けられた。


 言われて気が付いたが、もう3時近いのか。

 遊具の作製とダンジョン組の様子見に没頭してて時間を忘れていたな。


 んー……今日はこれにするか。


 おやつの単語を聞きつけ他の子供達も集まり始めたので、俺は皆の前に大きな壺を取出して置き、一人一人に壺の中身の水飴を割り箸で絡め取って渡していく。


 そう、ねればねるほど色が白くなって舐めると甘い!あの水飴だ。


 子供達に混ざって大人達も食べに来てるが、まぁ気にしないでおこう。


 集まった者達に一通り配り終えると、先ほど子供達に交じって水飴を貰いに来てたウアの妻のアーウとガウの妻のキュイの二人が、俺の元へ再度やって来た。


「ん?どうした? 水飴は口に合わなかったか?」


 と、尋ねてみると


「いえ、たいへん美味しいですよ主様。

 そうではなく、ウアの事なのです……」


「夫の様子が気になりまして。

 かれこれ三日も経ってますが、いつ頃帰ってくるのでしょう?」


 二人は心配そうな表情でその様に答えた。


 なるほど、ダンジョンに冒険に行った者達もそうだが、こっちに残った者達も数日間も離れ離れになる事が今まで無かったので寂しくなってきたのか。


「ウアもガウもダンジョンの中で元気にしているが……

 ふむ、どれ――」


 俺はそう言い、姿だけでも二人に見せてやろうと思い、魔法で向こうの様子を映し出す霧のスクリーンを作り出した。



 ――混成、ドワーフ、獣人チーム――


 16人もの大所帯になった彼等は、ボスコラーゲンスライムを倒し二層へと降りた後、エルフチームが通った道をなぞる様に進んでいた。


 先に通ったエルフィーが、道中のモンスターの殆どを無害化していた事もあり、トラブルも起きないが面白味も無いといった様子でもある。


「下に来てから、魔物とほとんど遭遇しねえな……

 途中にあった広い所も、空っぽか伸びて動かなくなっているのしか居なかったし、どうなってんだ?」


 と、ヒューガは暇そうにぼやく。


「おそらく、エルフィー嬢のせいじゃよ」


「じゃろうな。わし達の前にあのスライムを倒して、先に下に行ってたからの」


 ヒューガの疑問に、ドグとダグがそう答えた。


「あぁ……そういや、先生も来てるんだったな……」


「そりゃ楽ちんな訳だよ……」


 答えを聞いたヒューガとミーニャは遠い目をしながら納得した様だ。


「お前等、魔物が出ないからと言って気を抜きすぎ――ん?風か?」


 二人のすぐ後ろを歩いていたガウは注意をしようと話しかけ、その最中に歩いている通路に風が吹いている事に気が付く。


 現在、大部屋の入り口でバハディアが闇のブレスを連発しており、それに空気が大量に飲み込まれている所為で、ダンジョン全体の空気がそこへと向かって吸い込まれているのだ。

 それが風となり、通路を歩く皆に後ろから吹き付けている。


「風?……たしかに後ろから吹いてくるな。

 それに先の方から微かに妙な音も……よっし! 行ってみるか!」


 と、ヒューガは暇な事に飽きていた所為か、いきなりダッシュで走り出してしまい、獣人チームのメンバーもそれに慌てて付いて行き、ドワーフと混成チームもそれに続くのだった。



 その様子を霧のスクリーンで見ていたアーウとキュイは伴侶の元気そうな姿を確認できて、多少安堵した表情を浮かべた。


 が、その映像に周囲の子供達まで気が付いてしまい


「ねーあるじさまー。バハディアはー?」


「わたしはリーティアお姉ちゃんが見たいー」


 と、リクエストを俺にし始めた。


 そこで俺は子供達にも見えやすい様にと、スクリーンを拡大して上空に浮かべる事にした。



 ――竜人、エルフチーム――


 その頃、バハディアの闇のブレスによる大部屋の砂掃除を行っている竜人チームは、数十発のブレスにより大部分の砂の除去を終えていた。


「後はあそこだけね! うてーーー!!」


 と、リーティアはノリノリで指示し、最後にボスサンドゴーレムのコアが隠れていた砂山へとバハディアから闇のブレスが解き放たれる。


 ボスコアは、なんとかコアのみで、その砂山から脱出して難を逃れはしたが


「あらぁ? 何か飛び出してきたわねぇ」


「おそらく、あの玉が砂のゴーレムの本体なのでしょう」


 と、儚くもシルティアに即座に発見されてしまい、砂掃除が終わったのを見計らったエルフィーが近づいて来ながら的確な答えを言ってしまった。


「はぁ……はぁ……それじゃ、アレを破壊すれば終わりか?」


 バハディアはそう言い、ようやく重労働?から解放されるといった安堵の表情を浮かべている。


「ええ、そのはずだけど……下への道がない?」


 エルフィーはそう答えながら大部屋の中へ入って行き、部屋全体を見回すと頭に浮かんだらしい疑問を呟く。


 彼女が見つけられないのも仕方が無い。

 なんたって、少し前に俺が塞いだからな!


 世界中に有るダンジョンの中でここが一番簡単で安全なダンジョンとは言え、第三層辺りからはトラップ類や能動的に襲ってくるモンスターなどが出現し始める。


 エルフィーはまだしも、他の者達では強さや装備的にも、そして知識と準備面でも、とてもでは無いがこの先は危険なのだ。


 それに、攻略するにしても最下層は100階層以上も下で、一日一階層進んだとしても、数ヵ月はかかる。

 彼等の帰りが遅くなり寂しさを感じ始めている者達が出始めているので、そろそろこの辺を区切りとして一旦帰ってきて欲しいところなのだ。


 とは言え、何か達成感の様な物は与えておきたいと言う思いもあるので、そろそろボスコアには退場願うとするか――


「どうしたの? 何か気になるの、エルフィー?」


「下への道が見つからないのよ。

 この部屋にあると思ってたのだけれど……」


 部屋の中をきょろきょろと見回しているエルフィーに、何してるの?とリーティアが話しかける。


「ふーん……とりあえず、あの丸のを壊しちゃおうか」


「そうね、そうすれば何かが変わるかも――まって!

 なにか、様子が変だわ」


 リーティアは、バハディア達を引き連れボスコアへとスタスタと歩いて行こうとするが、それに視線を移したエルフィーがボスコアの異変に気が付き制止した。


 ボスサンドゴーレムのコアは、表面に赤い警戒色の様な光を明滅させ、まるで鳴動するかの様に脈打っている。

 そして、その発する光がピタッと止まると


「なんだ? あの玉から砂が溢れて!?」


 ボスのコアは一瞬で砂に包まれ、バハディアが言った様に溢れる様にその体積を瞬く間に増やし始める。


 そして、徐々に人の握り拳の様な形状になりながら巨大化し、やがて大部屋の半分ほどの高さにまで大きくなると、その表面を禍々しい紫色の鱗が覆っていき、それが全体を包み終わると、拳の指に相当する部分をゆっくりと開き始めた。


「おいおい、お前等こんな所で……ん? 何を見て――ッ!?」


 そこへヒューガを先頭に獣人と混成チームが到着し、エルフと竜人の両チームの様子がおかしい事に気が付き、全員が視線を向けている方を見て自身も息を飲む。


「おぬしら、ちょっとはわし等の事も――こやつは!?」


 遅ればせながら、足の遅いドワーフチームも到着し、置いて行かれそうになった事に文句を言おうとするも、それは出来なかった。


「これって……」


 リーティアは、目の前で広げられていく光景を見て呟く。


「まさか……」


 エルフィーは、徐々に全貌が明らかになっていく魔物の正体に気が付く。


 皆の目の前で徐々に広げられていく巨大な指は、指では無い。


 それぞれの先端には巨大な蛇の頭があり、それが大部屋の天井へと届きそうなくらいまで鎌首を持ち上げ、見開いた深紅の瞳で目の前に居る獲物達をねめつける。


 それを見た全チームの皆は


「「「「ヤマタノヒュドラ!?」」」」


 と、目の前に現れた怪物の名を叫んだのだった。



 スクリーンを通して見ていた者達もそんな声を上げたが、実際には八岐ではなく五岐だ。


 五枝に別れた巨大な蛇の首が、ずんぐりとした巨大な胴体から生えており、その胴体からは四本の太い足と1本の尻尾が伸びている。

 全長は15m、高さだけでも10mはあり、かなりの大きさだ。


 その独立した蛇の頭が、それぞれ部屋に入って来て居た各チームへ向けて口を大きく開く。


「まずい! 皆!身を守れい!」


 ウアはその動作を見て、アレンジ昔話の中で、モモタロウがヤマタノヒュドラから様々なブレス攻撃を受けていた事を思い出したらしく、咄嗟に指示を出す。


 彼の声に反応し、エルフィーとシルティアの二人が無詠唱で皆の前に氷の防壁を作り、なんとか間に合ったかと思った瞬間、ヒュドラの五つの口から高圧で大量の砂が吹き付けられた。

 その砂の速度と密度は、二人の張った氷の防壁を数秒で叩き割る。


 だが、その稼がれた数秒をドワーフチームが使い


「『壁よ聳えよ』!」


 と地面へと手を着くと、土魔法で皆とヒュドラとの間に分厚い壁を作り上げ、間一髪のところで砂のブレスを防ぐ事に成功した。


「こやつが居るという事は、アレが有るかもしれんぞ! ダグよ!」


 ドグは獣人チームの前で防壁を張りながら、同じく混成チームの前で防壁を張っているダグへと、妙に瞳を輝かせながら大声て呼びかける。


 アレってなんだ?


 そういえば、ドワーフ達がダンジョン探索に赴いている理由が、まだ不明だったなぁ……


「そうじゃな! これは希望が湧いてきたわい!

 じゃが、この壁もそう長くは持たんぞ!

 誰でも良いから、今のうちにどうにかしてくれい!」


 と、ダグもそれに嬉しそうに答えているが、彼の言う通り土の防壁もそこまで耐えれそうになかった。


「爺さん達、俺達に任せな!」


 そこで真っ先に名乗り出て飛び出していったのは、ヒューガ率いる獣人チームの五人だった。


 彼等は防壁の影から一斉に散らばる様に飛び出て、砂のブレスを掻い潜りヒュドラに接近していく。

 しかし、大部屋の内部の地面は少し前なら土が剥き出しになっていたのだが、今は大量に吐き出されている砂のブレスのせいで再度砂地になりつつある。

 その砂に足を取られ、彼等のアドバンテージである敏捷性は精彩を欠いていた。


 その彼等へと向かって、ヒュドラの首の一つが横なぎに振り払われる。

 迫り来る人の胴体よりも太いヒュドラ首に、ガオンとバグゥとキューの三人は巻き込まれて吹き飛ばされ、なんとか飛び越えて回避したヒューガとミーニャの二人も、空中で身動きできない所を他の頭からの砂のブレスで迎撃される。


 吹き飛ばされた五人は砂が溜まっていた所へと飛ばされ、砂がクッションとなり、少し転がった後に、慌てて近くの防壁の裏へと戻って行った。


 まぁ、ぶつかる瞬間に加減もしてあるし、当たる場所と落とす場所も考慮して攻撃したので、そんなにダメージは無いだろう。


「ぐッ……くそう、あの足場だとやりづれぇ……」


 竜人達の所の防壁へと避難してきたヒューガが悔しそうに言葉にすると


「ぷくく……任せろとか言って飛び出したのに、あっさり戻って来てる……」


 と、笑いを噛み殺しているリーティアに、そう言われたのだった。

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