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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第三章 廻魂編
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第46話 世界の変異と鞄

「これが犬……? いえ、コロさんですか?

 私の知っている犬と、その……大きさが大分違うのですが……」


 と、犬小屋と化している神殿の中を覗いたエルフィーに、訝し気に訊かれた。


 彼女の視線の先には、神殿の中でデカい毛の塊の様に丸まって寝ているコロの姿が有る。


「厳密には犬では無いからな。

 子供の時は小さかったんだが……」


 昔の片手で抱える事が出来たサイズが懐かしい……


「コロ、エルフィーを連れて来たぞ」


 と、俺が犬小屋神殿の中で寝ているコロに呼び掛けると、コロは首だけを起こし眠た気な目で俺とエルフィーを見た後、小さく「ワフ……」とだけ答え、また丸まって眠り始めた。


 「肉」と「さんぽ」のフレーズには、元気いっぱいに答えるのだが、人にはあまり興味が無いようである。


 俺に続き入って来たエルフィーは、コロの大きさに多少怖がりながらも


「……大人しいのですね。

 撫でても……大丈夫ですか、主様?」


 と、聞いてきた。


「大丈夫だと思うが……

 コロ、エルフィーがお前を撫でたいそうだ、良いか?」


 コロにそう尋ねると、コロは寝たまま片方の耳をパタパタと動かして「いいぞ」と意思表示をした。


「撫でていいそうだ。

 撫でるなら耳の付け根辺りの毛が柔らかくて気持ちいいぞ」


「は……はい」


 そうして、二人で暫くコロのもふもふを堪能していると


「(主様! 大変です! 皆が!)」 


 と、レイディアから念話で急報が届いたのだった。



 ――人は神に祈る


 時に、起きた幸運に感謝する様に

 時に、日頃の安寧を願う様に

 時に、降り掛かる悲運から守って欲しいと請う様に


 そして、自身ではどうしようもない絶望的な状況になった時――



 レイディアからの念話を期に、世界樹の周りに広がる森の所々から助けを請う様な祈りを俺は感じ始めた。 


 俺は急ぎ、その救いを求める祈りを発している者達の所へと、空間を繋ぐゲートを四方に同時に作り出して繋げる。

 その、空間を切り取る様に出来た光る窓枠の向こう側では、ある者は地面に倒れ伏しており、またある者は腹を抱えて蹲り、またある者は悲壮な表情と顔色になってよろよろと木に寄りかかっていた。


「主様!?」


 俺に気が付いたレイディアが、驚きの声を上げる。

 そのレイディアは、真っ青な顔色で倒れ伏しているシルティアの上半身を抱えていた。


「これは……」


 との、エルフィーの言葉に続き


「食あたりだな……」


 と、俺がそう言葉にすると、シルティアの手から数口齧られた跡のある変色したオレンジが、零れ落ちる様にぽとりと落ちたのだった。



 しまった。


 世界に微生物などが誕生していたのを皆に伝えるのを忘れていた。


 わかる、わかるよ。


 腹痛に襲われると、トイレの中とか満員電車の中で、宗教なんてイベント事でしか参加しない様な、信心深くも無い日本人でも神様に祈ったりするよね。


 とりあえず、皆のステータスの状態を見てみると「毒」と表記されていたので


「これを飲みなさい」


 と言い、俺は皆にエメラルドグリーン色の丸薬を配った。


 これは、モンスターとの戦いに明け暮れてた頃に、MPなどの回復を用にと作った『世界樹丸』だ。

 世界樹の葉を1枚まるごと凝縮しただけの代物だが、これを飲めば世界樹の葉と同様に毒だろうが怪我だろうが一発で治るはずだ。

 決して吹奏楽器のマークの薬ではない。


 ちなみに、何故、魔法では無く薬での解毒を行ったかと言うと、実は俺が解毒魔法が使えないからだったりする。

 コロや俺自身が毒や石化などといったバッドステータスを受けない体で、今までそんな事とは無縁だったので、研究するのを忘れていたのだ。

 後で研究しておこう……


 それに、皆に腐敗などの事も教えておかねばならないか。

 昨日は皆と再び会えた事に舞い上がって、そういった細かい事を伝えるのをすっかり失念していた。



 具合の悪かった皆は『世界樹丸』を飲むと、直ぐに腹痛は収り状態も毒から健康へと戻った。


「主様、助かりましたぁ」


 と、シルティアも顔色も良くなり元気になった様だ。


 とりあえず、上下からリバースする様な事にならなくてよかった。


「もう大丈夫そうだな。

 レイディア、シルティア。

 すまんが、空から見回りをして、他に同じような状態になっている者達が居たら、これを飲ませてやってくれ」


 そう言い、俺は二人に世界樹の葉っぱのマークのラベルの付いた瓶を渡した。

 決して吹奏楽器のマークではない。

 葉っぱのマークである。


 その後、エルフィーとバハディアとリーティアにも同じ事を頼み、他の皆には森に落ちている果物を食べないで、世界樹の根元に集まる様にと念話を送った。


 そして、皆が集まるのを待ってから説明を行った。


 現在、世界樹を囲む様に4~5km程の広さが草原になっているのだが、その先のエリア、聖域結界を出た所では物が腐敗する様に世界は変わった。

 聖域結界内の物は安全なのだが、その内部はほぼ木々が無くなり果物が採れないので、それらが食べたい場合は聖域の外に出て採ってくるしかない状態なのだ。


 なので、きちんと選んで食さねばならない事、腐った物を食べると体調を崩したり病にかかる事、腹痛や体調不良を感じたら世界樹の葉を食べるか、最寄りの竜人、または念話を使える者に助けを求める事といった説明を俺は皆にした。


 昼前には説明も終わったのだが、話を聞いた皆は、今まで経験した事のない病気などの話に怯えてしまったのか、森へ行くのを躊躇う様子が端々に見て取れた。


 とりあえず、昼食に関しては安心して食せる様にと、俺が食べ物を出して皆に配り、俺も皆と一緒に昼食を食べる事にした。



 うーん……


 時間と経験がその内解決してくれるとは思うが、何か安心できる様な物を用意した方がいいか?冷蔵庫とか?

 それに、森までの距離が遠くなったせいで、皆にとっては移動やら運搬やらが少し面倒になってしまってるな。

 生活拠点を森の近くに移せば良いだけでもあるんだが……


 と、俺が方策を考えていると


「酷い目にあいましたぁ……

 これからは、木に実ってるのを食べるように気を付けます」


「見た目が妙だとは思っていたので、私も止めておくべきでした」


 と、昼食を食べながらシルティアとレイディアが言った。


「すまないシルティア。

 昨日の内に説明して置けばよかったな」


「いいですよぉ主様。

 もう元気になりましたしぃ、このキラキラした瓶も貰えましたしぃ。

 私はそれで満足ですぅ」


 彼女や竜人達は『世界樹丸』の入ってる瓶が気に入ったらしいので、そのままあげる事にした。


 多少は頑丈にと透明なサファイアグラスで作ってはあるが、それにコルクの蓋を付けただけの簡素な物だ。

 だがまぁ、言われてみれば、中に入っているキラキラと光るエメラルドグリーンの『世界樹丸』と相まって綺麗ではある。


 まぁ、気に入ってくれたのなら何よりだ。


「そうか……中身が少なくなったら補充するので、何時でも言ってくれ」


「ねぇねぇ主様。

 時間が経つと食べ物がダメになるのは分かったけど、主様の出した物は大丈夫って、どうしてなの?」


 と、今度はリーティアが質問をしてきた。


「ん? 私の出している物は天界の倉庫にしまってあるのは前に言ったが、そこに入れておくと腐敗や劣化などが起きないからだな」


「いいなー。私も同じの欲しい。

 パッと出したり消したりしてみたい」


 俺の簡単な説明に、彼女はそんな事を言った。


 ふむ?


 同じ物は難しいが、似た物なら……

 材料もあるし、作れるかな?



 明けて翌日。


 俺は皆を再度集め、昨夜、夜なべして作った、ある物を配った。


「鞄……ですか?」


 と、エルフィーは俺が渡した鞄を見ながら言う。


「これは『魔法の鞄』とでも言えばいいか。

 私みたいに出し入れは出来ないが、中に大量に物を入れる事ができ、入れてある物は劣化しないという鞄だ」


 ゲームやファンタジー物でよく見かけるあれである。


 大きさは子供の持つ鞄程度だが、中身は見た目の百倍は入る。


 材質は、世界樹の接ぎ木から出来た木材を繊維状に加工し、それを糸にした物を織って作った布で出来ている。

 肩から下げれる様に肩紐も一本取り付けて、壊れやすそうな箇所には厚手の布を張り補強し、全体に強化魔法もかけてさらに丈夫にした。


 内部へは空間と時間を操作する魔法を織り込んだ布が張り付けてあり、それに供給される魔力も世界樹から遠隔式で供給されるので、使う本人には手間要らずだ。


 デザイン性は無視した実用一辺倒な形だが、後々の事も考え1000個も作る事になったのでその辺は勘弁してほしい。


 だが、これで多少は食料の運搬や保存の問題は緩和されるだろう。


「その入り口と同じ大きさまでの物なら大体の物は保管できる様になっている。

 中に物を入れると、内部で入れた物が小さくなるが、鞄から取り出せば元の大きさに戻るはずだ。

 気を付ける点は取り出す時だ。鞄から取り出すと手の中で大きくなるので、尖った物や固い物を出す時は注意してくれ」


 と、仕様や注意点を皆に説明すると、それを聞いた者達は早速、鞄を開けて中身を見始めた。


「あれ……? 主様ー、中に何か入ってますよ?」


 と、魔法の鞄を覗き込みながらサーリが俺に尋ねて来る。


「おっと、そうだった。

 皆、鞄の中には『世界樹丸』を入れてある『瓶』が一瓶入っている。

 その瓶は五日に1粒世界樹丸が増えるようになっている。

 何か怪我をした時や体調が悪くなった時にでも使いなさい」


 彼女の言葉で俺もその事を思い出し、皆に追加で説明した。


 すると皆は、鞄の中に試しに様々な物を入れたり、瓶を取り出して眺めたりと、わいわいと賑やかにはしゃぐのだった。


 さてと、後は一応、解毒魔法の研究もしておくとするか……

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