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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第二章 出楽園編
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第39話 虹の輝き

 バハディアの魔法練習が終わったらしく、俺とエルフィーが話している所に竜人の四人が歩いてきた。


「主様ー、エルフィー、作業広場にいこー」


 四人の先頭を歩いていたリーティアがそう言ってきたので、俺とエルフィーも立ち上がり、森の中の作業広場へと一緒に向かうと


「主様ぁ。明日の宝石採集は、朝から行くんですかぁ?」


 と、道中でシルティアがそんな事を尋ねてきた。


「ん?そうだな……

 どの程度、集めるのに時間が掛かるか分からんし……

 朝の内に出発した方がいいか」


「それじゃあ、みんなにも、そう伝えておきますねぇ」


 そういえば、他の者達も来るんだったな。


「明日、私達と一緒に来るのは、何人くらいになりそうなんだ?」


 どの位の人数が来るのか気になったので、そう聞いてみると


「えーとぉ、何人かなぁ……

 作業場のみんなは来ると思いますぅ」


「今朝、川に向かっていく者も何人か見ました」


 と、シルティアとレイディアが答えた。


「ふむ、そうか……」


 作業場の皆てことは、50人くらいか?

 結構な人数だな。


 今日の内から行ってる者もだが、そこまで大人数となると、水難事故が起きないか心配になってくる。


 まぁ、光の魔石を集めるのに、少し手伝ってもらおうと考えていたので、多いに越した事はないのだが……

 これは大人達にプールの監視員みたいに、持ち回りで見守ってもらった方が良いかもしれん。



 俺達が広場へと到着すると、いつもとは少し違った光景が広がっていた。


 普段であれば草花を編み衣類を作る者や、小さな子供をあやしながら草鞋を編んでいる者、蔓などを石や棒で叩き柔らかくしている者達と、色々と作っている光景が見られるのだが、今日は全員で大小様々な袋を作っていた。


 なんと言うか、皆の意気込みみたいな物を感じる光景である。


 竜人の四人もそれに混ざって袋作りをし始めたが、エルフィーだけは午前中のバハディアの救出の際、俺の纏っていたローブが少し損傷してしまったので、それを直すと言って俺の傍らに残った。


「すまんな、エルフィー」


 俺はそう言い、糸と木で作ったらしい針を用意した彼女に、着ていたローブを脱いで渡す。


「いえ、お気になさらずに」


 と、彼女は答え、ローブを受け取り、木陰に座り修繕作業を始める。


 俺も彼女の隣に座り、作業場の風景をのんびりと眺める。


 気の早い者達は、もう既に川で宝石集めを始めているらしいが、大半の者達は明日の宝石採集に向けて袋作りに励んでいる。


 この世界で宝石類がどんな価値を持つ様になるかは不明だが……

 今、皆が作っている袋が、将来的には財布の原型になったりするんだろうか?

 そう考えると感慨深いものがあるな。


 今は皆、財産や価値といった物事に関しての考え方は希薄だが、その内そういった考えが定着して、何かしらの社会構造を作り上げるのだろう。


 まぁ、どのくらい先の話になるのかは分からんが、物々交換が始まり、何かの対価に財貨を渡したりといった行為が――あ。


 そういえば、明日は皆に労働みたいな事を頼むんだった。


 俺が作ろうと考えている皆を休眠させる建物は、部屋数だけでも軽く100は超える予定で、それに必要な照明代わりにする魔石も、かなりの数になるだろう。

 なので、明日は人海戦術で光の魔石を集めてもらおうと考えていたのだ。


 一人当たり、2~3個くらい集めてくれれば事足りるとは思うが、ただ集めさせるのも心苦しい。

 何か、給金代わりと言う訳では無いが、労える様な物でも用意するか。

 まぁ、それは、夜にでも考えておこう。


 とりあえず、先に光の魔石の使用法や光量を調べておかねば、どの程度の数が必要かが分からないしな。



 しばし、俺が光の魔石の大きさや込めた魔力量などでの持続時間を調べていると、ウアが10歳程のゆるふわな長い金髪をした女の子を作業広場に連れてやってきた。


 いや、逆だな。

 女の子がウアを連れてきて、ウアに自分の作った物を見せているようだ。


 もしかして、前にウアが貰ったというコップを作ったのがあの子なのかな?

 おじいちゃんに、孫が学校で作った工作物を披露している感じで、実に微笑ましい。


 ほのぼのとした光景を少し堪能してから、俺は魔石の観察へと視線を戻した。


 手前に並べた光属性の魔石は大きさ順に置いあり、それぞれが同程度の光を放っている。


「なかなか光が消えませんね」


 と、隣のエルフィーが言い


「そうだな……」


 俺も、そう答え頷いた。


 やはり、大きい物ほど放つ光量も強くできるみたいだが、持続時間に関してはなかなか判断が付かなかった。


 同じ光量で光らせて、内包させた魔力がどの程度持つのかを調べているのだが、米粒ほどの魔石でも、かれこれ小一時間は光を発している。


 時々、アイテムボックスに収納して、消費した魔力量や消費速度を調べもしたのだが、単純な魔法行使だと消費も微々たるものらしく、どの魔石も魔力切れになるのは夜になりそうだ。


 うーん、これはこのまま放置して、何か別の事をするか。


 そう思い、何か別の魔石でも調べようと考え、1個だけ有る無属性のダイヤモンドの魔石を取り出し調べる事にした。


 無属性と言っても、属性のステータスが空欄になっているだけなので、恐らくどの属性の魔法でも入れる事が出来る便利な魔石なのでは?と予想している。

 そこで、俺が何か面白い魔法でも入れてみようとした時だった。


「こんにちは、主様」


「こんにちは!あるじさま!

 それ、何してるの?」


 と、ウアと女の子が俺のやっている事が気になったらしく話しかけて来た。


「こんにちは。

 これは……魔石を調べているんだ」


 と、二人へと挨拶を返したのだが、俺は別の事に気を取られていた。


 元気な声で挨拶してきた女の子。

 その子の瞳が不思議な色をしていたからだ。


 なんというか、見る角度で色が変化する虹の様な色彩を放っている。


 竜人達の瞳の金色も他の種族では見掛けない色なのだが、彼女の瞳は他種族どころか、初めて見る瞳の色をしていた。

 それによく見ると、金髪だと思っていた髪も少しだけ虹色の輝きを伴っており、その髪から覗く耳がエルフ程では無いが少し長い。


 瞳の色などは近くで観察しないと分かりにくいとはいえ、今までこんな不思議な属性色を持つ者が居るとは気が付かなかったな。


 何か特別な技能でも有しているのだろうか?

 と思い、彼女のステータスを確認してみると


 名前:サーリ 性別:女 年齢:11 種族:エルフ/人間


 という事が分かった。


 残念ながら、特技の欄には「水魔法1」とだけしか表記がなかったのだが、どうやら彼女はハーフエルフ、もしくはハーフ人間とでもいう生まれらしい。

 ……語呂が悪いのでハーフエルフにしておこう。


 混血の場合はステータスの種族に、元となった親の種族が父親と母親の順に表記される。

 彼女の場合は エルフの父と人間の母の間に生まれたハーフという事だ。


 ハーフ自体はそこまで珍しくも無く、人間と獣人とドワーフの間でのハーフはちょいちょい見かけるのだが、エルフとのハーフとは少し珍しい。


 この、不思議な瞳と髪の色はその所為なんだろうか?


「ませき??」


「太陽とまでは行きませんが、直視すると眩しいですな」


 と、サーリとウアの二人は、並べて放置してある光の魔石を眺めながら言う。


「あぁ、川で取れる宝石の中には、魔法を込める事が出来る物が有ってな。

 それに光の魔法を込めて調べていたところだ」


 そう説明すると、サーリは「へー」と感心するような声を出し、面白そうに地面に並べてある魔石を眺めだした。


「昨日から妻達も話題にしてましたが、あの川に有る透明な石がこんな事に使えたのですか……

 そう言えば、明日は皆でそれを川に取りに行くとか?」


 そう、ウアに聞かれたので


「あぁ、そうだ。お前も来てくれるか?

 大人数になってしまって、溺れたりする者が出ないか少し心配だったのでな。

 皆を見守るのを手伝ってくれるだけでも助かるのだが」


 と、川に慣れているウアであれば明日の皆の水難救助員に最適だと俺は考え、彼も誘う事にした。


「おじいちゃんも一緒に行こう?」


 との、サーリの援護もあり


「二人に頼まれては断れませんな。妻と一緒に行きましょう」


 と、言葉ではしぶしぶとだが、雰囲気的には嬉しそうにウアは承諾してくれた。


 ウアはなかなか親ばか……ではないか、爺ばからしいな。

 と俺が彼に対しての感想を思っていると


「あっと、サーリ、主様にあれを差し上げるのだろう?」


 と、ウアは何かを思い出したようにサーリに言った。


「あ、そうだった!

 はい、あるじさま! これあげる!」


 ウアから促されたサーリは、肩から下げていた鞄の様に編み上げた袋から、草葉で作ったコップを取出し、俺に差し出してきた


「これは……コップか」


「えぇ、前に主様に見せた時の事をこの子に話したら、主様にと作ったらしいのです」


 やはりこの子が、あのウアの持っていたコップの作り主だったらしい。


 鞄の中に詰め込まれてたせいか、少しだけ形がひしゃげてはいるが、それでもしっかりと作りこまれているのが見て取れる。


 受け取った時に、彼女が丹精込めて作ったという心の力もしっかりと流れ込んできた。


「そうか……これは良い物だな。ありがたく貰っておこう。

 ありがとう、サーリ」


 そう彼女にお礼を言うと


「どういたしまして!

 ……あるじさま、その手に持ってるのも魔石なの?」


 と、サーリアは、俺が何か試してみようと思って持っていたダイヤの魔石に気が付き、俺の手を興味深そうに覗き込みながら聞いてきた。


「ん?これか?

 そうだ、これも魔石だ」


「他のと違って光ってないね」


 そう言われたので


「ふむ……みてなさい」


 と言い、魔法を込める所を見せる事にした。


 なんの魔法を込めようか少し迷ったが、属性が無いのだし、込める魔法も属性が不明な魔法を込める事に決めて、俺は魔法を発動してダイヤの魔石に送り込む。


 送り込むことに決めた魔法は、癒しの魔法だ。


 魔力がどんどん魔石に吸われる感覚と共に、ダイヤの魔石にも徐々に変化が起きてきて、やがて淡い虹色の輝きが内部で揺らめく様に強くなっていった。


「わぁー……きれー……」


 それを目の前で見ていたサーリアは、その様子に見惚れてそう呟いた。


「おぉ……この色は……サーリの目の色に似てますな……」


 と、ウアに言われて、俺も魔石と彼女の瞳と見比べる。


「たしか、そうだな。

 なるほど……」


 この虹の様な色は、癒しとか聖といった属性なんだろうか?


 そういえば、回復魔法を使っている時などは、うっすらとこんな感じの色が漂ってたかもしれない。

 補助魔法など、まだ属性が不明な魔法もあるが、これは良い発見が出来たな。


「わたしの目ってこんな色なの? へー……」


 サーリアはそう言って、魔石と同じ色を宿す瞳を興味深そうに様々な色を映し出すダイヤの魔石に向けている。


「ふむ……サーリ、これは君にあげよう」


「え!? いいの?あるじさま?」


 俺は手に持っていた魔石を彼女に差し出す。


「あぁ。先程、良いコップを貰ったからな。そのお返しだ」


 それと、貴重な属性色に気付かせてくれたという事も含めて、彼女に魔石をあげる事にした。


 彼女の瞳の色と相まって綺麗だしな。

 俺が持っているより似合うだろう。


「わーい! ありがとーあるじさま!

 おじいちゃん、お母さんとお父さんに見せに行こう!」


 魔石を受け取ったサーリはそう言い、ウアの手を引きながら作業広場で袋を作っているらしい両親の元へと、小走りで向かって行った。


 ――その彼女の瞳と石の色が、後に大問題になろうとは……その時は誰も気が付かなかった――


 などと、頭でふざけたナレーションが浮かんだが

 正直、将来的には問題になりそうな属性を持った娘であると思う。


 彼女自身がというより、あの属性がである。


 今は問題にはならないだろうが、将来的に世界樹の葉の供給が追い付かなくなり、怪我や病気の治療の為に、彼女の様な貴重な魔法属性を持っている者達を取り合いになり、争いに発展するかもしれない……


 これは、少し注意しておかないとだな。


 しかし、ビー玉ほどのダイヤと等価のコップか……大切に使おう。

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