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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第二章 出楽園編
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第34話 体験学習

 帰路の途中、森の中で一夜を過ごす事になり、夕食を済ませて皆が寝静まった後、俺は考え事をしつつ一人で近くを散策していた。


 日中の間、皆というかバハディアが魔法を使えるようにと理科の様な事を教えていたのだが、やはり言葉だけで伝えるのは難しいと感じたのだ。

 彼本人も一生懸命学ぼうという気持ちは有る様だが、どうにも理解が追い付いてない様子だった。


 魔法は見て感じた事をイメージして行うのが一番楽なのだが、逆に理詰めで教える方がダメなのかもしれない。


 俺自身も、科学的根拠や物理法則を主軸にイメージして魔法を発動しているというよりは、記憶の中に有る漫画やアニメのファンタジー物での描写をイメージして魔法を使っている傾向が強いのだ。

 それを補足する感じで科学知識を用いてる程度にすぎない。


 そもそも、魔法なんて代物が科学なんて無視している物だしなぁ……

 それを教えるのに為に、先に科学的な事を教えてるんじゃ本末転倒な気がしてきた。


 これなら御伽噺などでイメージを膨らませる様な物を話すか、もしくは実地で体験させた方が良さそうだ。


 とはいえ、そこで問題になってくるのが今の俺の身体である。


 今使っている石像の神体では、持っている魔力量が少なく満足に魔法が使えないのだ。

 ここ数日間でLvは2ほど上がったが、それでもMPの総量は世界樹の百分の一以下にも満たないし、それどころかエルフィーの半分もない。


 一昨日の夜に魔法の練習をしていた時は、世界樹の葉をもしゃもしゃ食いながら練習していたのだが、皆に神語や魔法をフル活用して教える時にもそれをするというのは、なんか情けない物だがある……


 世界樹に宿っている時ならば魔法が使いたい放題なんだし、明日、帰ってから世界樹に宿って教えるか……?

 いや、飛行魔法というか闇系統の魔法を教えるのは、まだバハディアとエルフィー達だけに留めておきたい。


 他の魔法とは違い、効果が特殊なので、大勢がそろって飛行魔法などを使い始めたら、ちょっと安全管理が出来る気がしない。

 なので、先にバハディアに教えて安全に覚えさせるノウハウだけでも確立しておきたいところだが……


 と、色々と方法を検討しながら歩いていると、少し離れた所に月明りが差し込み森の闇の中を照らしている場所があるのが目に入った。


 行ってみると少し森が開けており、そこからは星々の瞬きと二つの月が照らし出す世界樹が見えた。


 ここからだと世界樹が見えるのか……ん?


 この距離ならいけるか?


 視認さえできれば……――



 翌朝、俺は皆が起きるのを待ち、夜に見つけた森の空き地へとエルフィーと竜人達を連れて行った。


「では、ここで朝食を食べていてくれ。

 食べ終わったら、そのまま此処で待って居るように」


 と皆に言いつけ、俺は朝食の世界樹の葉と果物類を渡した。


 その際、リーティアから「主様。野菜も食べたい」と言われたので、彼女に数種の野菜類を渡し、俺は急ぎ世界樹へと宿り、朝の会を済ませてから遠くのバハディア達の姿を探した、


 俺の神体の像が白色で目立つと思うのだが……あった。


 皆も近くに、ちゃんと居るな。

 ここから2kmくらいか……届くかな?


「(エルフィー、バハディア、レイディア、リーティア、シルティア

 私の声が聞こえるか?)」


 と、念話式の神語で、遠くに見える五人へ話しかけると


「(もしもし主様ですか? はい、聞こえています)」


 と、エルフィーの声が直ぐに返って来たので、俺はほっとした。

 しかし、もしもしって電話ではないんだが……まぁいいか。


「(エルフィー、他の皆にも私の声が聞こえているか?どうだ?)」


「(ええっと……大丈夫です。

 問題なく聞こえているみたいです。

 少々お待ちを、今、皆に通話の仕方を教えますので)」


 通話……? なんか電話の使い方みたいな事になってるな。

 エルフィーはその内、念話で話しながら御辞儀までしそうだ。


 などと、俺が考えながら待って居ると。


「(あるじさまー、きこえるよー、これでいいの?)」


「(こうか? 神語でか? 主様、レイディアです。聞こえております)」


「(え?声に出さないで……バハディアです。俺も聞こえています)」


「(主様ぁ聞こえていますよぉ)」


 と、リーティア、レイディア、バハディア、シルティアの順に返事がきた。


「(よし。皆、聞こえているようだな。

 食事は……済んでいるか。

 では、今から体験学習の一環として、皆に飛行魔法をかけるので、少しそこでじっとしていなさい)」


 俺はそう告げて、遠くのエルフィー達へと向けて、魔力を編み出して伸ばす。


 やはり距離が遠すぎるので、魔力のイメージ制御が難しく消費も激しいが、世界樹の持つ魔力量なら何とかなりそうだ。

 とはいえ、生身の他人へと飛行魔術を行使するのは初めてなので、細心の注意を払わねば……


 大人しく待つ五人の近くまで魔力が届き、皆の身体に俺の魔力が接触した時だった。何か、壁の様な物を感じ、少し魔力が通りにくくなったのを俺は感じた。


 これは……魔力に対する耐性とか防御的な力か?


 回復魔法を使う時はそんな物を感じた事無いのだが……

 どうやら、緊張でもしているようだ。


「(皆、リラックスしなさい。

 私に任せておけば大丈夫だ)」


 そう五人へと優しく語り掛けてみると、感じていた抵抗力が薄れた。


 先ずは、今回の目的でもあるバハディアからだな。

 俺は彼に掛かっている重力の枷を少しずつ弱めていった。すると


「(あ、主様!? なんですかこれは!?)」


 と、彼の驚きの声と感情が伝わって来た。


 現在、彼の重さは空気と同じ程度になっているはずだ。

 遠くに見える彼を注視すると、少しだけ空中に浮いて手足をバタつかせてもがいているのが見えた。


「(落ち着けバハディア。

 身体の力を抜き、体に感じるその感覚を覚えよ。

 今、お前の体の重さは空気と同じになっている。

 昨日、水より軽い物は水の上に浮かぶという話をしただろう?

 魔法でその水の上に浮く葉や木と似た状態になっているだけだ。

 いいか、その感覚を覚えるのだ)」


「(……はい……分かりました)」


 説明してて水泳の教え方みたいに感じたが、溺れる心配がない分こっちの方が楽だな。

 この方法は、水泳の事前練習としても活用できるかもしれん。


 少しすると彼も浮いている感覚に慣れたのか、落ち着いた様子になった。


「(よし、それでは皆もバハディアと同じ状態にするぞ。

 お互い体や手足がぶつからない距離まで少し離れなさい)」


 バハディアの様子を観察し、集団の密集状態での練習ではちょっと危険だなと感じたので、俺が皆にそう告げると、レイディアとシルティアの両名の魔法抵抗力が少し増した。


 二人は少し怖いみたいだな。

 まぁ、プールと一緒で慣れれば楽しくなるだろう。


 四人が互いに距離を取ったのを確認してから全員の重さを軽くすると、最初はバハディア同様の混乱も有ったが、皆、数分程で慣れたらしく、それぞれで楽しみ始めた。


 だが、暫くすると、その中で一番はしゃいで遊んでいたリーティアが


「(あるじさま……きもちわるい……はきそう……)」


 との念話を送って来たので、一旦中止して全員を地面に降ろした。


「(大丈夫かリーティア?

 あぁ、いや、無理して答えなくてもよい。

 エルフィー、彼女の様子はどうだ?)」


「(ええと……少し顔色が悪いですが……大丈夫そうです)」


 俺も飛行魔法の練習の時に、空中でぐるぐる回ったり飛行の際に四方八方から掛かる重力を少し気持ち悪く感じたが、三半規管や消化器官が有るかも怪しい体のせいか、それ程でもなかった。

 だが、普通の生身の身体である者にはもっときついのかもしれん。


「(そうか、他の皆はどうだ?体調に変化は有るか?)」


 と、一応、他の者達にも聞き取りをしてみると


「(俺は大丈夫です。気持ち悪くもありませんし、特に変化はありません)」


「(私もです。なかなか面白い体験でした)」


 と、バハディアとレイディアは答えた。


 ふむ……男二人は大丈夫のようだ。


「(主様ぁ、私もなんともありませんよー。

 たぶんリーティアはぁ、朝食の食べ過ぎとぉ

 尻尾で地面を叩いてぇ、ぐるんぐるん回ってたのが原因だと思いますぅ)」


 シルティアも問題なさそうだな。


 彼女の言う通り、リーティアに関してはそれが原因ぽいな。


 そういえば朝食の直後だったな。

 リーティアには後で、好き嫌いせずに食べる事は良い事だが、食べ過ぎは良くないと言っておこう。


「(主様。浮いている時なのですが、妙な感じがしました。

 なんというか……上半身が熱くなるというか……

 膨れ上がる感じの変化が有りました)」


 最後にエルフィーがそう言ってきた。


 それは逆立ちの時の……いや、もしや、無重力状態での症状か?


 たしかに無重力状態みたいになるのだし、そんな体調の変化も起きるか。

 俺の時はそんな感じはしなかったが……


 他の四人にもエルフィー同様の感じがしたのかを確かめてみたが、上半身に血が上る感じがしたのはエルフィーだけだった。

 これは、竜人とエルフとでの体の作りの違いかもしれないな。

 俺の神体の肉体構造は当てにならないし、後で他の種族でも試してみないと分からなさそうだ。

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