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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第二章 出楽園編
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第33話 帰路

 サトウモロコシと命名した物を皆と食した後、俺達はバハディアの案内で森の中に有るというサトウモロコシの群生地へと採取に向かった。


「ここです、主様!」


 と、案内をしてくれたバハディアが告げた場所は、森の木々に阻まれて丘からは見えてなかったが、行ってみると直ぐ近くにあり、そこには大量のサトウモロコシが生えていた。


「結構あるな……

 これなら、世界樹の方に居る皆への良い土産になるか」


 目の前には、高さ2~3m程もあるサトウモロコシが視界一杯に広がっている。

 1本の茎に、多い物では10本くらいのトウモロコシが実っている様だ。


「そうですねぇ。

 でもぉ、どのくらい必要なのかしらぁ?」


「全部採っちゃえばいいじゃん」


「主様、如何なさいますか?」


 後ろに付いて来ていた女性陣がそう言ってきたが、たしか今の人口って350人くらいだったか?

 さすがに全部引っこ抜くのは繁殖の事を考えると出来ないが、茎ごとに4~50本ほど持って行けば事足りるかな?


「全部採ってしまうのは駄目だ。

 植物はある程度残しておけば、しばらく経てば増えて、また採れる様になるからな。今回は50本ほど取れば十分だろう。

 いや、それも採り過ぎかもしれんか……どれ」


 サトウモロコシの背が高く密集して生えているせいで、この場所にどれ程の数が生えているのかがさっぱり見えない。

 なので、俺は昨夜練習した飛行魔法で少し上から見る事にした。


 3mほど上昇して見渡してみると、広さもそこそこあり2~300本程度は有りそうだった。

 これなら、50本くらい引っこ抜いても問題ないだろう。


「ふむ……見た所、かなりの数が有る様だ……ん?」


 と、俺が皆に話しかけると、皆はぽかーんとした表情で俺を見上げていた。


 そういや、飛行魔法を皆の前で使うのは初めてだったね……



 とりあえず夕暮れまでそれほど時間が無いので、皆には飛行魔法の事は後で説明するからと説得し、急ぎサトウモロコシを採り、その後は川沿いの丘へと戻って、そこでまた一泊する事になった。


 そして今、皆でたき火を囲みながら夕食を食べつつ飛行魔法、というか飛ぶという行為について俺は説明した。


「――……という原理で御伽噺などに出て来た鳥たちは飛んでいたわけだ。

 だが我々は羽をもっていないからな、飛ぶ為には別の方法が必要になってくる」


「それで魔法を使って飛んだのですね」


 と、エルフィーは納得顔で頷いていたが


「ねぇねぇ主様!

 あの魔法ってどうやるの? わたしにも出来る?」


 と、好奇心旺盛なリーティアが尋ねてきた。


「私がさっき使ったのは闇系統の魔法で、同じ方法ではリーティアには難しいな……この中だと、バハディアが得意とする系統だ」


「え!? 俺が……ですか?

 でも、今まで俺は魔法なんて使えませんでしたが?」


 と、俺が答えると、バハディアは驚いた様子でそう聞き返してくる。


「それは、闇系統の魔法の特殊性のせいだな。

 火や水は目に見えて分かり易いのだが、闇に関しては概念……『世の理』を知っておかねば使う事が難しい上に、目に見えない力を操る類の魔法なのだ」


 まぁ、目に見えない事も無いのだが、視認出来る時点でやばい事になる。


「世の理……うーむ……、俺には難しいか……」


 俺の答えを聞いたバハディアは、ガックリきた様子でそう言った。


 エルフィーなら得意な属性ではないが、持っている知識で使えるかもしれない。

 だが、バハディア達には難しいだろうな。

 理科程度の知識を教えれば可能かもしれないが……


「それに、空を飛ぶという事は危険だ。

 高い所にいて魔力が尽きれば、地面に激突して死ぬ事になるぞ――」


 たまに木登りなどで高所から落下して、怪我や死亡する子供が出るしな。

 俺だって未だに天界から降りて来る時の感覚には慣れていないんだ。


「――なのでバハディア、お前が魔法を使いたいと言うなら使い方を教えるが、制御が上手くなるまで私の許可なく魔法は使うなよ?」


 しかし、バハディアだけ魔法が使えないというのは可哀そうだなとも思ったので、俺は明日から彼に教える事にしたのだった。


 まぁ、暇な夜の間に教える内容を考えておくか……



 翌朝、皆と早朝の景色を再度見た後、世界樹への帰路に就いた。


 帰りは主に植物の方を調べる為に、川沿いではなく森の中を行く事にしたのだが、おかげで帰りは行きよりも大変だった。


 大変ではあったがその分収穫も多く、世界樹の近くでは見かけなかった野菜類や穀物の類が多く見つかり、エルフィー達が欲しがっていた衣類に使いやすい草や蔓なども多く手に入った事もあり、皆も満足した様子だ。


 それと途中での休憩時などでは、バハディアを中心に五人へ物理というか簡単な理科的な事を教えながら進んだのだが、採取や調査とそれらで時間が掛かり道中でもう1泊する事になった。


「そうだなぁ……俺は帰ったらドッチボールをやってみたい。

 あれは面白そうだ」


「たしかに、お前とリーティが好きそうな遊びだったな。

 この辺の植物は、素材の採取で行く場所と大差ない物が多いし、昼前には帰れるだろうさ」


 たき火を囲み皆で夕食を食べつつ話をしていると、そんな事をバハディアとレイディアが話していた。


 俺は、今日手に入れたばかりの野菜類を調べながら、取り出してはちびちびと食べていたのだが、耳に入って来たレイディアの言が気になった。


「ふむ? レイディア、周囲の植物で距離が分かるのか?」


「え……?はい。世界樹との距離で取れる物が変わりますので。

 この周辺の草花や木々は知っている物が多いですから、そう遠くないかと」


 聞いてみると、彼はそう答えた。


 少し前に、飛行魔法で世界樹との距離と方角を確かめたが、たしかに後2~3km程度の所までは来ている。

 今日みたいにゆっくり進んだとしても昼前には到着しそうだが、彼には周辺の植物で世界樹までの距離が分かるのか。


 今いる場所は、彼らが何時も物作りをしている広場や素材採集にで行っている方向とは真逆なのだが、それでも世界樹への距離が分かるという事は……

 世界樹を中心として円状に植生が分かれているのか?

 朝にでも天界のパソコンで確かめてみよう。


「なるほど、なら明日はそこまで時間を掛けずに進めそうだな」


 と、俺が心のメモ帳にメモしつつ答えていると、隣に居たエルフィーとリーティアが俺の食べているレタスとニンジンが気になったらしく


「主様、それは今日採っていらした物ですか?」


「それ美味しいの主様?」


 と、聞いてきた。


「食べてみるか?」


 そう言い、二人にレタスを数枚と小さいニンジンを渡して食べさせてみたが、やはり二人は微妙な顔つきになり、正直者というか素直なリーティアの方は


「あんまり美味しくない……」


 との感想を苦虫を噛んだ様な表情をしながら述べた。


 俺は、野菜としては美味しいと思う。

 ニンジンもレタスも記憶の中の物よりも味が良いと感じたのだ。

 だが、世界樹の周囲にある果物や葉っぱなどを適当に摘まんだ物の方が美味しさでは上なので、やはり二人には、それほど美味いと感じる物ではなかったらしい。


「まぁ、そうだろうな……

 海へと向かった目的の一つに、それらを美味しく食べる為という目的があったのだが、海があの状態だったので無駄足に終わったしまったしな」


 塩の一つまみでも振りかければ、それなりに美味しくなる物が多いのだが、やはり、そこが一番悔やまれる所だ。


 今日は、森の中だというのに多岐にわたる野菜や穀物を発見できた。

 しかし、その多くが調理などをしないと美味しく食べれない物ばかりで、何か調理器具や調味料を用意するまでは、これらを常食とするのは難しそうだ。


「海で美味しく……ですか?

 それは……」


「これを美味しくできるの?」


「あぁ。あの海では無理だがな。

 食べるという行為は、味にしても人には重要な事で、人は自身に必要な物や重要な物の味を本能的に美味しいと感じるのだ。

 今回、海で手に入れる予定だった物は――」


「『塩』……ですね?」


 と、エルフィーは俺が手に入れたいと思っていた物に気が付き、深刻そうな顔で言ってきた。


「塩?それが主様は欲しかったの?」


「そうだ。

 今は世界樹の葉を皆が食べているな?

 あの葉は皆に必要な物を全て与えてくれるので今は必要ない。

 だが本来、人とは塩など色々な物を食べねばならんのだ」


 と説明してみたが、エルフィーとは違い、リーティアや他の者達は「ふーん」といった程度の反応しかしなかった。


 だが


「それにな、人は物を食べて日々の力にするだけではなく、食べた物を取り込んで自身の身体に組み込んで成長するのだ」


「成長ッ!? 主様! いろんな物を食べれば大きくなれるの!?」


「そうなのですか!?」


 と、今度は食い気味にリーティアのみならず、レイディアや他の者達まで反応してきた。


「……あぁ、うん。そうだ。

 大きくなる為には好き嫌いせずに、色々な物を食べる事が大事だぞ」


 と、彼等の勢いみたいな物に気圧され、小さい頃に母親に言われたような台詞を俺は答えた。


 ふむ……やはり他の種族達と比べると成長の遅い竜人達は、この事は悩みの種だった様だ。


 その後、竜人達は野菜をもう少し食べたいと言い、俺がそのままでも食べやすそうな物を渡すと、四人はそれらを頑張って食べていた。

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