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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第二章 出楽園編
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第28話 水と木

 石の分布などで軽く地質調査をした後、次の目的地の海へと向かって川沿いを歩き始めた。


 しばし、全員で並んで川辺を歩いていると、この辺からは皆もあまり知らない地域だとの事だったので、少し歩調を緩めて進む事にした。


 俺は歩きながら、ちらちらと川の水質や水中の様子などを見ていたのだが、この川は水が澄んでいてとても綺麗だ――


「――いや、これは綺麗過ぎる……か?」


「ほえ? 綺麗過ぎる?……ですかぁ?」


 俺は、感じた違和感を思わず呟いてしまい、隣を歩いていたシルティアがそれを聞いて、不思議そうに尋ねてきた。


「あ、あぁ、川の水がな。

 私はもっと濁っている物だと思っていたのでな」


「ここ最近は嵐もきていませんからねぇ。

 雨がぁ凄く降ったりするとぉ、濁った感じになりますよぉ」


 そう彼女は答えてくれたが、俺の考えている綺麗さの理由とは別の答えだった。


 水源から20~30kmも離れていると、俺の記憶に有る川では常時もっと濁っていたはずだ。

 だが、この川の水の澄み具合は水源のすぐ近くの様相をしているのだ。

 おかげで、水中の水草などが水流でゆらゆらと揺れている様子まではっきりと見えて、和み癒されるのだが……


 現代社会の様に河川の汚染などが皆無な所為か、もしくは藻類が繁殖しておらず、土などの流入も少ないのだろうか?


「ふむ、そうか」


 と、俺は説明するのが難しと感じたので、誤魔化して返事をしておいた。


 まぁ、水の中が見やすいのは助かる。


 ドワーフ達から頼まれた雪花石膏も探しやすかろうと、そう思ったのだが、見える範囲では小石ばかりで岩と形容できるほどの大きさの物は見つからない。

 川辺にも見当たらないし、これは上流の方でないと探すのは難しいかもしれん。


 石の質的にも柔らかい部類の石材だから、この辺まで流れてくる間に砕けてしまうのだろうか?


 一応、エルフィー達にも聞いてみるか。


「エルフィー、この私の体を作るのに使った岩は、この川で見つけたのだよな?」


「はい。えっと……先程の森から出た場所から、少し上流に行った所です」


 そう彼女は答えたが、あの辺でも大きな岩は少ない感じだった。

 やはり、この近くまであの大きさで流れて来たのが奇跡だったのかもしれない。


「そういえば、ドグさんとダグさんに見つけて欲しいと頼まれたのでしたか?」


「ああ、あの岩と同程度のを探していたのだが、やはり下流では見つかる可能性は低いか……」


 うーん、来る前に天界のパソコンで調べておけばよかった。


 まぁ、雪花石膏自体は海の成分が沈殿して出来た物だったはずだし、もしかしたら海岸近くで見つかるかも……でも、あれって地殻変動などで一度地表に上がって来ないと出来ないんだったか……?


 などと、考え事をしながら河原を歩いていると


「――っ!」


 俺は足元にあった流木に足をぶつけて転びそうになってしまった。


 なんとか間抜けな転び方はしなくて済んだが、急に態勢を崩して前屈みになり皆の注目を集めてしまう。


「主様……?」


 と、俺のその姿を見たエルフィーが言った。


 なんか冬場に地面の氷で滑った所を知人に見られた様な恥ずかしさがこみ上げてくる。


 どうしたものか……――


 ……――なに?


 流木にけっ躓いた所が見られて恥ずかしい?

 それは恥ずかしいと思うからだよ。

 逆に考えるんだ『わざと前屈みになった』と考えるんだ……――


 羞恥の一瞬!

 俺の精神内に潜む思考加速能力が、とてつもない答えを産んだ!


 普通の人は、躓きそうになり前かがみになると「あ、靴ひもが…」などと誤魔化したりする! 


 だが俺は違った!


 逆に! 

 俺はなんとさらに!

 地面へとしゃがみ込んだ!


「……流木か」


 そして俺は、足元にある流木を徐に拾い上げる。


 そう! 俺はこの流木を拾い上げる為にしゃがみ込んだのだ!


 これを雪花石膏の代わりに持って帰れば良いんじゃない?

 との答えを俺の頭は導き出した。


 見たところ、直径10cm長さ1m程で、川に流されてる内に細かな枝葉が無くなり樹皮も削られて、綺麗な丸太の様になっている。


 たしか、エルフやドワーフの者達も木の加工をし始めていたはずだし、別に像を作るのなら石を使わないでも、木で作れるだろう。


 さすがに今拾った丸太では小さくて等身大の物は作れないが、周囲を見渡してみると、この辺は川が少しカーブを描いている場所で、川の流れの外側の水辺や原っぱに大小様々な流木が落ちている。

 中には幹の太さが1mを超える物まで有った。


 この流木なら、材木を手に入れる為に現状では難しい伐採作業をせずに済むし、本格的な加工の前にする枝の切り落としや、皮を削って綺麗にする手間も省ける。

 それに、川原に打ち上げられている物は丁度良い感じに乾燥も済んでるし、像の作成に使わなくても料理の時などの薪にも使えるだろう。


「これは良い物を見つけたかもしれん」


 そう皆に言いながら手に持った流木を見せる。


「その木?を何に使うのですか?」


 と、不思議そうにバハディアが尋ねてきた。


「これをドワーフ達へ雪花石膏の代わりに持ち帰ろうと思ってな。

 バハディア、少し爪で削るのが楽かどうか試してくれないか?」


「はい」


 持っていた流木の丸太を彼に渡して爪で削れるか試してもらうと、簡単に削れる事が分かった。


「ふむ……これなら使えそうだな。

 皆、この周囲にある流木を集めるのを手伝ってほしい。

 運ぶのが難しい大きさのは私が回収するので、皆は持てる程度の物を一か所に集めてくれ」


 そう皆に指示を出し、俺はさっそく付近にあった大木の流木をアイテムボックスへと収納した。


 皆で流木集めをし始めて1時間程で、それなりの量の流木を集める事が出来た。

 だがその所為で日も傾き、あと1~2時間で日が暮れそうだ。


「……これくらいで良いか?

 エルフィー、この程度で十分だと思うか?」


「そう……ですね。

 よろしいのではないでしょうか、主様」


 皆の集めた流木の小山を見て、ちょうど流木を運んで来ていたエルフィーに意見を求めると、彼女も同意してくれた。


「ふむ。 皆! そろそろ終わりにしよう!」


 方々に散っていた皆を集め、世界樹の葉をそれぞれに渡して休憩してもらい。

 その間に俺は、皆の集めた流木の数々をアイテムボックスに回収した。


 そして三十分程皆を休ませてから、俺達は下流へと歩き出したのだった。


 今夜は、流木の薪で焚火でもしようかな。

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