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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第二章 出楽園編
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第27話 川の石

「主様、準備が整いました」


 昼食をエルフィーと竜人達と一緒に食べた後、俺が暫くエルフィーの旅支度を待って居ると、彼女が旅支度を終えて出発出来るよと言ってきた。


「そうか、では行くとするか」


 と言い、俺が立ち上がった時だった。


「おぉ! 出発ですか。

 たしか最初は川に向かい、その後に海に行くのでしたな……

 主様の御話で知ってはいましたが、まだ見た事は無かったので楽しみです」


「海って水が沢山あるのでしょう?私も楽しみですぅ。

 もう川や池の水だと操るのに苦労しなくなってきたしぃ。

 海でもっと多くの水を操ってみたいわねぇ」


 と、何故かレイディアとシルティアの二人も立ち上がりながら言った。


 うん……? あれ?

 レイディアとシルティアの仲良しコンビが海を楽しみにしている?


「俺はまだ食べたことの無い食べ物が楽しみだ。

 果物や葉以外にも食べられる物がまだまだ有るという事らしいしな」


「わたしは服の素材で良いのが有ると嬉しいかな。

 あ! あと火山!

 主様が居るから安全だろうし、あの溶岩ってのを近くで見てみたい!」


 と、今度はバハディアとリーティアの二人も立ち上がり、なんだか旅先での希望を言ってきた。


 バハディアの食べ物という希望はまだしも、リーティアの溶岩を近くで見たいってのは無茶だろ常考。


 その竜人の四人の姿をよく見ると、旅装束みたいな恰好をしており、一緒に来る気満々の様子だった。


 レイディアとバハディアの二人は、竜人の男性特有の頑丈な鱗で全身を覆われているので服装に関してはいつもの腰巻程度の軽装だが、肩掛けバッグの様な物を肩にかけて中に果物や糸や紐らしき物を入れている。


 シルティアとリーティアの二人はその逆で、丈夫そうな衣服を身に纏ってはいるが荷物は何も持っていない。


 女性の竜人は男とは違い尻尾と角以外は人間と大差ないので、草木の生い茂る森の中を行くため、肌の露出を控えた服装を選んだのだろう。

 彼女等と同じ様な服装をエルフィーもしているしな。


 というか、俺が朝食の時にエルフィーに指示してその様な服装をさせたのだが、それを一緒に聞いてた彼女達もその通りにしたという訳か。


 ここ数日間、エルフィー以外に竜人達とも一緒に生活していた事もあり、どうやら彼等も一緒に行くものと勘違いしたらしい。


 これは……お前たちはお留守番だよ!とは言いにくい……


 うーん……まぁ、いいか。


 俺が天界や世界樹に戻ってる時などに、エルフィーを一人にせずに済むしな。


「皆、忘れ物はないな?

 では、行くぞ!」


 と、俺は何事も無かったかのように出発の号令をかけ、皆もそれに続き元気の良い返事をするのだった。



 先ずは世界樹から1kmほど先にある川を目指す。


 川までの道はエルフィー達の方が詳しかったので、俺は皆の先導で森に入る事になった。


 道中は森の中を突っ切る事になるので、もっと歩きにくいかと思っていたのだが、それほど大変では無かった。

 どうやら、川へ雪花石膏などの石材を取りに行くドワーフ達がそこそこ居るらしく、その彼らが行き来する所が獣道の様になっており、歩き易くなっていたのだ。


 途中、何人かのドワーフとすれ違い、彼らと挨拶を交わして歩き続けていると、川特有の水と苔むした匂いが漂ってきた。


「主様、そろそろ川が見えてきます」


 と、先頭を行くレイディアが告げ、そのまま彼に付いて行くと、木々の間から陽光をキラキラと反射する川面が見えてきた。


 森を抜け川原に出ると、そこは綺麗に澄んだ水がせせらぎの音と共に流れる、なんとも心癒される場所であった。


「到着ですね主様。

 この後は如何なされるのですか?」


 俺が少し川の景色に見とれていると、隣に居たエルフィーがそう尋ねてくる。


「ん、そうだな……

 先ずは周囲と川の中を調べてみるか」


 川の全体の様子は上流と中流の間といった感じだ。


 川幅は10m前後だろうか?

 川辺に有る石もそれほど大きくも無く、角ばった岩も少ない。

 石の種類としては火山が近くに在るせいか、積層模様の石は少なく火成岩が殆どのようだ。


 てっきり雪花石膏の石がもっとあると思っていたのだが、見渡した限り周辺には見当たらなかった。

 もうこの辺の物は採り尽してしまったのだろうか?


「主様ぁ、先ほどから石ばかり見ていますけど……何か分かるのですかぁ?」


 と、しゃがみ込んで水辺の石を見ていた俺の隣にシルティアが来て、同じくしゃがみ込んできて聞いてきた。


「んー……大まかではあるが分かる事もある。

 たとえば……この辺の石はこの程度の大きさの物が多い」


 そう彼女に言い、足元の20cmほどの石を持ち上げてみせる。

 彼女の目の前で全体を見せる様にクルクルと回す。


「はい……それがどうしたのですぅ?」


「この川の中や周囲にある石の殆どは、元はもっと上流の方に有った大きな岩などが水に流されて来た物で……――」


 と、俺が小学生の頃の理科だったかの授業を思い出しながら彼女に説明していると、他の者達も近くに来て説明を聞き始めた。


「……――嵐などの大雨の水が集まり、川の流れと水量が多くなると、その水に流されて上流から転がり流れてきて、道中で他の石とぶつかり削れて段々と丸くなる。結果、この辺の石はこの程度の大きさと形の物が多くなるわけだ」


「たしかに……水の力は集まれば集まるほど強くなりますね……」


「岩が流れる間に、こんなに小さくなるのか……」


 説明を一通り終えると、レイディアがしみじみと頷きながらそう言い、バハディアは足元の石を拾いそれを眺め始めた。


 彼らは、水浴びの時などにシルティアから魔法で水を大量に掛けられているからか、水の力強さに実感が有るのだろう。


「まぁ、上流と下流の様子を見比べると分かりやすいが。

 今日はこの川に沿って下流に向かって海に行く予定だ。

 道中で風景の違いなどを観察してみるのも面白いぞ」


 俺はそう言い、立ち上がると下流へと歩き始めた。


 なんだか、学校の先生になって、課外授業でもしている気分だな。


 それはともかく、ここから10km、多少蛇行している分も含めると15km程歩けば海に出るはずだ。

 整えられた道が有るわけでもないし、夕方までに着くといいが。

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