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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第二章 出楽園編
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第20話 真なる贈り物

 朝食を終えた者達は方々へ散って、それぞれの目的のグループと合流していく。


 ここ数年で人口は350人程になり、生活にも秩序のような物が生まれ始めた。


 種族の代表達は、それぞれの種族の者達へ言葉を教える為に授業の様な物を催しており、まだ言葉を覚えてない者や幼い者達はそちらに参加しているらしい。

 それ以外の者達は気ままに、各々で何かをやる集団で集まる様になっていた。


 衣服や物を作っている集団はエルフを中心に集まっているらしく、俺はその集合場所へ案内される事になった。


「主様! こっちだよ! こっち!」


 と、俺の手をぐいぐいと引っ張り、先導するのは金の瞳で赤髪の竜人の少女リーティアだ。


 彼女達竜人は、3年ほど経ちすくすくと成長……はしなかった。


 いや、成長はしたが微々たるもので、背格好は未だに14~5歳程度のままである。


 だが能力的には成長しているらしく、ステータスの平均は他の種族の大人達より高くなりつつある。

 そのせいか、引っ張られてる俺の手が少し痛い。

 あと、草花を編み上げたスカートの中から伸びる、赤い尻尾が俺の足にぺちぺちと当たる。


「そんなに急がないでぇリーティア」


 後ろの方から青髪の竜人の少女のシルティアが小走りでやってきて、彼女をたしなめる声を掛けて来た。


 この二人の性格は対照的みたいだな。と、リーティアに引っ張られながら俺が考えていると、空いていた左手を何時の間にか隣に来ていたエルフィーが掴んできて、目的地の説明をしてくれた。


「主様、作業場所は森の中を少し進んだ所にあります」


「そ、そうか」


 こうして俺は両手を女の子二人に手を引かれ、目的地に連れて行かれる事となった。


 これはあれだな、休日にデパートとかでおもちゃ売り場などに、子供に引っ張られていくパパさんみたいな気分だな。


 森の中へ入り10分程すると、やがて開けた場所に到着し、そこには五十人程の者達が居り、言葉を覚えさせたエルフの女性、ルルとエーブの二人を中心に衣類や小物を作り、ついでに言葉も教えている様子だった。


「ここだよ! 主様!」


 と、リーティアが到着の声を元気よく上げた。

 その声に、先に集まっていた者達が俺が来た事に気が付き


「これは!たい、……主様でしたね、おはようございます主様」


 と、エーブが慌てて俺に挨拶をしてきた。


 赤い瞳で水色の長い髪を後ろで纏めている彼女は、たしかエルフィーの母方の祖母だったはずだ。


 皆と挨拶を交わしつつ集まっているメンバーを見てみると、比率的には女性が多めで、半数がエルフで、残りは人間とドワーフが半々くらいの様だ。

 

 皆との挨拶が一通り終わると、青の瞳の緑色の髪のエルフの女性、ルルが俺の目的を尋ねてきた。


「それで、私たちになにか御用でしょうか?」


「あぁ、皆が服などを作っていると聞いてな。

 その様子と作っている物を見に来たのだ。

 しばらく見物させてもらうが、良いか?」


 と、彼女達に来訪の目的を告げると、皆快く承諾してくれたのだった。



 しばし、皆の作業風景と作った物をのんびりと見物していると、俺達が来た世界樹の方角とは真逆の方から、20人程の男女が様々な植物を大量に抱えてやって来るのが見えた。


 彼らは抱えてた草花や葉を広場の中央まで持ってくると、並べる様に広げ始め、その彼等に続くように、朝食の時に見かけなかった竜人の男子二人、白い鱗の肌のレイディアと黒い鱗の肌のバハディアの二人も森の奥の方からやって来た。


「ん……? 森の向こうから戻ってきた者達は、素材を取りに行っていたのか?」


 俺は彼等の事が気になり、隣に居るエルフィー達に尋ねると


「はい。ある程度草花を編める様になった者達は、森の奥の方で服などに適した素材を見分けられる様にする訓練しに行くんです」


「ついでにぃ、まだ練習をしている者達のための分も採集して来て貰っているのですよぉ」


 と、エルフィーとシルティアは説明してくれた。


 なるほど、皆も役割分担の様な事を自ら考え実践し始めているのか。


 皆の行動に感心し、その様子を見ていると


「あ、二人とも戻って来たの?

 おーい! レイ! バハ! こっちこっち!」


 と、リーティアが二人をこちらに呼び寄せた。


 彼女の呼びかけに気が付いた二人は、手に数本の蔓草を持ちこちらに駆け寄って来て、俺の前で片膝をつき挨拶してきた。


「これは、主様。おはようございます」


「おはようございます、主様」


「おはよう二人とも」


 この二人はなんというか、俺に対する所作が仰々しいんだよな……


 GPを使い言葉を覚えさせた際、エルフィーの様に立ったまま昏倒すると怪我をするかもと、片膝を着かせて行ったのだが、その内の何人かはその姿勢が俺に接する時にする正しい物だと認識したらしい。

 それ以来、この二人は俺に挨拶などをする際にはこの様にしてくるのだ。


 現代社会でされよう物なら、一種の羞恥プレイだなこれは……

 俺への礼儀作法として広まらない事を祈ろう。

 でも、誰に祈ればいいんだろう?


 俺がそんな栓無き事を頭の中で考えていると、彼らを呼び寄せたリーティアは


「それでそれで! 頼んだ物はあった?」


 と、二人に期待を膨らませた様子で尋ねていた。


「すまん。これだけしか見つからなかった……」


「もう、この周辺には生えていないな。

 もっと奥まで行かねば手に入らんだろう」


 と、訊かれた二人は、立ち上がると手に持っていた数本の蔓草を彼女へと差し出した。

 見た感じは葛っぽい植物だ。茎を紐代わりにでも使うのだろうか?


「え?これっだけ……? これじゃ全然足りないじゃない!

 なんでもっと採ってこなかったの!」


 と、その蔓を受け取ったリーティアはお怒りの様子だ。


 さすがに頼まれて取りに行ったという二人が気の毒に感じたので、俺は口をはさむ事にしたのだが


「リーティア、その怒りに任せた物言いは良くないな」


 と、俺としては優しく注意したつもりだったのだが、俺の言葉を聞いた彼女は即座にその場に跪き、俺に向かって謝罪してきた。


「ご、ごめんなさい!主様!」


「いや、謝るのなら私にではなく、レイディアとバハディアに……――」


 と言いかけたら、今度は彼等二人も跪き


「いえ! 彼女の怒りも、もっともな事なのです!

 我らの浅慮な判断が悪かったのですから!」


「そうです! 俺達がもっと奥地まで探しておけばこんな事にはッ!」


 と、彼らも謝罪をし始めてしまい、その三人の間でどうして良いか分からなくなったらしいシルティアが、あわあわと右往左往する事態になってしまった。


 えぇ……何この状況。


 広場に居る者達にも注目されて、めっちゃ気まずい。


 早くなんとかせねば。


「とりあえず3人とも立ちなさい。私は怒っている訳では無い……――」


 俺は三人に話しかけながら、状況への若干の焦りからか思考が加速するのを感じた。


 三人のやり取りと態度からして、あの葛らしき蔓が重要な物だったのだろう。


 この三人が大事に扱う物……

 それは大抵、俺か、同じ竜人に関する物な事が多い。


 俺に対して恐縮し謝って来たという事は、その蔓は俺に渡す予定の物だったのだろうか?

 それに、足りないという事は――


「……――もしや、その蔓は私へ渡す物を作る為に必要だったのか?」


 思いついた事を尋ねてみると、俺の隣に居たエルフィーが答えた。


「はい。昨日、主様がそのローブを大変お気に召した様子でしたので、衣服の方も同じく作ろうと皆で相談して決めたのです。

 それで、二人に、その材料の調達を頼んだのですが……」


 なるほど。


 それで、いつもならエルフィー達と一緒に朝食を摂っていた彼らが、今日は居なかったのか。


「そうだったのか……すまない三人とも。

 どうやら私のお前達への理解と配慮が足りなかった様だ」


 リーティアは、俺の服を作る事に気が逸り、そのせいで憤り

 レイディアとバハディアの二人も、その彼女の心情を理解し、同じ思いだったのだろう……

 そして、リーティアを庇うように行動したという事は、彼女の何事にも全力投球で事に当たるその性格を、彼等はしっかりと受け止め許容しているという事だ。


 竜人達の絆は俺が思っている以上に強く、おそらく俺が口を出さずとも、そのまま見守っていれば丸く収まっていたのではないだろうか。


「三人とも立ってくれ。

 お前達の気持ちと仲の良さを知らなかった私が浅はかだった。

 お前達の心遣いは嬉しく思う」


 そう言いながら俺は三人の手を順に取り、立ち上がらせた。


「このローブは確かに気に入ってはいるが、私がそれ以上に好ましいと思っている物は、これを送ってくれたお前達の心だ。

 お前達が私へと向けてくれる気持ちこそが私の一番大切な物なのだ。

 だからお前たちは胸を張ってくれ……

 今、私は皆のおかげで十分に満たされているのだからな!」


 身体的な成長が遅いと感じていた竜人達であったが、それ以外の所はしっかりと成長しているのが感じられて、俺は胸中で安心したのだった。



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