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神体コレクターの守護世界  作者: ジェイス・カサブランカ
第一章 創世編
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第12話 川と森

 待望の朝が来た!


 とりあえず、エルフィーに白い石を拾ってきた場所や、そこに大きな岩がなかったかを確認しなければならないが、まぁ、時間はたくさんある。

 彼女や起きた者達が朝食などの用事を済ませるのを待つとしよう。


 エルフィーは起きて来た竜人達と一緒に、俺の根本で果物や世界樹の葉などを食べているな。

 最近、仲良いね、君たち。


 先日、名前を付けた辺りから竜人のバハディア、レイディア、リーティア、シルティアの4人は世界樹の根本付近で生活する様になり、その少し前から此方に越して来ていたエルフィーの一家と仲良くなっていた。


 暫しの間、そのエルフィー一家と竜人達の朝食風景を眺めていると、世界樹の葉を食べていたエルフィーが、昨夜の事を思い出したらしく


「大樹様。夜に大樹様がまた光りましたが、何かあったのですか?」


 と、尋ねてきた。


 寝ぼけて忘れるているかもと思っていたが覚えていたみたいだ。


 てか、俺がまた光った? どういう事だ?

 以前にも俺が光ったのか?


「私が光ったのか?

 もしや、それに驚いて近くに居た者達も起きてしまったのか?」


「はい、前にも何度か見た時と同じ感じで……ピカーって光りました」


 エルフィーはその様子を再現するように、両手を広げてそう言った。


 その際、彼女が手に持っていた食べかけの世界樹の葉がポーンと飛んで行き、それを「はわわ」と言いながら追いかけて行くエルフィーを眺めながら、俺は先ほどの彼女の答えた事を考えた。


 どうやら、今まで俺が地上に降臨するたびに、この神体となっている世界樹の体が光を発していたらしい。

 そりゃ、地上に降りると毎回全員に注目されるされるわけだ。

 今後は皆を驚かせない様に気を付けよう。


 しかし、このエルフっ子も賢いわりに抜けた所があるな。


 これ以上、食事の邪魔をするのも悪いので、エルフィーに落ち着いて食べる様に言い、俺も彼女らが食べ終わるのをおとなしく待つ事にした。



 皆が食べ終えるのを見計らって、今日の本題を彼女に尋ねる。


「エルフィー、前に私に持ってきた白い石を覚えているか?

 あの石の、もっと大きな物が欲しいのだが、拾ってきた場所を覚えているか?」


 そう聞くと、彼女は「んー」と言いながら悩んで答えた。


「えっと……川の近くで拾いました。

 たしか川の中に、もっと大きな物……岩も有ったと思います」


 川の中?


 ここから少し離れた所にある、あの川か?


「ほう! それはどの位の大きさだったのだ?」


 彼女の答えに希望が見えてきたので、俺が意気込んで問うと、彼女は少し悩んだ後に


「すみません。

 川の中に……水没?しているので、正確な大きさは分からないです。

 水……水面から見えている部分だけでも、私より大きかったかな?」


 と、エルフィーは思い出す様に答える。


 ふむ……水面から覗いている部分だけでもエルフィーより大きいなら、水没している部分も合わせれば、大の大人程度の彫像が作れるかもしれん。


「そうか、分かった。ありがとうエルフィー。

 後で他の者達をそこへ案内してもらう事になると思うので、その時はよろしく頼む」


 彼女にお礼と後の予定を告げると、彼女はなんでだろう?と不思議そうな表情で頷いた。


 うーん、川の中に有るのか。


 正確な大きさが分からないのと、水面から覗いてる部分しか見てないと言ってるという事は、彼女は川の中の岩の場所までは行った事が無いのだろう。


 他に、あの川に詳しそうな者は……


 そういや、ウアがアーウと池や川でイチャつ……水遊びしていた事が有ったな。

 あの2人に聞いてみるか。


 二人を探してみると、少し離れた所で家族と一緒に居るのが見えた。


「ウアよ、私の元まで来なさい」


 ウアを呼ぶと、彼は小走りでやって来て、困惑した表情でこちらを見上げた。


「すまないな、急に呼び出して。

 お前に少し聞きたい事と、手伝ってほしい事が有るのだ。

 少し離れた所にある川、あの川の一番深い所の水深はどの程度なのだ?

 知っている場所ので良いから、手で深さを表してくれ」


 ウアにそう言うと、彼は少し考え込んでから、手を自分の胸より少し下くらいまで持ち上げた。


「なるほど、川の深さは分かった。ありがとう」


 エルフィーの顔くらいまでの水深みたいだ。

 これはやはり、彼女に調べてもらうのは危ないな。


 となると、ウア本人か彼くらいの背丈で、泳げるか水に慣れている者達が必要になりそうだ。


 岩をここまで運ぶ事も考えなければならないし……

 力のある者といえばドワーフが一番に思いつくのだが、彼らは背が低いし、ドワーフは一般的に水を苦手としている種族だった気がする。


 この世界のドワーフ達も同じだろうか?

 エルフィーに聞いてみるか。


「エルフィー、ドワーフの者達は川や水が苦手だったりするか?」


「ドワーフの皆さんですか?

 んーと……たまに池でお水を飲んだり……水浴びもしていたと思います。

 でも、言われてみると川にはあまり近づかないかも?」


 と、微妙な答えだったが、ドワーフには川の中での作業は頼まない方が良さそうだな……

 彼等には陸地での運搬を手伝ってもらうか。


 やはり水中での作業は人間の者の中から、力が有り背の高めの者に頼むか。

 竜人は背丈がエルフィーと大差ないし、エルフは力仕事が苦手そうだし、獣人は記憶の中の飼っていた犬や猫が風呂嫌いだった気がするし苦手かも……

 でも飼ってた犬は散歩中に川にバシャバシャ飛び込んでた気もするな……今はそれはどうでもいいか。


 人選はどうするか……

 ウアに任せた方がいいか?

 彼なら人間達の事には詳しそうだし、8人くらい居ればいいかな?


「ウアよ、エルフィーが見つけた川の中にあるという白い岩を、ここまで持って来て欲しいのだ。

 なので先ずは、その岩を川の岸まで運ぶ為に、人間の中から背丈が高く川に慣れている者、その中で力のある者達を8人ほど選んで集めてくれ。

 そしてエルフィーよ、お前はウアの人集めの手伝いと、その者達への説明と白い岩の場所までの案内を頼む」


 とりあえず二人に、川の中から岩を出す指示を与える事にした。


 おっと、注意点も伝えておかねば。


「岩は岸か水深の浅い所まで運んでくれれば良い。

 其処からは別の者に頼む事にするので無理はしない様に。

 川の水深が深くて溺れそうだったり、岩が大きすぎて駄目そうなら、一旦止めて此処に戻って来なさい。

 エルフィーは岸で皆を見守り、無事に川から岩を運び出し終えるか、何か……

 事故が起きたり、誰かが危険そうだと判断したら私に知らせに来なさい。

 分かったか?」


 注意点と内容を把握したかの確認をすると、二人は真剣な顔つきで頷いた。


「そうか。では、二人とも頼む」


 俺はそう言い、二人を送り出した。


 後は、白い岩が俺の望む大きさで、無事に川から引き上げられる事を祈ろう。



 二人を見送った後、岩を此処まで運ぶ手段と人員も考えねばならない事に気が付いたので、付近に居る他の者達の選別をする事にした。


 岩の有る川は、結界で囲っている中を西から東側の海へ向かって流れており、岩の位置は詳しくは分からないが、一番近い所でも1kmくらい離れている。

 其処から運ぶにしても結構な距離が有るので、力と体力の高い者達を見繕っておかねばならない。


 それと運ぶルートもだ。

 道の無い森の中を大人数で運ぶ事になると思うので、川から此処までの間の地理に詳しい者の先導もいるだろう。


 近くに居る者達のステータスを調べてみると、力の数値STRと持久力のVITが高いのはドワーフの者達の中に多く居り、獣人の中にもそこそこな数が居る事が分かった。

 運搬作業はドワーフと獣人に頼むのが良さそうだな。


 ここまで運んでくるルートはどうするか……


 人間とドワーフは、森の奥まで行くのを見掛けることが少ない。

 獣人は森の方に遊びに行くのをちらほら見かけるが、それでも生活の拠点は俺の体となっている世界樹を中心としている。


 エルフと竜人もここで生活しているし……

 いや、エルフと竜人達は、俺が世界樹に降臨する前は森の中で生活していたな。

 それも飲み水などの確保の為か、川の付近を拠点にしていたはずだ。


 一応、近くにいるエルフィー父のムントに確認してみるか。


「ムントよ。お前は、あの川と此処までの間の森の地理には詳しいか?」


 そう問いかけると、彼は少し悩み「はい」と答えた。


「そうか。では、岩の運搬の時に、岩を運ぶ者達の先導を頼めるか?

 まだ岩の大きさが不明だが、それなりの人数で運ぶ事になる。

 その者達が運びやすい様に、木々の幅が広くて障害物の少ない平坦な通り道がいるのだ」


 ルートの選定なども出来るかと思って聞いたのだが、彼は難しいという表情をして暫く悩み、拙い言葉で答えて来た。


「出来る……事……と……出来ない……事が……ある……ます」


 ふむ、エルフィーの近くに居る事が多いだけあって、他の者よりは言葉を喋れるが、まだ要領が得にくいな。


 たぶん比喩の表現では無く、聞いた内容の前と後の部分に分けて答えたのだと思われる。


 となると……


「答えるのが難しいのなら、はいか、いいえのみで良いので答えてくれ。

 岩を運ぶルートを決めるのが難しいのか?」


 という感じで彼から30分程、詳しく聞き取りをすると、どうやら白い岩の場所は知っていて地理にも詳しいので、エルフィーと協力すれば此処と川との間の案内は可能な様だ。

 だが、岩など大きな物を運ぶのを想定して森の中を把握していないので、ルート選定の判断が難しいとの事だった。


 ならばルートの調査をエルフ達に頼むとするか。

 ちょうどムントと長々と話していたら、興味をもった他のエルフ達も集まって来ている事だし。


「エルフの者達よ。

 先程のムントとの話で言っていた白い岩を運ぶため、川と此処との間の森で、岩を運べそうなルートを皆で調べてきてはくれないか?」


 エルフの皆にそう頼んでみると、皆は真剣な表情で森の方へ小走りで向かっていった。


 エルフィー達もだったが……

 なんだろうね、彼らの真剣さは?

 俺としては、ありがたいから良いんだけども……


 後で、お礼のアレンジ昔話でもしてあげよう。


 さてと、残りは岩を運ぶ者達の選定だな。

 エルフィー達が戻ってくるまでに済ませておくか。

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