クレープ、教室、謎解き2
「あれ?武藤なんでいんの?」
顔をあげると、そこには伊吹がいた。
伊吹は同じクラスの女子で、いわゆるリア充グループに属している。
紙を明るく染め、制服を着崩し、放課後はカラオケだなんだと派手な青春を謳歌していえる。ややもするとDQNになりそうにも見えるが、我が校はそれなりに偏差値が高いこともあってそれなりの位置に落ち着いているようだ。「伊吹こそどうしてここにいるんだ?」こちらも疑問を返す。
「忘れもんだよ。そっちは?」
「これだ。」
僕は予告状を見せた。
「へー。なんだか怪しいね。
そんでそれは?」
伊吹が指さした先にはホットプレートといくつかの食材があった。」
「これは…」
話は1分程さかのぼる。
僕が学校に着くと、校舎内には誰もいなかった。
遠くのグラウンドからは運動部の声が聞こえる。
文化部もなく、グラウンドからも距離のある校舎には誰もいない道理だ。
僕は2ーCの教室を見つけ、中にはいる。
なんの変哲もない教室。
だが、すぐに違和感に気づく。
教室中央の机にホットプレートといくつかの食材と…
「クレープを作れ。このメモ書きが置いてあったというわけだ。」
「なるほどねー」
メモ書きは手紙と同じく新聞の切り抜きを貼り付けて作られていた。
要求はシンプルだった。
唯一わからないのは、なぜクレープを作るのかということだけだった。
「・・・ん?」
クレープは、フランスの北西部、ブルターニュが発祥の料理。
小麦粉に水と塩、牛乳やバター、鶏卵、砂糖などを加え、薄く引き伸ばして焼き上げるのが特徴である。のだが…
「牛乳が足りない。」
見ればそこには全ての食材と調理器具が揃っていたが、唯一牛乳が置いていなかったのである。
「これじゃあクレープは作れないなー。」伊吹が言う
「なぁ武藤。せっかく会ったんだしどっかクレープでも食いにいかね?」
伊吹は少し照れたように笑いながら言った。
(これはまずい・・・)
僕は最初の予告状を思い出した。
指示に従わねば秘密が白日の下に晒される恐れがある。
それはまずい。
なんとしてもクレープは作らねばならないのだ‼
「伊吹、クレープは作られねばならない。なんとしても。なんとしてもだ‼現状、クレープを作るには牛乳が足りない。僕が探してこよう。」
「えっ、いいよクレープなんて。あきらめようよ。」
「いや、それはまずい。」
「伊吹、僕が牛乳を探す間に調理を進めておいてくれ。」僕はそう言い残すと教室を出た…