表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

飛行中2

「まあ、おかげで生物学は飛躍的に進歩したんですがね。いいことです」


姫様は虚空を見つめ、そんな一般論を挙げました。風は強く吹き、姫様の長い髪を弄びました。


はぁ......と姫様はあくびともため息ともとれる吐息をすると、


「少し、眠くなっちゃいました」


そう言ってスメルの腕を借りて寝付こうとします。


「危ないからこんなとこで寝ようとしないでくれよ」


スメルは冷や汗をだらだら流しながら姫様の体を起こそうと重心を傾けようとしますが、


「......すぅ......すぅ」


三日前から睡眠を取っていない姫様は、スメルが返事をする前に寝付いてしまいました。


下手に動くと、この綿毛のような娘が落ちてしまうんじゃないか。


そう想像をしたスメルは、しかたなく身を委ねさせてやりました。

薄い半袖越し伝わってくる柔い肌と高い体温、指先までに絡み付いてくる細く長い髪の毛、漂ってくる汗の臭いと静かな吐息。青空を走る一陣の流れ星の上で、スメルは姫様の頭を優しく撫でました。


これが夢じゃないとしたなら、僕は行方不明という事になるのだろうか。そうすればあんな父でも捜索願いとやらをだしてくれるのだろうか。マスターはすぐ心配してくれるんだろうな。友人は、先生方は、カフェのお客さんはどうだろうか。-- 香子(きょうこ) は、僕を捜してくれるだろうか。


いいかげんこれが現実と気づき始めているスメルは、流れる山々を眺めながら、前世の後顧を気にしていました。


『救世主様』


スメルは姫様から放たれたその言葉を再生しました。


『みんな、救世主の登場だよ!』


矢倉香子(やくらきょうこ)

最初にスメルに祈った人物でした。

部活を救ってほしい。それが香子の願いでした。


ぱすっ。

気がつくと、姫様はスメルの腕から滑り落ちて、頭は膝の上に乗っていました。俗に言うひざまくら

なぜ落ちないのかわからないほど絶妙なバランスです。そんな中でも、よほど疲れていたのでしょう、姫様はすやすやと寝ています。


おいおいおい落ちるって。やばいって。


動揺するスメルをよそに、姫様はどんどん眠りに落ちていきます。

基地にはまだまだ着かないようです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ