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一つ目と付き合った場合、中指を切り落とさなければいけない。

死者を蘇生させる彼女は近所に住むハエの餌だったのだ。のどののびは勝手に治った。そんな僕にぴったりの子が


彼女はおしとやかで照れ屋。でも地面に落ちたストローのごみを、まるで自分が落としたかのようにひろうことができるやさしい子。最近短く切った髪は決意の表れだったが、それにもまして、やわらかい匂いが彼女を包む。


そう、彼女は一つ目。


「利き手ってどっち?」


僕は何気なく彼女に聞いた。


人間の脳は右脳と左脳に分かれている。目もまた視交差で交わり、右目は左脳、左目は右脳を通り、後頭葉へ向かう。彼女の視覚路はどうなっているのか。彼女の返答しだいでは、僕はCTも辞さない。


「右手かな。」


なぜか自信なさげに答える彼女。確かに右左の概念を説明することは難しい。心臓のある方。そういいかけて、僕は気づいた。


臓器が逆につく病気がある。カルタゲーナー症候群だ。この病気の原因は、なんとせん毛の機能異常によるものなのである。せん毛とは簡単に言えば鼻毛のことである。


僕は彼女の鼻の中を覗き込んだ。この手の美少女には鼻毛が省略されることも多い。

案の定、鼻毛は存在しなかった。


鼻の穴はちゃんと二つある。胸もちゃんと大きな果実がふたつ。僕は鈍器を手から離した。おっぱいがいっぱいあったら殺そうとしていたのだ。


彼女の体のどこかにおっぱいがあっては困ると、僕が体中調べた結果たどり着いた結論はこうだった。


「顔面形成の異常ではないか。」


彼女は正真正銘の一つ目族というものなのだろう。


古代からサイクロプスの伝説は全世界で語り継がれてきた。日本では一つ目小僧、一本だたらなどだ。海外ではサイクロプスは鍛冶技術を持つ単眼の巨人である。


一つ目小僧は先天性奇形のことかなと僕は考える。小僧なのがその証拠だ。ではいっぽんだたらは?一本だたらといえばもう一つ特徴的な所見がる。足が一本しなないおいうことだ。ではだたらとは?これは昔の日本の製鉄所である「たたら」からきたのだと聞いたことがある。つまり一本だたらとは製鉄で目と足を失った人たちのことをさすのではないかと。そういえばサイクロプスも鍛冶屋だった。


「武器つくれる?」


僕は鈍器を見せながらたずねた。弱気な彼女からしたら、イエスと答えなければそのハンマで殴られると勘違いしてしまうことだろう。


「つくってみる。」


こうして彼女の武器作りはスタートした。


そして終わった。彼女は死んだからだ。


一つ目がどれほど生態活動に寄与しているのか、ただのにんげんである僕には想像できなかったのである。


肥大した一つ目はもはや胸腺の役割もになっていた。そこには神経細胞だけではなくリンパ球も集っていたのだ。


そこに異物が入るとどうなると思う?


すさまじい炎症反応が彼女の脳と僕の中指を襲った。


彼女の作った武器は、切るのに適していた。


「うおおおーん。マンカス食べれず指失いし僕は、まるであばずれじゃないか!」

作った武器がしゃべった。武器も女だったのだ。僕も武器だったのか?


否、しゃべったかのように見えただけだ武器は。武器の口パクに合わせ、僕がアフターレコーディングしたのだから。


え!?武器が口をパクパクと!?


続く



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