能力者将棋・定跡(ドッペルゲンガ)((ゲボ))編
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「攻めて来るのは平行宇宙の私達だと!?」【場操作】が声を荒らげるのは久しぶりだ。彼女の能力は場を操る。場とは力や波の伝わっていくもののことである。音なら空気が場に当たる。場を操るということは即ち全ての力を操るということだった。
「そうだいね。私達って強いよねえ」【声を聴くもの】が当たりを見渡しながらため息をついた。彼女の能力は人の持つ意識の壁をなくすことであり、マインドのコントロールとスキャンとテレパスどれも可能だ。また、高次元かみの声をも聞くことができる。メタ的存在である。
「ふん。お前らとやりあうなんぞ、いつも通りだ。」そう佇むのは【無敵】であった。彼はどんな事象でも運良く死なない。
「あーあ、自殺しようかしら。むこうの私も手伝ってくれるかな。」そう嘯くのは【エントロピー操作】だ。エントロピーによるものは濃度操作は勿論、時間の流れ、進化なんかもそうである。つまりほとんどの物理現象は彼女の前では崩壊する。
「逃げちゃおうかにゃあ。」【瞬間移動】である。彼女は自分だけでなく他人も物も自由に移動させる。
「………」無言で男のことを考えるのは【重力子使い】だ。彼女の重力子は重力だけでなく時空まで捻じ曲げる。
「なぜ攻めてくる?」【場操作】が【聴くもの】に聞いた。
「私達は誰かがタイムマシンを作ったせいでドーナツ状に繋がった時空軸で何周も繰り返すうちに進化した、時空を超えることのできる能力者達。私達の能力は何処からやってくるかというと、突き破った平行宇宙からの重力子なの。そうすると向う側の重力子がこちらに流れてきてるわけだから、向こうは大変じゃない。だから攻めてくる。」
「ふん。なるほど、策を考えよう!」
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「‥‥ということで、こう攻めるのです。」
「ふん。うまく行くかどうか。」
「あーあ、大切な役じゃない。自殺しようかしら。」
「にゃあ。」
「皆乗り気のようだな。」
全く同じ物同士の戦いは将棋やチェスを思い浮かべる。違いは先手か後手か。今回、主導権を握れる先手をもつのは向こう側の世界。しかし、向こう側はジワジワと重力子が減っていく。
両陣営にとってキーとなるのはやはり【聴くもの】の存在である。マインドコントロールとメタ的視点はそれだけ強力だからだ。いわゆる王将のポジションである。まず最初に【聴くもの】を潰しに行かなくてはならない。聴くものと相性がいいのは時間系の能力者、【瞬間移動】、【エントロピー】、【重力子使い】だ。ただし、【エントロピー】は味方の能力まで邪魔してしまう恐れがある。
防御に適するのは【場操作】と【エントロピー】である。他の能力を打ち消すことができるからだ。
普通なら守る側は【場操作】と【聴くもの】を一緒に配置する。これにより、守りと場の展開による広範囲へのマインドコントロールが可能になる。攻守に優れた構えだ。
攻める側は当然、この構えは読んでいる。【場操作】には【場操作】か【エントロピー】をぶつける。これで打ち消しあったところで【瞬間移動】が【聴くもの】をとる。
やはり、攻める方が守るより有利なのである。よって、守る側は切り札を持っていなければならない。
【聴くもの】マインドコントロール
【場操作】全ての力を支配する
【エントロピー】物理現象が崩壊する
【瞬間移動】テレポーテーター
【無敵】幸運による不死
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「この世界はどこか懐かしいな。」
有月は煙草を食べながら言った。
「煙草、食べるんですか?」
リフレチウスは当然の疑問を口にした。
「なに、煙草の一本ぐらい食べたぐらいじゃ人は死なない。吐き気がするだけだ。」
有月はうぼぼぼぼと嘔吐した。
「気持ち悪い・・・」
リフレチウスももらいゲロしそうになる。
「ゲロをゲボっていうの、可愛いよね。」
「ゲボ自体は可愛くないです。キモイです。」
「人間はゲボすると胃液が減るからアルカリ性に傾くんだって。知ってた?」
「代謝性アルカローシスのことですか。人が激しい運動をしたときに吐くのは、無酸素運動によってCO2や乳酸がたまり体が酸性になったのを補正するためだそうですね。あと、嘔吐下痢ってワンセットで語られますけど、嘔吐はアルカリ、下痢は酸性に傾くんですよね。」
「はいはい。リフレチウスは賢いね。」
「わーい。褒められた。」
この間に、有月は10万回嘔吐していた。風呂に22秒に一回のペースで入っても間に合わない。驚異のペースだ。
このペースなら、嘔吐で空を飛ぶことだって可能である。
【有月】嘔吐で空を飛ぶ、変な女性に好かれる、強烈な思い込み
【リフレチウス】物知り、死者蘇生、前髪鰹節、人肉見抜き
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この世界の隣には、同じように10万回嘔吐している人物がいた。有月である。リフレチウスも隣にいた。
ドッペルゲンガーを見たものは死ぬという。
もう一人自分となにもかも同じ人が身近にいたらどうなるだろうと思ったことはないだろうか?
もしいたら、そいつもきっと「もう一人自分がいたらなあ」と思っているので、自分が無限に生じることになる。
つまり、周りの人はみんな自分なのだ。
これはインド哲学のいわゆるアーリマンである。
有月が女になった有月子ちゃんと有月君が鉢合わせたらどうなるだろう。お互いは相手が自分と同じことは、当然知らない。
有月子ちゃんは有月君を尊敬する。
しかし、有月子ちゃんは自分以外は所詮他人であると思っている。他人なのだから自分のことなどわかってはもらえない。だから相手になるべくいいように思われようと行動していた。本心は誰にもわからないのだから、人前の行動ですべてを判断されるわけなのだ。心の中がどうあれ人前で演じた通りに判断されるのである。
しかし、有月君にだけは心の中も見通されてしまう。
よく、人の心を読むエスパーがいるが、可能性のある感情を読んでいけば、だいたい絞れるはずなのである。(いろいろな可能性の考慮が必要ではあるが)
つまり、有月君にとっては、周りの人の心の中はみんな自分の推定内なので、周りは自分だということになるのだ(心が読めるという点で)。
勿論、実際は有月君の推定内のことを考えている人はそれほどいないだろう。
しかし、シュレディンガーの猫のように他人と触れ合って気持ちを理解しなければ、みんな有月君の推定内なのである。
人との深い付き合いを避け続ければ、有月君はテレパスに等しいのである。
ところで、ゲームなどの仮想現実がリアルになってきて、仮想現実の中でさらに仮想現実ができたなら、自分はどれだったかわからなくなるかもしれない。
食べながらわからなくなりそうである。特に自分の人肉を。
今日わかったこと
・「私達は誰かがタイムマシンを作ったせいでドーナツ状に繋がった時空軸で何周も繰り返すうちに進化した、時空を超えることのできる能力者達。私達の能力は何処からやってくるかというと、突き破った平行宇宙からの重力子なの。そうすると向う側の重力子がこちらに流れてきてるわけだから、向こうは大変じゃない。だから攻めてくる。」
・能力
【聴くもの】マインドコントロール
【場操作】全ての力を支配する
【エントロピー】物理現象が崩壊する
【瞬間移動】テレポーテーター
【無敵】幸運による不死
【有月】嘔吐で空を飛ぶ、変な女性に好かれる、強烈な思い込み
【リフレチウス】物知り、死者蘇生、前髪鰹節、人肉見抜き
・人が激しい運動をしたときに吐くのは、無酸素運動によってCO2や乳酸がたまり体が酸性になったのを補正するため。嘔吐はアルカリ、下痢は酸性に傾く。




