理科室の噂
※9/21訂正
最近、僕の中学校で殺人事件が起きた――
殺人事件後一週間休校となってから今日は久々の登校日。教室に入ると、誰もがあの殺人事件の事を話している。そんな様子を席に座りながら眺めていたら、友人が僕の隣に座った。
「まだ先生を殺した犯人が捕まってないんだって」
友人の言う通りまだあの殺人事件の犯人は捕まっていない……
「俺の親父の知り合いが警察で働いててさぁ、その人が言うには不可解な事が多すぎて全然捜査が進んでないらしいよ」
「不可解な事って?」
「しらねぇ~、そこまで詳しくは教えてくれなかった。あっ! 人体模型が血塗れだったらしいよ」
「どこの学校の怪談だよ!」
友人に軽くツッコミをして、チャイムが鳴る。
学校では先生達もあの殺人事件についてはあまり触れず、「帰宅する時は必ず二人以上で帰るように」とHRで注意を受け、皆自宅に帰宅した。
久々の登校から1ヶ月するとある噂が学校を賑わせていた。
『理科室の人体模型が先生を殺した』
噂が回れば回るほど、どんどん悪化していく――
深夜2時を回ると理科室の人体模型が動き出すだの、太陽が沈むと人体模型が喋りだすだの……本当にくだらないのだが、好奇心旺盛な友人は違った。
「今日の深夜、噂を確かめる為に学校に忍び込まねぇ?」
「嫌だよ、めんどくさい」
「お前も気になんねぇ? 学校の噂」
この後、押しの弱い僕は友人の誘いを断れず渋々了承することになった。
そして深夜――
「深夜の学校ってテンション上がるよな!」
たしかに友人が言っているように僕も中学男子のはしくれ、少しテンションが上がっていた。
そうして僕達二人はいつも鍵が開いている裏口から学校に侵入した。
学校の外は外灯が少しあり多少周りの景色が見えていたが、深夜の学校は日本中で流行っている節電の影響を受けて豆電球すらついていない。なので校舎の中は月明かりでぼんやりと見える程度だ。僕と友人は懐中電灯のスイッチをオンにして学校の廊下に光を射しながら廊下を進んでいった。
しばらく歩いて、やっと目的の場所に着いた。
理科室の扉には『立ち入り禁止』と黒文字で書かれている白い画用紙が貼られていた。すると友人がポケットから鍵を取り出した。
「今日の放課後に職員室から借りてきた、開けるぞ」
「借りてきたって……盗んできたの間違いだろ!」
僕のツッコミを無視して、友人が立ち入り禁止の扉を開けた。理科室を懐中電灯で灯すとそこにはよく刑事ドラマとかで見る死体の跡にそって置かれている白い紐や証拠品の場所を指す番号が書いてある看板などは無く、綺麗に掃除されていた理科室であった。
「おいっ! 人体模型あったぞ!」
友人が人体模型に近づいていく。そこには以前からある理科室の人体模型であった。友人は懐中電灯の光を人体模型の顔に当てながら、動かない人体模型に対して
「つまんね~な! 動けよ!」
「もういいだろ、帰ろうぜ」
僕達は踵を返して理科室を出ようとした時、友人が隣にいない事に気がつき後ろに振り向いて懐中電灯の光を友人の足からゆっくりと上にあげるとそこには目が虚ろな友人が体を痙攣させながら立っていた。光の先を友人から少しずらすと友人の首に噛みついている人体模型がいた……
足が竦んで僕は一歩も動く事が出来なくて、友人が力尽きていく姿を見ることしか出来なかった。人体模型はまるで食事を楽しんでいるように友人のいろんな部分の肉を食べている。
まるで“自分に足りない部分”を補うかのように
食事に満足したのか、友人を食べ終えた人体模型は自分の元にあった場所に戻り動かなくなった。
全然動けなかった僕の足はやっと動いたかと思うと一気にお腹にあるものを全て吐き出した。なんとか落ち着いた僕は懐中電灯の光に頼りながら廊下を走り出した――
あの後警察に色々と事情聴取されたのだが、僕がいくら人体模型が人を食べたって言っても誰も信じてくれなかった。
あの日からしばらく経ったが、未だに理科室には親友を殺した人体模型が置かれている。
あなたの学校にも自分に足りない部分を補おうとしている彼がいるかもしれないですね……