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ダンジョン。
異界より召喚されし魔王が作られた魔物を湧く迷宮。
本来は人々を殺すために存在するものだが、時間につれて、その欠陥を露わにした。
ダンジョンは、マナの流れに添って、魔物を召喚する。
つまり、正常なダンジョンならば、階層を問わず、
均等な力と数の魔物が召喚される。
それも全て、マナコアによって支えられる仕組み。
ダンジョンにはコアが存在する。それも一つだけではない。
もちろん、中枢部はより多くのマナを外部から取り込んで、ダンジョンの形を保ってるけど。
魔物の召喚(製造)と強化は別腹、中枢コアは、雑多な魔物については、干渉できない。
魔物召喚のマナを賄うため、魔王はダンジョンのあらゆる場所に、
無数の小さいマナコアを配置した。肉眼では見えず、探知には引っかからないレベルのマナコア
傍から見ればマナの集合体のように感じられちゃうほど膨大な数。
壁も、地面も、魔物の死骸も、空気の中でさえマナに満ちあふれてる。
ダンジョンの中では、マナ結合と呼ばれる現象が発生する確率は、外界より一万倍も多く。
大昔の人間はマナにはそこそこ耐性があるけど、踏み入っただけでも死ぬ。
たとえ耐性が持ってしても、秒単位でしかは潜れず、潜ろうとする奴は、
自殺者だけだがーーーー
これはざっと二千年前の話。遠いかも知れないけど、
遺伝子レベルだと、ほぼ誤差程度。
でも今は入っても、死なない
それこそダンジョンと呼ばれるものの欠陥するどころ
ーーーーダンジョンには、扉がありません。
ダンジョンが作られて二千年、作った本人は封印され、
マナコアをダンジョンに閉じ込める人がいないし、
魔物の数と召喚頻度をコントロールものもいない、
一番浅い階層のマナコアは、時間と共に、空気を介して外界へ流れた。
川へ、海へ、土へ、空へ、
分解されず、胞子のように飛んでいく。
二千年が経った今、ダンジョンは、ようやく深層に踏み入っても、
長時間滞在されない限り、大事には至らないほどのマナ濃度になった。
毒ではなくなったダンジョンは瞬く間に宝の宮殿と化し、
人々は金、名誉を求め、ダンジョンを探索した。
百年が経っても、未だに踏破は難しく、それ故に人々の好奇心を刺激した。
ここ迷宮都市アルギナに、
名を馳せようと努力してる一人の少女が、
今日もギルドでウェートレスとして、
頑張ってテーブルの汚れを拭き落としている。
少し暗い金髪に、ぴかぴかと光る翡翠の瞳。
名前はコルット、十三歳にして冒険者になった勇敢なる少女である。
なぜ冒険者がウェートレスに?
それは当然、彼女は駆け出しで、冒険者、それに加えて、力もなければ、金も少ない。
当然装備も揃わず、仲間もいまだなし。
この状態を打破すべく、彼女はアルバイトに勤しんでいたのです。
金がなければ何もできない。
朝早くギルドへきて掃除をしてから、クエストの紙を一枚ずつ確認、
新しいクエストをクエストボードに貼るだけ。
朝はそれなりに余裕がある。
忙しいのは主に夜、みんなここで酒を飲むから、掃除も大変だけど、
一番ひどいのがセクハラ。
あ、"コルット"にセクハラではない。
彼らはその更に上にいる変態野郎だから。
ここでギルドーーー【夜明けの明星】のマスターについて紹介しよう。
コルットが働いててるこのギルドのマスター。
名前はアオイ·ミナモト、二十五歳にして親のギルドを継いだ"男性"
ーーーのはずだが
赤みがかった髪の毛はちょうど肩のラインに届き、
優しい黒い眼は濡れたように艶やかで、
鼻筋は通っていて唇は薄く、
ほんのりと桜色に染まったその口元は、いつも微笑みを帯び、
背は男としてはかなり小さく、
未成年のコルットより少し高い程度、
繊細な皮膚は白く柔らかく、けど病的に感じることはなく、ただただ美しい。
それに加えて声も中性よりの女の子の声で、
時々怒った発する低音ですら女の範疇にある。
常にいい匂いが発しており、胸はぺったんこで(男性に胸があるわけないが)
腰回りは細く、特にヒップを強調する体つきである。
これが、男である。
二十五歳の成人男性、これだけは間違いなく、
コルットは一度間違いって、冒険者に酒を注がれて、
酔っ払ったマスターを自分の部屋へ連れていった。
酒か汗のせいか、服がびしょ濡れてて、
コルットはマスターが男であることを忘れ、そのまま服を脱がした。
下半身を脱ぎ、あらびっくり、ぽよよんと小さいものがぶら下がっていた。
ほんとに男の人だと、コルットはショックを受けた。
しかし、ショックの他に、好奇心が彼女の目をアソコにフォーカスした。
ごくりっ
緊張したコルットはついついあそこを自らの手で、
軽く優しく握り、ロマンス小説に書いた通りに、上下運動をした、
するとマスターの艶のある声がこちら
『そこっ、だめぇ、れす、、、うっ、、、っん、、、はっはっ、、 やめ、て、、くだ、さい……』
あまりの色気にコルットの鼻血魔法が炸裂し、翌日血塗れのギルドマスターに謝った。
ゲロ防止もため、先んじてシートをベッドの上に被ったのが唯一の救い。
じゃなきゃせっかくのお給料も溶かしてしまう。
察しの良い人はもうわかったかもしれないが、
色気のあるギルドマスターこそ疲れ果てた冒険者求め探した癒しそのものだった。
故にここ【夜明けの明星】はこのアルギニにおける一番メジャーなギルドになった、
その全てが、男の娘のギルドマスターに起因する。
当然、アオイギルマスと比べれば、
コルットという小娘一人は到底、オオカミが如く冒険者の欲情を唆れまい。
つまり、そのひどいセクハラの対象は、
他でもない、アオイさんである。
このギルドで長期契約した冒険者も、スタッフも、
男女問わず、皆とにかくマスターにセクハラをする。
尻を揉み、胸を揉み、ナンパ、頬にキス、一緒に酒を飲みたいと懇願し、
はたまた結婚を申し出る変態野郎もいた。
『お気持ちは嬉しいですけど、ボクは男ですから、
たとえ結婚しても、、子供は産めないのですよ?
もう、落ち込まないでください、、、、僕のことが好きなら、
幾らでも話しは付き合いますから、
今後ともご贔屓に、え?酒ですか?
、、、少しなら、、いいよ?』
もしただの女の子なら、単なるリップサービスとして、脈なしと判断され、
そこで試合終了だろう。
でも変態たちはその反応に大いに興奮した。
毎日のよう群がるむさくるしい野郎どもは来る日も来る日もマスターにプロポーズしてくる。
少ないときは十人、一番多いときは三百人もある。
今やファンクラブだけで万を下らない人数を有してる。
そのためギルドマスターのなかでも特例中の特例、
貴族でさえマスターを見下せないのです。
というか、見下すなら、普通に死にます。物理的に。
実際、ある子爵が彼の容姿をバカにしたが、
曰くオカマ、 曰く女装変態(男装は受けないので、コルットと同じウェートレス服)。
尻を触ったが、男の尻を触っても欲情しないよ、と本人の前でシコり始めた。
矛盾だらけで、誰が見てもたぶんコイツもギルマスが好きだろうが、
しかし、見下してる。
当のギルドマスターもそんなに気にしてなかったが、
シコった翌日、その子爵の一家全員が殺されて、無残な姿で城壁に吊られた。
ギルドマスターは落ち込んだ。
自分のせいだと泣いた。
彼を容疑者と疑うものはいないし、できない。
衛兵も領主もギルマスの常連客だからだ。
なまじ人柄が好過ぎるせいで、他人の心もいい人だと思ってるアオイさん。
だが冒険者たち、コルットを含めて、誰もがこう思ってる。
『『あの野郎、簡単に死にやがって、それで済ませるわけがないだろう』』
狂信者が集うギルド、それが【夜明けの明星】。
マスターへのセクハラは別にいい。
止められるものじゃないが、
度が過ぎるものは殺される為に、コルットは彼らを止める役割を強いられた。
じゃないとマスター病んでしまう。
もし人前に出ないようになったら、
ギルドは潰され、彼女仕事もクビになる。
無心にクエストを手に取り、一目通って、変なものは捨て、普通のものなら貼る。
この作業を続けてやや7カ月、そのスピードは常人の反射神経を遥かに超え、もはやこの娘を無くしてはギルドが回らないほどだ。
何せ雑多なクエストが多すぎて、並みの受け付け嬢が顔真っ青になるほどの膨大な量。
クエスト1
『物探し:
とあるギルドのマスターのパンツを手に入れたい
報酬:未使用は50万リル、
使用済みは500万リル
直脱ぎの場合は一億リル 諸君の健闘を祈る』
はいぽいっと。
クエスト2
『捜索依頼:
無くした妻を探して欲しい、ショットの赤い髪にぺったんこ、後ちんちーー』
はいゴミ捨てにぽいっと
クエスト3
『物探し:
夜明けの明星のギルドマスターのブラジャーがほしい
報酬:30億リル』
着てるわけないでしょボケがーー!!!
と、コルットはツッコミながらぽい捨て
実際はコルットは持っていた。
ギルドマスターは女装出勤のため、服も当然コルットが用意する。そして、コルットはマスターの下着を毎日こっそり変えてる。
もし少しでもふしだらな心でもあれば、30億リルもコルットの手のもの、だが、
良心を売れても、マスターのブラジャーは売らない。それがコルットのプライドである。
こういうあからさまに通れないクエストが、毎日山ほど届くもんだから、コルットはだんだんと表情が死んでた。
うん?これは、、、?
手に持つ恐らく今朝届いたクエストを見て、コルットは目を開く。
ダンジョンのクエスト。
珍しい内容ではない、未知のエリアが発見され、それの探索任務。
あり触れたクエスト、
大体はしょぼい報酬で、
なおかつ未知故に危険度も知らない。
が、コルットは興味を持った。
何故なら、
第一階層の探索依頼だから、
つまり、どれだけ強いモンスターでも、マナの大半が失われた状態、危険性は低いと断じられる。
コルットはボードを見て、空きがある。
昨日レオパルト様が辺境の依頼に出たから、こういう風変わりのクエストを受ける人は恐らくいない。
コルットは困った末に、ボードに貼った。
ちょうどいい、先月の給料でダガーを買ったし、初めてのクエストにするか。
コルットはそう思って、貼った瞬間、それを千切った。
店員が店内のものを漁る如く、
普通ならやっちゃいけないことだが、既に実質上、コルットがギルマスーーー事務、雑務、トラブル解決、引退する冒険者の斡旋、魔物(人間)の死体処理etc.ーーーなので、文句を言う奴は現れない。
これが十三歳だから冒険者の諸君からは尊敬されている。
さて、パーティを作るか、強い奴は駄目だし、かと言って女性だらけは苗床が落ちだし、、、コルットは悩んだ末、先送りにした。
今日中パーティが集まらないなら一旦のクエストを放棄して、レオパルト様を待つ。
朝日が窓ガラスからギルドの受け付け前に降り注ぎ、コルットはギルドを長めながら、ギルドをオープンした。
ちなみに、ギルマスは今寝てます、酒に飲まされて、"コルット"の部屋でおねんねしてます。
詳しくは語れないけど、すでに美味しく頂かれたのです
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