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3


平和な一年の末、冬の下旬に、事件が起きた。



そのときは僕らはベッドの上でだらだらと寝ていた。

外は子供たちが遊んでいて、凄く煩かった。


ぽつりと、唐突に外の声が止んだ

違和感を感じた瞬間、女児の悲鳴が聞こえた

アカは体を起こし、部屋から出ていった。

僕も何か何だかわからなくて、急いで服をきて部屋を出た。


外を見てみたら、子供の一人が地面に倒れてて、地面を赤く染まってた。

首が取れてた。見覚えのある頭だ。

見舞いにきたこともあれば、花もプレゼントされた。


可愛らしい子供、僕よりも年下の少年だった。

僕はショックのあまり、腰が抜けた。

あの子の頭をまじまじと見る。

吐き気がしてきた。


その死体にかぶりついたのは、

一匹のネコ科に類する生物。

ライオンの頭、蛇の尻尾。

昔ゲームで見たキメラとそっくり。


ぼうっとしてると、アカの姿があった。

ゆっくりと、アカはキメラに近づく。

キメラはアカを見て、口を止まる。


「見るな、帰れ」

アカは僕に言う。

立てない、動けない、何も考えずに、僕は這うように帰ろうとする。


獣の唸り声が聞こえる、原始的な恐怖が身を襲う。

でもそれよりも、アカの死を連想させた。

惨たらしく、あの男の子のように、

もしかしてアカも噛み殺されるの?


きっと怖い思いしてる、

僕だけこうやって情けないままじゃ、駄目だ


嗚咽しながら、僕はふらふらと立ち上がる、座ったところに靄が上がってきた。

おしっこ漏らした。この時は気づかなかった。

前へ歩く、せめてアカを逃がせねばと、本気でそう思った。

体の震えが止まらない。

僕はノロマだから、

せめて僕を使ってアカを活かせるのなら、

足止めできるなら、、、


それでーーー


しかしいざアカの前に立とうとした時、

不思議な現象を目にした。


キメラは、何かに怯えてる。

一目で分かるほどに、キメラは、何かに怯えてる。

唸り声が止まった、震えながら、こちらを睨んでくる。


僕に怯えて、る?

いや、違う。僕じゃない。


「逃げろ、二度言わない」


「アカ ニゲて ボク オトリ!」

僕がそう言うと、キメラがますます身を震わせた。


「いらない」

アカは冷たくそう言って、また一歩、キメラに近づく。

僕は怖くて、でも死なせない一心で、アカの腕を掴んで引き止めようとした。

アカが殺されると思った、怯える隙に逃げればいいと思った


「アカ ニ ニゲ ル!」

僕は叫んだ。力いっぱい叫んだ。


アカの顔を覗き込む。


笑顔だ。初めて見る、笑顔。

彼は片腕で、僕を抱きしめた。

「イオリ、いらない、おれは大丈夫」と一言だけ言い終わって、

アカは僕を突き飛ばした。


地面に這いながら、首をあげる

じりじり詰め寄るアカと背を向けて逃げようとするキメラ


キメラは逃げようとした、でも動かなかった。


動けない、のか?


アカは腕を振り上げ、軽くキメラを触れた。


キメラは鳴いた、まるで、そう、断末魔のような声を出した。


長い長い断末魔がみんなの鼓膜を壊そうとした。

ぽつんっと、断末魔が消えた。


それと同時に、キメラもどっかに消えた。



アカは何事もなかったように、振り返った。

「イオリ 」また僕に名前を呼んだ


僕は立ち上がった。体がアツかった。

それから、僕は、


アカを抱きしめた、体中を確認し、混乱状態に陥った。


「ア、アアアカ、ヘイキ?」


「ああ、大丈夫だ」


キメラが消滅し、

残ったのは食い散らかされたあの子の死体だけ


追憶するたび、あの死体の有り様を、

同情とはまったく別種のモノを抱く


僕は、アレを自分だと思い込んだ


死体を見てパニックするのは、普通の人にとっては当たり前。

けど大抵は耐え切れるのだ、所詮は他人だと切り捨てられちゃう。

でも僕はなかなかそこから抜け出せなかった。



一ヶ月が経ち、アカは色々と調べられーーーることはなかった。


村はアルギナの冒険者ギルドにキメラの出現の原因の調査を依頼した。


アカの魔法より、キメラがこんな辺鄙な村に出現した事実の方がよっほど大事だった。


危険に直面して覚醒した平民が悪のマモノを倒すとか、

こんな胸がどきどきする展開、しかしちっとも珍しくない。

単に魔法が使えたくらいなら、誰も気に留めない


実際、孤児院でも、アカの力より、僕の方が心配された。

トラウマ?ptsd?錯乱?どっちでもいいか


ともかく死(人の首)を目撃したためか、

僕はそういう危うい状態に陥ってしまった



一ヶ月もの間、胃が痙攣し出して、食っても吐く食っても吐いてしまう

それでもシスターは僕を活かそうとして、魔法を施した食い物を僕に与え続けた

意味はない。善意かもしれんが、吐くたびに、体が衰弱する


アカは団子を使って、僕を延命しているが、限界がきた

遂に団子を食っても栄養が足らなくなり、僕は仮死状態になった

呼吸がままならない、意識もなく、

ただ魔力とも言えるものが、僕の心臓を動かし続けた


その状態になる前は、アカも確かにシスターの『治療』に効果があることを期待していた

僕の病気は、彼のせいだと感じたようだ

だから他人に縋った、それが間違いだと気づいて、ようやくシスターの『治療』を止めた


それから誰にも合わせないまま、砕けた団子を僕の口に積み込んだ

不思議にも、それで回復に成功した


当然、無理やりにご飯を食べさせられて、

吐きつづけるという記憶はそのまま残ってる。

結果、僕は極度の人見知りになってしまった。

具体的な症状として、人を見るたび吐いてしまうんだ

元々アカ以外の人とはあんまり関わりが持たなかったとはいえ、

もはや教会の中にも足を踏みだせなくなった。

アカは大丈夫だ。アカだけは大丈夫だ。

アカしかいないから、僕には彼の他にいない。


恐怖という感情が植え付けられた。

死に対してではない。

アカ以外の人類に対してだ。たとえ善意だろうが何だろうが、顔を見た途端パニックさ。


僕は半ば廃人となった。

孤児院のご飯は見ただけでゾッとし、吐き気が催し、食べ物として見なくなった。

団子が食えるから問題ない。


とまあ、すっかり引きこもって駄目になって、半年が過ぎた。

半年間、村に来た冒険者は一人もいない

それも正しい、キメラクラスの魔物の調査、労力を費やしても、大した報酬は得られない。

異世界からのチーレム野郎じゃなきゃ誰も望まないだろう


僕の場合は、暇を持て余して、言語について勉強し、

今まで言葉を理解しないのは、何故だろうってくらいに、

半年でほぼ全てを応用できるようになった。


覚えるのが楽しみだったけど、だんだんとつまらなくなって、


アカに頼んでシスターの所から盗んで、

娯楽の問題も解決、部屋から出ずに済んだ。


引きこもり生活の始まり始まりーーー



なんちゃって


実際はかなり危ない状態だった

常日頃から、

ああアカ、離れないで、

一緒にいて、■(まだ死を理解できていない)なないで、



とまあ、見事に病んだのです


メンタル全然治ってないし、むしろ悪化した


暮らしていくうちに、だんだん孤児院の人間を忘れ、


ただアカのすべてを脳に焼きついた。

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