表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

2

孤児院にきて一年、

僕は退屈な日々を送った。

テレビもなければ本も読めない、そもそも言葉通じないから、孤独である。

そんな孤独の中、僕の癒しはアカのお腹だった


すっかり空気が凍え、水を飲むことも腹が冷える頃

僕はいつものように目を覚ます。手を布団(てんごく)の外へ。

退避!ーー

スッと手を戻す


目の前はアカのお腹。体を丸めてアカにべったり。

頬をお腹にスリスリし、いったん欲を満たす。

やっぱりこのお腹だ、このお腹がいい

温かくて気持ちいい。

「イオリ?」

寝ぼけた声で、アカも顔を布団の中に入れた

「オハヨウ」


「あ、おはよう」


寒い季節では、孤児院の子供はこうして同じベッドに入り、互いを暖める。

大好きな友達と一緒に寝るのが原則。

雑魚寝という選択肢もあるが、普通に嫌。

アカと寝たほうが安心


だから体を洗うときも、寝るときも、トイレだってずっと一緒

べったりすぎたのか、最近のアカの僕へ扱いがなんか雑だ。


目を閉じて、頬をアカのお腹をスリスリ、そしたらアカの手が僕の背中に回り込んだ。

脇にクリティカルヒット、僕は必死に笑えをこらえて、

彼もまた攻撃を強める。

ようやく耐え切れず、僕は体を起こし、布団が吹っ飛んだ。


寒い空気が一気に僕らを包んだ


「おい!」

アカが怒った顔で僕脇の上を掴んだ、力が抜ける

何故か胸辺りが掴まれると力が抜けちゃう

アカのお腹の上に倒れた僕は、それでもかと口答えした

「アカ ワルイ ボク ワルク ナイ」


頬を膨らませ、冷たい空気が皮膚を撫でる。

鼻が刺激されて、体がビクッとした

「へくしょん」

くしゃみをした


「なっ」

アカは慌てて地面に落ちた布団を元に戻して、僕の上にかけた。


そのまま彼も布団の中に潜って、アカは僕を抱きしめた。

僕はまた体を丸め、鼻の先に彼の顔がいる。吐息が暖かい。


「サムイ」

僕はそう呟いて、もっと体を縮めた。

アカは僕と同じ六歳だが、僕なんかよりは遥かにでかい。

夜と朝一番は特に気温が低い、僕らは、いつもこうして抱きしめ合う。

言っちゃ悪いけど、堕ちてる気がする、この辺りから既に


数分がたち、また寝ちゃいそうになった僕に、

アカは僕の耳元で述べる。


「メシ」


一瞬躊躇った。

この寒さで外を出るのが嫌だから。


「アカ 持ッテ、キテ?」

甘える口調。


「アホ」


あしらわれた、ぐぬぬ


「一緒に、いこう」

アカは僕の頭を撫でた

こうされると、僕は何でも聞くようになる。


今でもそうだが、

アカはこれ(なでる)を「調教の賜物」だと言ってたが、

最初から調教など存在しないと思う

勝手に調教済みである。


布団から首を出して、少しずつ上半身も空気に晒す。

寒さに体を慣らす。布団の中から出て、尿意が湧いた


布団から抜け出し、さささっとズボンを降ろして

部屋の隅の壺に腰掛け

ーーーシャーと勢いよく出てきた。


すっきりすると、より空気が寒く感じてくる。

そのまま立ち上がって、股あたりがじめじめする。


前はちんちんがあるから結構便利だったが、

女の子の体はかなりめんどい。紙が忘れたし。

アカに視線を向ける。

「はあ、、、」

アカが近づいてきて、服のポケットからティッシュを一枚とって、体を屈み、

僕の股辺りを念入りに拭いてくれた。


おしっこにティッシュが必要ということも、僕はまだ慣れてない。

僕が立ち去ると、アカはティッシュを壺の中に捨て、ションベンし始める。

ションベンが終わると、アカは壺を抱きかかえ、部屋から出た。

中身を近くの茂みの中に捨てにいったのだ。

窓越しに、アカを見つめながら吐息を吐く、

白い息が窓を覆い、アカが見えなくなった。


アカは部屋に戻り、壺を戻の位置に置いて、僕の手を握る。

一緒に部屋へ出た。


綺麗なガラスが幾つもあるが、殆どが石の建造物。

【教会】である。あそこでご飯を食う。

夏は冷たく、冬は寒くない場所。

この時の僕には、はっきりと宗教という概念は知らない。

ただみんなが集う場所と理解してる。

初めて雪が降ったとき、アカと僕は、みんなと一緒に教会の中で寝た。

普段は食事と歌う場所。

お外の人もちょくちょく来てくれる。


あの中にも寝る部屋がいるが、

おじいちゃんーー神父様に胸の中に針を刺さられなくちゃならない

痛いみたいで僕は拒否した。

同じく嫌がる子供もいるけど、

半分以上の子供は痛いよりも寒いのほうがきついみたいで、

それで教徒になった。


教徒じゃない奴は、

特に寒い天気でもなければ、教会で寝ることは許されない。

アカが扉をゆっくり開き、僕はさささっと中に入った

各々が食事に専念してる

ふむふむ、、、見回す限り、どうやら、

今日の朝も肉スープに、石パンのようだ

思わずため息を吐いてしまう。


「イオリ?」

と軽く僕の尻を打ってきたアカ。

はぁーい、食事について文句を言ってはいけないっけ?はいはい


朝食についての豆知識。


肉スープとは?

謎の草と謎の生物の肉を煮込んだスープ。


石パンとは?

名の通り、石みたいに硬いパンーーーではなく、石の形をした真菌類の一種である。

見た目が石と変わらないから、

食える石だと貴族たちに勘違いされてそう名付けられた。

らしいが、実際はわからない。


ただ実際は結構栄養豊富で、人が要するものならほぼ揃えてる。

これが裏山で取り放題という。

主に動物の死骸から生えてて、一年中取れちゃうから、

ちょくちょくアカと一緒に取ることも


初めのうちはそう美味しく感じないけれど、慣れてしまえば全然いける

噛めば噛むほど、口の中にほんのり苦くみと甘みが広がり、

癖になっちゃいます



ドアと一番近いテーブルを選んで、そのまま座る。

向かいに座ってる娘が驚いたのか、石パンがテーブルに落ちた。

にらめっこ。

紫の髪の毛にどんよりな目、見舞いにきた覚えがある。

確か声が凄く小さい娘だったはず。

いまだにまともに会話したことないから、よくわからない

彼女を見つめることにした、

アカが僕の分の食事を持ってくるまで待つ


見られて恥ずかしいのか、耳まで顔が赤く染まった。

ぶつぶつと何かを呟いて、彼女は石パンを一口食べた。

何を言ってるのか全然わからないけど、かわいい。

顔の汚れがひどいが、かわいい


二皿のご飯を持ってアカは帰った

アカに席を譲り、僕は彼の隣りに食事を始める

石パンをひと齧り、もぐもぐ

娘はアカをチラ見するも、僕の視線に動揺したのか、急いで石パンを口に突っ込んだ


建物の中は静かだ。

食事するときは静かにしないと駄目、と教われたのだろう。

同調圧力で僕も従った

パンを食って、スープで飲み干す、こっちは別に美味しくとも、不味くともいえん味。

僕が食べ終わった頃、ほぼ食堂の全員が食べ終わってた


食事が終わり、アカは僕と彼と紫の娘の皿を届けにいった。

周りの子供はみんな外へ出て遊んだ

寒くないのかな


紫の娘はちらちらとアカの背中を見る

僕は不思議に思った

アカのことが気になるのかな?何が面白いんだ


アカはキッチンに入った、皿をいっぱい持って入った

どゆこと?

慌ててついていく

なんか紫の娘も一緒にきた

キッチンに入ろうとすると、一人の女性が前に立ちふさぐ


顔を覗くと、案の定シスターでした

背を向けて逃げ出そうとする。

けど初動が遅いせいで、手首が掴まれた。

何かを言っている、僕には聞き取れそうもない。

が、紫の娘が代わりに返事をした。アカの名前を何度も言った。

その返事に、お姉ちゃんは納得したのか、あっさりと僕を離した。

今が好機とばかりに、僕は紫の娘の手を握って逃げようとした。

しかし彼女は動かない。


後ろに振り向くと、二人とも何故か笑っている。


お姉ちゃんは何かを言った。

やはり僕には聞き取れなかった。

眉を寄せて聞き取ろうとする僕の顔を見て、シスターは少し考えて、

僕の頭を撫でる。


「アカ あう?」


ゆっくりな喋り方。

今度はちゃんと聞き取れた。

僕が頷くと、シスターは僕の手をとって、歩き出した。


扉を一つ開けて、人はいない、しかし音だけが聞こえる。

磁器の音、洗ってる音。

音に向かって走る。そこには、エプロンを着ているアカがいた。

ヘンテコな服をきているアカが、床に座って皿を洗いてる。


「アカ?」

僕は彼に呼びかける、走ってその隣りに座る。

皿洗いだ、仕事?

道理で毎回皿を届きいくだけなのに、あんなに遅くまで帰ったのか


僕も床に座り、アカと一緒に皿洗いを始めた。

洗ってるのは、スープを乗せる皿と、石を載せれる皿みたい。

洗い始めると、アカの手が止まった、じっと僕を見つめてる。


皿を洗い、紫の娘に渡して拭いてもらう

汚い奴があるなら、紫の娘に洗ってもらう

うんこの皿も汚いね、ほい洗いってくれ!


三人だとあっという間に終わった。


手が凍えて赤くなっている。アカも、紫の娘も、手が真っ赤っ赤。

寒すぎて感覚がなくなった。

手をじっと見つめる、それからアカの顔を手を抱きしめる。

ぼんやりしたが驚いた様で、仕返しとばかりに僕の顔を手で覆った。

冷たっ!


一方の紫の娘、なんかずっとぼうっとしてる。

僕とアカが立ち上がってもいまだにぼうっとしてる。


何考えてるの、置いていくかって思ったら、

紫の娘が急に立ち上がって、両手で僕の手を握った。

冷たいって、しかも力つよっ!


「エリ……友達、なりたい

一緒に、寝た」

そう言われた、なんか目がヤバイなのでパス

即決、首を横に振る


「カ、カエ ル」

アカに向かって腕を広げ、お姫抱っこのサインだ。

そのまま紫娘を無視して、アカにお姫抱っこさせて、ボロ屋へ戻る。


帰り道、視線を感じた。

振り返ると紫の娘が淀んだ目でにこやかに僕を見てた


怖いだけど、今後は関わらないほうが良さそうだ。。。


ご飯を食べ終わったから、寝ちゃいます

娯楽は、外が寒いし、特にない

なので食ったら寝る、これこそ真の冬の過ごし方だ


寝る前に団子を一口、赤い団子は酸っぱく、黒いアレとはまったく違う味わい

体がぽかぽかするし、冬のときは特に好んで食べた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ