第3章①
新たな月曜日を迎える。
担任の教師が出席をとる。
エデンの姿はない。
一時間目の英語が始まる直前にエデンが後方の扉から入ってきた。
椅子だけある。しばらく佇んだ。
踵を返してドアから姿を消すと、静かな教室にざわめきが広がる。
一部始終見ていたドーマが笑みを浮かべた。
エデンは一時間目に欠席した。
英語の教師が手を振って出た。入れ替わるようにエデンが姿をみせる。
両手に自分の机を持っていて、その背後にランドセルを背負ったままのユカがついてくる。
2人は席に着くなり一言二言言葉を交わした。
ユカが目を細くして笑みをみせる。
意外な組み合わせにいおりは虚を突かれた。
いつから仲良くなったのだろう。
誰もいない朝の教室。
「これには意味があるの?」
いおりがエデンの机を見ながら訪ねる。
「あいつにできるだけ嫌がらせをするんだ」
とドーマ。
いおりは同じ階の空き教室に、エデンの机を持って移動させた。
その行為に意味があると思えなかったが、ドーマには考えがあるようだ。
そんなことで学校をやめるとは思えない、といおりは訝しげだった。
算数のプリント問題を睨むユカが悩まし気に頭を捻らせる。
前の席のエデンが振り向き、問題に指を差す。ユカに算数を教えた。
観察していたいおりが目を丸くする。組み合わせが奇妙だ。
いおりだけでなく、クラスメートたちも物珍しそうに見る。
中休み時間の鐘が鳴り、ドーマがいち早くいおりに駆け寄る。
瞳が鈍く輝いていて、算数の時間のことに触れた。
雑談している上辺に、2人はエデンとゆかを観察した。
ゆかの手が何やら恐る恐るランドセルの中から引っ込まれていく。現れたのはゲーム機だった。
「早くしろ。時間がない」
エデンがユカを急かした。
下を向くユカがゲーム機を抱えて、エデンの後をついた。
周りの生徒たちが避難がましくユカを睨んだ。が、だれも口には出さなかった。
学校にゲーム機を持参してはいけない。ユカが心で呟いた。
冷たい視線が突き刺さる。
空き教室にエデンとユカが入った。
エデンが椅子を反対に座り、ユカと向かい合わせにした。
ユカの口の端が吊り上がる。いおりは嬉しくなった。
ユカは孤立していてクラスメートたちに空気のように扱われていた。
クラスメートたちの圧力に負けて、表面上だけユカに接しないようにした。
だが、エデンなら関係なくユカを救える。
中休みの時間を終える鐘が鳴っても、空き教室で楽しげな声が響いた。




