第2章①
エデンは帰路の途中にあるコンビニによった。
羊かんや串団子が置かれているスペースを覗くと、3本入りのみたらし団子が割引されている。
並ぶ人がいなかったのでそのまま会計に回した。
「20割引で、103円になります」
レジの女性が能面のような顔で慣れた動作で言う。
ランドセルのふたを開け、オレンジ色の小銭入れ用の財布を抜き取る。
カルトンの上に500円玉1枚を置き、おつりが置かれる。
「ありがとうございました」
みたらし団子をランドセルに収めてコンビニを出た。
夕日が眩しくて、暗い玄関に入ると一瞬視界がぼやけた。
2階にある自分の部屋で、キレのある手付きでゲーム機を操作する。
「晩ご飯の用意できたわよ」
お母さんの叫び声にはっとなる。
だが、みたらし団子を1本つまみ食いしたので、腹が空いていなかった。
「あとで食べる」
エデンはドア越しに叫んだ。
ゲームがひと段落する。
空腹になったお腹がへこんでいる。
晩ご飯の前に、エデンはみたらし団子を持って隣の部屋に行った。
真っ暗で何も見えない部屋に明かりを付けると、女の子らしい物がたくさん向かい入れた。
水色のランドセル。カラーボックスに収められた数冊の分厚い少女漫画。キャラもので飾り付けられた勉強机。
ベッドの上には触り心地の良さそうな大きなカエルのぬいぐるみが鎮座している。
元々なかったアンティーク調の仏壇が白のクローゼットの横に置かれている。
仏壇の中で妹が白い歯を見せて笑っている。
公園で撮られたものだ。
妹とエデンが楽しそうに遊ぶからつい撮ったという。
砂場ですごいものをつくったやつが勝ち。
砂を水で固めて、2人は競い合った。
2人ともお城をつくっていたので、大きい方が勝ちね、というルールに変わる。
妹が綺麗な形をしたお城をつくるので、エデンは出し抜こうと周りの砂をかき集めてお城に固めていった。
すると、手にした濡れた砂の中に、ぷにぷにしたものが混じった。
「うえっ」
エデンが手を鞭のように払った。
そして顔を青ざめて叫ぶ。
「うんちだ」
妹が咄嗟にエデンから離れる。
顔がにやつく。
「うわーくさーい」
妹が後ずさった。
ムカついたエデンは妹の背中を追いかけた。
悲鳴を上げて、必死に逃げる妹。
口をあけて笑っていて、顔を赤くしたエデンは、なにがなんでもうんちの付いた手でその背中に触ろうと決めた。
「あらあら、仲いいわね」
ママ友の1人がエデンたちを見て、微笑ましく言った。
お母さんが苦笑する。
「家では大人しいのよ」
スマホのカメラを起動すると、画面越しに、興奮した様子で笑う妹とその背中を必死に追いかけるエデンを撮った。
妹がお母さんに抱きつく。
腰回りをグルグルして、しがみつかれる。
「おかーさん、エデンが」
お母さんがエデンの悪事に気づいて阻止した。
安かったから買ったんだ、と心の中で呟き、みたらし団子を妹の前に置いた。
照明を消して、後にした。
豚カツ、お茶碗1杯の白米、味噌汁がラップされて食卓に並んでいる。
すでにお母さんは食べ終えていて、ソファにくつろいでバラエティー番組を観ている。
白米と豚カツが冷めきっていた。
味噌汁を電子レンジに温める。
冷蔵庫の中からコーラを取り出しコップ1杯注いだ。
一口飲んで、鋭い音が鳴った。
熱々の味噌汁とガラスコップに入ったコーラを食卓に並べる。
楽しげな声が聞こえる。
テレビをなんとなく観ながら食事した。
さくさくの豚カツを口に放り込んだ。
白米は冷たいが、味噌汁と一緒に口の中に含むと悪くなかった。
食べ終えた食器は適当にシンクに置いた。




