第4章③
放課後。
ドーマといおりは横に並んで、背後の女子生徒3人組を率いる。
いおりが空き教室を開ける。
薄暗い。夕陽のオレンジ色が全体を染めている。
ドーマがスイッチを押すと白い光に上書きされて気配が消える。
「大事な話ってなんなの」
しびれを切らした女子生徒1がドーマに言う。
ドーマはいおりに視線を投げた。
いおりが女子生徒1を見据えると、
「わたしの物がなくなってるの。心当たりない?」
「ないわよ」
眉間を寄せて女子生徒1がバッサリと切った。
続いてまるで緊張感のない女子生徒2も否定する。
「あたしも~」
内気で無口な女子生徒3が首を左右に振った。
女子生徒1といおりの間に疑心暗鬼が生じる。
いおりがさらに追求する。口論が続いた。
ようやく、扉がガラリと開く。
突然姿をみせたユカ。
言い争っていたいおりと女子生徒3人組の声が途切れる。
一瞬戸惑い、ドアにかけた手が閉めかける。
ユカの視線はドーマに止まる。
いおりも怪訝そうにドーマをみるが、苦笑を浮かべるだけだった。
すると、エデンがユカを押し退ける。
いおりは向かってくるエデンに後ずさる。
「な、なに?」
怯えて、困惑した。
見下ろすエデンがポケットから手を突っ込むと、キラリと光る鋭利なはさみが現れる。
いおりの息が漏れた。さらに後退しようとするが、壁にぶつかる。
ハサミが勢いよく振り下ろされる。
だが、宙に停止した。
ユカがエデンの肩に腕を回して、一緒に背後に倒れる。
地面に転がる2人から咄嗟に距離を取った。
エデンの上にユカが跨ぐ。
そして鬼のような形相で怒鳴り散らかした。
女子生徒3人組の顔色が青ざめる。
固く握られた右手が振り下ろされる。
エデンは自由が利く手で制しようとするが、すり抜けて鼻血を垂らした。
鈍い音が何度も鳴った。
いおりは怯えて泣きそうだ。
「やめて」
ユカが鼻を鳴らして、エデンから離れる。
腕で顔を守った。目蓋が赤く腫れている。
絶望と諦念の色が浮き出るエデン。ドーマはほくそ笑む。
「もう終わった」
ユカが自信に満ちた顔つきでいおりに言う。
いおりは恐怖した。
ドーマが足を振り子にして机上から下りる。
「これで安泰だ。よくやった、ユカ」
ユカの手が疼く。興奮している。
ドーマが教室から去る。
その背中を焦って追いかけるいおり。
女子生徒3人もユカを横目に、そそくさとあとを追った。