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特別って、どういう意味?
放課後の教室はほとんど空っぽだった。
俺と氷室詩織だけが残り、二人きりで机を並べていた。
「ねぇ、神谷くん」
「ん?」
「“特別”って、どういう意味か知ってる?」
急に詩織が真顔で聞いてきた。
「え、“特別”?
うーん……なんだろうな。
普通じゃないこと、かな?」
詩織は少しだけ首をかしげて、でもすぐにいつもの無表情に戻る。
「私ね……神谷くんにだけは、いつもと違う感情が湧くの。
誰にでも見せない顔を、あなたにだけ見せてる」
「……え?」
俺は正直、理解できなかった。
だって、クールな詩織さんがそんなこと言うなんて。
「あなたは私にとって“特別”な存在。
だから、普通じゃない態度をとってしまうのかもしれない」
俺はその言葉に動揺した。
“特別”って……俺のこと?
「神谷くんは、気づいてないかもしれないけど、私の中で一番大切な人なの」
そう言って、詩織は初めてほんの少しだけ笑った気がした。
「……俺も、そんな“特別”になりたいよ」
言いながら、心が震えた。
詩織は俺の目を見て、ゆっくり頷いた。
「じゃあ、これからも私と特別な関係でいてくれる?」
「ああ、もちろん」
屋上で交わした約束は、もう単なる友達のそれじゃなかった。




