クラスがざわついてる
朝のホームルームが始まると、教室の空気はいつもよりざわついていた。
「なあ、聞いたか? 氷室さんが神谷に話しかけてたらしいぞ」
「マジかよ! あの氷室さんが男に話しかけるなんて珍しすぎる」
「しかも屋上でだってさ。あの場所、みんな避けてるのに」
俺――神谷遼は、そんな噂の的になっていることに気づき、そわそわしていた。
「……うるさいな」
そんな中、クラスの女子の一人が小声で呟いた。
「氷室さんが男子に優しいなんて……絶対に何かあるよね」
「ねえ、付き合ってるんじゃない?」
「そんなわけないってば!」
俺は自分の机に座りながらも、心臓がバクバクしているのを感じていた。
昼休み、屋上へ向かう足取りは重かった。
ドアを開けると、いつもの氷室詩織が待っていた。
「また、噂が立ってるわね」
「そ、そうみたいだね」
「私はあなたといるだけ。それ以上でも以下でもない」
そう言われても、クラス中が見ていると思うと、気まずかった。
「ねぇ、神谷くん」
「うん?」
「これからも、私と普通に屋上で過ごせる?」
俺は迷わず頷いた。
「もちろんだよ」
その瞬間、なぜか胸が温かくなった気がした。