表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

屋上で出会った才女

昼休みのチャイムが鳴り、教室がざわつき始めた。


「おい神谷、また屋上行くのか?」 「うん。人が少なくて静かだし、弁当がうまく感じるんだよ」


俺――神谷遼かみや・りょうは高校2年。


どこにでもいる普通の男子だ。成績は中の上。運動もそこそこ。


ただ一つ、人とズレてるって言われることがある。


特に恋愛関係になると、「お前、そういうの鈍すぎ」ってよく言われる。


正直、何がそんなに面白いのか、俺にはさっぱり分からない。


──そんな俺が、その日、屋上で運命みたいな出会いをする。


ギィ、と屋上のドアを開けた瞬間、心地いい風とともに、ひんやりとした声が降ってきた。


「……また君?」


視線の先にいたのは、氷室詩織ひむろ・しおり


学校一の才女。成績は常に学年トップで、見た目も完璧、誰もが一目置く存在。


感情の読めない無表情で、男子とはまったく話さないことでも有名な人だ。


「え、あ……ごめん。先客がいるとは思わなかった」


「いいわ。別に気にしてないし、私の場所ってわけでもないから」


そう言って、彼女はベンチの端にちょこんと座り、読書の続きを始めた。


……本当に、俺のことはどうでもよさそうだ。


「ここ、座ってもいい?」


「ええ。静かにしてくれるなら」


それだけの会話で、俺は彼女の隣に腰を下ろした。


しばらく沈黙が続いた。


風の音とページをめくる音だけが耳に残る。妙に心地いい。


「……神谷くんって、彼女いないのよね?」


「ぶっ……!?」


口の中の味噌汁を危うく吹き出しかけた。


「え、え、なんで急に?」


「クラスでそんな話が出てたから。ちょっと、気になったの」


「い、いないよ。そういうの、よく分かんないし」


「ふうん……」


氷室さんは本を閉じて、こちらを見た。真っ直ぐな瞳で。


「じゃあ、私が教えてあげようか。恋愛ってやつ」


──一瞬、時間が止まった気がした。


「……は?」


「恋ってどういうものか、体験してみないと分からないでしょ?


なら、仮に私と“そういう関係”になってみるのも、悪くないと思うけど」


「いや、いやいやいや、待って。え? それって、どういう意味?」


「文字通りの意味よ」


彼女はふわりと立ち上がり、スカートの裾を整えて言った。


「じゃあ、また明日。ここで会いましょう、神谷くん」


そう言い残して、氷室さんは屋上から立ち去っていった。


俺は、食べかけの弁当を前にしばらく動けなかった。


──一体、何が起きたんだ……?

良かったら読んでね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ