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3-7 ♂ オンナノコだって理解らせられちゃうっ♡ ♀

「俺が女の子じゃないかどうか、ためす……?」

 

 体育倉庫。

 窓からは雲を被った夏の日差しと、生徒たちの声が聞こえている。


 そんな中、俺はふだんとは違う空気(オーラ)をまとった愛音の迫力から後ずさってきいた。


「どういう、ことだ……?」

 

 マットの上を後ずさっているうちに、背中に跳び箱が当たった。これ以上は()()()()()()


「えへ――かんたんな、ことだよ?」

 

 愛音は構わず俺の上半身にかぶさるようにしてきた。

 

「こう、するの」


 近くにきた愛音の顔に意識を取られているうちに。

 

「――ひゃっ⁉」

 

 彼女は俺の体操服の中に。

 するりと手を入れてきた。


「や、やめっ……!」

 

 もちろんそれだけでは止まらない。

 愛音は続けて――俺のふくよかな〝胸〟へと自分の掌をあてた。


「あ、ああああっ⁉ 愛音っ……⁉」

 

 なんだか嫌な予感がする。

 今の愛音の様子は明らかにおかしい。


 ごくりと唾を飲み込み混乱していると、彼女は俺の耳元に『ふー』と息を吹きかけてきた。


「んあっ……!」

「ふふ――かわいい声」

 

 同時に。彼女の手がぴくりと動いて。

 俺の胸を――やさしくもみあげてきた。


「んっ⁉ な、あ……⁉」

「やっぱりみーくんの、おっきいねえ」

「なにするんだ、や、やめろっ」

 

 振りほどこうと腕に力を入れる。

 しかし今のカラダでは思ったように抵抗できず、愛音のなすがままになってしまう。


「あ。ここ――汗、溜まってるよ?」

 

 愛音の指先が、いつのまにか下着(ブラジャー)の中にまで侵入してきた。


「ん……やめろ、そんなこと、言うな……!」

 

 続けてぱちり。背中で無機質な音がする。


「え……?」

「ふふ。外しちゃった」

「んなっ……⁉」

 

 言葉のとおり。

 愛音の左手(俺の胸に添えられていないほうの手だ)は俺の肌を滑るように後ろに回ると、そのままブラのホックを外したようだった。

 

 同時に俺の豊満な〝ありのままの胸〟が解放され、重力に従い前のめりになるような感覚になる。

 

「愛音? 嘘、だよな……?」

「うそ?」と愛音が目を丸くした。その瞳は笑っていない。「なにがうそなの?」

「――ん゛んんっ⁉」

 

 今まで出したことのないような声が喉から漏れた。

 それもそのはずだ。

 

 愛音の指先が。

 俺の胸の膨らみの――その()()を。

 ぱちんと(はじ)いたのだから。

 

「しー。外に聞こえちゃうよ?」と愛音が悪戯(いたずら)に言った。

「んなこと、言われてもっ……なあああっ⁉」

 

 ふたたび声がでた。

 ぱちん。愛音の指がまた()()を弾く。

 びくん。カラダが跳ねる。口から声にならない声が漏れる。その繰り返し。

 

「や、やめろ……っ!」

「えへ――やめない」

 

 やめない、という言葉どおり。愛音は。

 行為を止めるどころか。


「あ、……おいっ!」

 

 いつの間にか俺の上着をたくしあげて。

 あらわになった胸部に。その()()()()()に。

 口元を近づけて。ちろりと桜色の小さな舌を出して。

 

 ――()めあげた。


(あああああああああっ……⁉)

 

 声にならない悲鳴があがる。

 火照(ほて)った身体が震える。


「うー……やめて、くれぇっ……!」

 

 愛音はやめない。

 舌に加える力の加減を強弱させて。押しつけて。緩めて。

 円を描くように。()()とつつくように。

 まわりだけをなぞるように。中心をひっかくように。


 愛音の粘膜は、まるで独立した生き物みたいに俺の胸部で動き回った。


「あは」

 

 そこで愛音の声に、歓喜の色が(とも)った。


「ねえ。みーくんの――()()()()()()()

「……っ⁉ そんなこと、言う、なあ……」

 

 自覚のようなものはあった。

 さっきから舐められている胸の先端には、体中からかき集められたように熱が集中している。感覚が集中している。

 

 心臓の鼓動はひどくゆっくりで、それでいて一回ごとがひどく激しく鳴っている。

 

「ほら。こんなふうに、()()()()()()()()()で、()()()()()()()()()()()()()()になってるでしょ?」と愛音は言う。「こんな風に〝お胸さん〟をいじられて、可愛い声あげてる子が――男の子なわけないんだよ」

「ち、ちがう……俺は、俺は――ひあっ⁉」

 

 愛音の舌が這いずりまわるたびに、声は勝手に出る。我慢しようとしてもできない。身体の芯が熱くなる。背筋から脳みそに向かってぞくぞくと刺激が走る。


 すべてがハジメテの体験だった。

 

「や、やめて、くれ! これ以上、したら……俺……」

 

 ぱちぱちと頭の中が(しび)れはじめる。まるで海底火山の奥深くで煮えたぎっているマグマのようだ。このまま愛音の刺激が続けば、いつか(はじ)けて吹き出してしまいそうな予感があった。

 

「ねえ。認めちゃおうよ、みーくん」

 

 もはやまともな思考が奪われつつある(とろ)けた脳に、声が直接響いてくるようだった。

 

 認めちゃおうよ、と彼女は言う。何を?

 

 ――俺が、女であることを?


 分かってる。俺のカラダはもはや完全に女のものだ。

 こんなにも豊満な膨らみをもって。こんなにも敏感な器官をもって。

 男であろうはずがない。でも。

 

「ち、ちがう……そうじゃ、ないんだ」

 

 違う、と俺は言い張る。何が?

 

 ――なにが、違うというんだ?

 

 男には存在しない部分をもてあそばれて。

 男の時にはなかった感覚に全身を支配されて。

 快感が(はじ)けて。感情がほとばしって。

 

 今までに知らなかった情緒(じょうちょ)を脳が感じている。

 ならば。

 

 俺の脳みそも。

 やっぱりどうしたって愛音の言うとおり。

 

 ――オンナノコのものに。


 変わってしまっているのではないだろうか?


「やあっ♡」


 予期せずなまめかしい声があがる。


「そんなふうに、んっ……舐めるな……!」


 言葉には熱のある吐息が混じる。

 

「――っ‼」

 

 汗ばんだカラダが跳ねる。息が荒くなる。心臓の拍動のペースがあがる。

 お腹の奥の方が――ぞくぞくと震えだす。


(だ、だめだっ……これ以上は、俺――()()()()、なる……!)

 

 ほとんど涙交じりの声だった。俺は。

 

「たのむっ……もう、やめてくれっ……!」


 そうやって懇願(こんがん)するように。言った。

 

 すると愛音は。


「――あは」


 舌先をいったん俺の胸から引き()げて。

  

「ねえ、みーくん。やめてって言いながら――いま、自分が()()()()()、わかってる?」

 

 などと。逆にきいてきた。


「なにって……え?」

 

 視線を下にずらしていく。そこには愛音の顔がある。


 そして。

 俺の手は。白くて小さな掌は。

 

 ――愛音の頭を、ぎゅうと強く()()()()()()()

 

 まるで。俺の胸に。

 彼女の顔を。唇を。粘膜を。

 

 ――押し付ける、ように。


 もっと欲しいと。刺激を求めるように。

 

 男の時には決して感じられなかった――

 痺れるような快感を。

 ()()()()()()()を。

 (むさぼ)るように。

 

「――っ⁉」

 

 その瞬間、俺の中で。

 

 何かが壊れる音がした。

 

「……なさい」

「え? なあに、みーくん」


 俺はもうこれ以上。

 耐え切ることはできずに。

 

「ごめん、なさいっ……」

 

 震える声で。


「俺は……()()()、です……だから、もう――ゆるして、ください……っ」


 言った。


「――あは」


 愛音はすこし頭をもたげて。

 やっぱりどうしたって。

 天使にしか見えないように――()んだ。

 

「よく言えましたっ。いいこだね、みーくん――」

 

 俺の身体をまさぐっていた愛音の手の動きが止まった。

 ようやく解放された、と思った。

 安堵(あんど)の息がつかの間漏れた。

 

 その刹那。愛音は。

 やっぱりすこしも笑っていない瞳で。


 言った。


「でも――()()()()()()()、ゆるしてあげない」


 そこからは、一瞬だった。


「……え?」


 一瞬で――永遠だった。

 愛音は俺の胸から離した手を、そのままゆっくりと。

 ゆっくりと。ゆっくりと。ゆっくりと。ゆっくりと。


 すっかり汗ばみ火照(ほて)った肌の上をすべらせて。


(ま、まってくれ……それより、下は……!)

 

 雪原(せつげん)(うさぎ)の巣穴みたいにくぼんだおへそを越えて。

 星の(またた)きのように鳥肌が立つ、白い下腹部を越えて。

 

 その先にある、俺の()()に。

 女のとしての()()()が詰まったその場所に。


 愛音は。

 触れた。

 

「~~~~~~~~~~~っ‼」

 

 その瞬間。俺の脳の中のマグマが。

 宇宙が生まれた瞬間の奇跡みたいに(はじ)け飛んだ。


 

「みーくん――やさしく、するね?」

 

 

 愛音は。

 それから永遠にも思える時間をかけて。

 


 

 ――俺を〝むこう側の世界〟へと連れていった。




ここまでお読みいただきありがとうございます!

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