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イ国の魔女  作者: ネコおす
序章 不思議な記憶
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あっちの世界、こっちの世界

なんとか動ける程度に回復したレナさんに騎士棟まで送ってもらった私は、お父さんと合流する。お父さんは私やレナさんに染みついた腐臭に顰めっ面だった。


帰宅するとお母さんとミーナも同じく顰めっ面だった。すぐに着ていた服を脱がされた。水を沸かしてぬるま湯で体を洗体する。私の自宅にはお風呂はない。寧ろこの世界に湯船に浸かるという文化があるのかさえ不明だ。清潔にするにはぬるま湯に浸けたボロ布で体を拭くくらいしか方法がなかった。


石鹸とシャンプーを作ろう。身体を拭き終わりゴワゴワの髪を弄りながらそう思った。


夕食の際にお母さんに灰を少し分けて貰うようにお願いした。服を灰汁で洗う方法は確立されているようだったので、灰汁があるなら、この世界のどこかには石鹸が存在しているかも知れない。でも今のところ下町で見かけた事はないので、やはり自作するしかなさそうだ。シャンプーは塩と柑橘系の果実を使えばいい。お父さんに明日森でいくつか採ってきて貰おう。


しっかりと時間をかけて身体中を拭いた私は、なんとか腐臭が薄れる程度になった。

その後は夕食をとって家族と団欒を楽しんで就寝となった。私にとっては65年振りにもなる家族との会話だったが、やはり同時に今朝方話していた感覚もある。どうにも不思議な感覚だ。


就寝となってベットに入った私は意識が落ちるまで、現状とこの世界について考えることにした。


まずは私が今日思い出したあっちの世界での経験。これについては何だったのか原因を考えたところで答えは得られそうにないので保留とする。なので、私が知っているこの世界のこととあっちの世界で知っていることを照らし合わせて比較してみる事にした。


まず、この世界に戻って一番違和感を感じたのは、この世界に住む人達はみんな動物のような耳で尻尾があることだ。人によっては腕や顔まで毛に覆われている人もいる。毛色も様々で数色しかなかったあちらの世界とは違ってカラフルだ。


そもそも、あっちの世界はみんな私と同じレタルゥでこんな多種多様な形をしていなかった。こっちの世界には様々な種族がいて人によって耳や尻尾の形状やガラの違い、身体的特徴も様々である。尻尾どころか身体中が毛で覆われている人や肌が硬く分厚い人、鱗のある人もいる。お父さんは犬っぽいし、お母さんとミーナは兎っぽい。


でも私だけ尻尾もなく耳にも毛が生えていない。それを恥ずかしく思って私は耳は髪で隠すようにしていた。


人以外の生物は、犬や猫のような動物を街で見かけるけどやっぱりどこか違う。荷車を引くウマは、あっちの世界で見たような『馬』ではなくて、体は長い毛に覆われていたり、角があったり、皮膚が象の様であったり、尻尾が二つあったりと様々だ。けれども骨格や姿形はやはり『馬』と似ていた。


科学的な発展は鉄は使用されているようだけれど、燃焼機関や火薬などはまだ存在ない。でも、街の建物は石造りが多く、共用ながら上下水道も整備されているし、田畑に引く水路には水車が散見されるし、ウマ引きの荷車もある。


副団長の部屋を見る限りでは、皮や板以外ではなく植物紙による書物も存在していた。中身までは確認していないがインクか、黒鉛筆等の筆記具、もしかすると印刷もあるかもしれない。


経済は、確かカラという通貨が流通していて、物の売買に使用されている。1カラで標準的なサイズのパン1つ買える価値があって、門の衛士であるお父さんの俸給は月120ラカくらい。4人家族が食べるだけならギリギリなんとかなる稼ぎのようだ。


食事についてはお世辞にも美味しいとは言えない。主食はパン食だがパンはとても硬くてスープに入れたり、ふやかして食べる。バターなどは存在はしているようだけど高級品でとても下町の者が食べれるものではない。お肉の方が全然安い。下町で手に入る調味料は塩とハーブと木の皮等を砕いた香辛料くらいだ。


距離の単位はメトー、重さの単位はグマ。あっちの世界の標準的単位と呼び方がよく似ているのが不思議。実際の仕様もたぶんほぼ同じである。確かメートルは星の直径を割って基準にしたものだったけれど、こちらの世界では何を基準にしたのだろうか。100や1000単位で接頭語が付くのまで同じだ。時間の単位も呼び方は違うが仕様は一緒。ただし1日25時間、一月は33日もある。夏や冬といった季節は存在せず年中穏やかで変わらない。因みに暦は単純に年数だけだ。現在は406年。


そして、この世界とあっちの世界で決定的に違うもの。それは人の生態もそうだが、魔法が存在することも大きな違いだろう。しかも、誰でも魔法を使うことができるらしく、生活の中でお父さんやお母さんが使っているのを見たことがあった。私やミーナは、まだ使った事がないけれど普通一般的なお父さんたちが使えるのだから、この世界では当たり前なのだろう。


そういえば日が落ちた後に使う灯りも不思議ものだった。石ころが火を使わず光を放つのだ。その丸い石ころは触っても熱を感じないし、人が一定時間触れると光を放ち、また触れると光を失う。感応式の電灯みたいだが、電気式であるはずがないし原理がまったく解らない。


以前は気にもしなかったけどあっちの世界を経験した後だと色々と細かいところに気が向く。当たり前であったことが好奇心で満ち溢れていた。自分が魔法を使っている姿を想像するとワクワクして来てしまう。




こんなところかな。


色々考えてみたけれど、今はとりあえず目の前の問題だ。今日の出来事や騎士団の今後の出方を予想する。協力をする姿勢は見せたけれど今日だけで私の疑いが晴れたわけではないだろう。今後の自分の身の振り方次第では家族にも影響が及ぶかも知れない。それだけは避けたかった。



既に私以外の家族とは眠りについていた。お父さんのイビキがちょっとうるさい。ウチでは少し大きめのベットに家族全員で川の字で寝る。ベットといっても木製の木枠で作られた簡単なものでマットレスは藁を布で包んだ粗末の物だ。布団も厚手のボロ布で少し変な匂いがする。


65年間ぶりに家族と一緒に布団に入った。あっちの世界で寂しいと感じた事はなかったけど、ずっと一緒にいた『彼』には悪いが、やっぱり家族と一緒の方が落ち着く。


ただ、あっちの世界のふかふかなベットとお布団が恋しいと思ってしまうのは仕方がない。


そんなことを思いながら私はいつの間にか眠りに落ちていった。


世界設定のお話回です。ちょっと説明チックでごめんなさい。

そのうち、修正するかも…


次回はナイルが色々やってみます

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