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イ国の魔女  作者: ネコおす
第一部 イ国編 ~商会の主~
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久々の城都の一日 二


「お嬢、これ見てくれよ!」


商会に着き工房の様子を見るために工房連に出向くと染色工房の方からクザがこちらに駆けてきた。手には優しいながらも鮮やかな色のついた生地を持っている。


クザは私に染められている生地を手渡す。へぇ…これはターコイズブルーのように淡く鮮やかだが、よりグリーンに近い。これはターコイズグリーンだろう。


「品はお嬢の色に負けるけどさ、優しい色だろ?」


「いい色ですね。これ染めてどれくらい経ったものなのです?」


「1週間はおいてその仕上がりだ。十分に色を維持できてる。」


染色は時間が経つと色が変化するものもある。特にターコイズのような絶妙な色はその変化で印象が変わってしまうものだ。


「生地も麻や綿だけじゃなくて紡毛でも少し要領を変えれば再現できる。…これ売り物になるか?」


クザとムジが再現したターコイズブルーに染色された生地は、これまでのイ国で用いられていた純色のものより明らかに鮮やかで既に多くの受注が集まっている。特に富豪層向けに良質な生地向け。制服をこの色にしたように今では主力商品になりつつある。


「凄いですねクザさん。これならウチの品揃に追加しても全然問題ありません。ターコイズブルーと並べても合いますし主力商品の一つとしてもいいんじゃないでしょうか。」


クザは「やったっ」と拳をグッと握る。凄く努力したんだろうな…目にクマができている。


「もう、ラカポシさんがいなくても一人前ですね。ムジさんもご一緒に?」


「いや、まだまだだよ。親方みたいな細かい模様分けはできないし…ムジは完成したのを確認して今は工房で泥のように眠ってるよ。」


彼らはあの事件以降、ホシノ商会の染色職人としてよく働いてくれている。ラカポシさんが各工房のまとめ役に回って、その頃はまだ半人前って感じだったけれど今ではもう立派に商会の看板職人の一人だった。


喜びを身体で表現していたクザが途端に力が抜けたのか地面に腰を落として座り込む。大丈夫かと声をかけると彼は手をひらひらとさせて「大丈夫だ」と答える。


「すまん。お嬢に認めてもらって急に力が抜けてさ。ほら、俺らお嬢の『たーこいずぶるー』は作れたけどさ、俺たちの色というか、もっと自分なりの色を目指してやっと納得できる色が出来上がったんだ。」


彼が拉致事件の時にミーナの腕輪を盗ったのはその腕輪が欲しかったわけではなくて、その色に一目惚れしたからだった。その後、また工房で働くようになり仕事の合間を使ってずっと試行錯誤し、遂にその時に見た色を再現した。そして彼はそれだけでは終わりとせず、もっと自分の求める色を追い続けていたみたいだ。


「正直、最初に出会った頃はクザさんがここまで仕事熱心な人だとは思いませんでしたよ。」


私の言葉を聞いてクザは笑いながら答える。


「自分自身でも驚いてるよ。でも、どうしてもあの色をまた見たくて、それが叶ったらもっと自分の求めるもの…みたいなのが見えてきてさ。…正直お嬢には感謝してるんだ。」


最後に「足は痛かったけどな」と付け加えてクシャクシャと顔を崩して笑う。そしてそのまま寝落ちしてしまった。


私はレナさんに毛布を持ってきてもらい彼の肩にかける。


私の彼らを残す判断は間違っていなかったようだ。もし、彼らを裁判で街から追放していたり、…あの時に彼を殺していたら、今のホシノ商会はなかっただろう。


「お疲れ様でした。ゆっくり休んでまた頑張ってくださいね。」


私は意識のない彼にそう語りかけて鉄職人の工房へと足を運ぶのだった。


この世界の染色素材は天然素材、合成染料はありません。花や草、鉱石や虫の粉末などを使いますがこの世界の天然素材は温度や水質、経過時間で色が全く違うものになったりしてしまうので同じ素材でも同じ色を出すには試行錯誤が必要です。


次回は、引き続き舞台はホシノ商会。小銃に試作。

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