帰路 間話
あの時、川で見たゴミに書かれていたのはこの国のものじゃなかった。
でも俺には解る。あれは夢で見たあの国のものだ。川は遠くにある山脈から流れてきている。
あの山の上にあの場所がある?…いや、それはない。だってあの地には海もあったし、もっと広い国だった。
では、どこかから飛んできて、たまたまそこに落ちた?…それも考え難い。風に乗って飛ばされても、せいぜいイ国のどこかからが精一杯だろう。
じゃあ、誰かが、あの国から来て捨てていった?…それなら納得できる。
どこにあるのか解らない、あの場所。
平和で、怠惰で、贅沢で、そこに住む奴らは、その恵みをあたり前と思っているクソ野郎ばっかりの国。だけど俺が帰りたいと心底思う国だ。
そこからここに来た奴らがどこかにいる。初めて現実で見た手がかりだった。
あの国を知っているのは俺だけのはずだ。でもアイツはあのゴミを見て驚き、何か考えていた。そしてアレに書いてあった事もたぶん読めていた。
昨日、偶然耳にした話。ところどころは聞き取れなかったけれどアイツは「夢」がどうのって話していた。
俺は夢のことを誰にも話していない。だって話せば馬鹿にされるのは目にみえている。そんな国は存在しないって…過去にヘラにだけ話したことがあるけれど彼女も信じてくれなかった。その彼女ももういない。だからこの事は誰も知らないはずだ。
けれどアイツはたぶん何か知っている。そして夢の事も…
アイツは何者だ?
俺と一緒くらいの年齢で、俺と同じレタルゥで、でも俺よりも色んなことを知っている。考え方だってポットの奴らと全然違う。お人好しなのは、ここにいる奴ら皆だけどアイツは他の奴に輪をかけておかしい。
アイツも俺と同じことを考えているのか?それなら直接尋ねるのがいいのか…でも違ったら?それに、同じ考えだったとしてもその結果、アイツがどう動くか解らない。アイツは人を殺すことにも躊躇しなかった奴だ。
とりあえず今は奴らに取り入って金と居場所を得る。そして必要な情報を集めよう。それにはアイツに近い場所にいることが望ましい。
『人を信じてはいけない。』
これは俺が生きてきて学んだこと。
そして『彼女』の人生で学んだことだった。
ティグリス視点、川でゴミを拾った出来事からコルトーまでの帰路の途中のお話です。
彼が見た「夢」とは…それもいずれ語ります。
初めての旅路は終わり。次回からは舞台は城都コルトーに戻ります。




